論理療法(REBT)非合理的な考えを浮かび上がらせるために「主語」を確認する
論理療法(REBT)のトレーニングを始めてから初期のころは自分のB(ビリーフ・非合理的な考え)を発見するのが容易ではなかった。特に「ねばならない」「べき」思考が、どこから誰に対して発動しているのかを突き止められなかったのだ。(参考:柔軟ではない考え方。3つの「要求」(べき思考、ねばならならない思考))
主語を明確にする
ここで、主語を確認するというアイデアが非常に効果的だった。日本語は主語が曖昧な言語だ。高杉氏のコメントを紹介したい。
「メッセージを考える際、まず主語を特定するように心がけて下さい。なぜなら日本人は主語を省いて文章を作る傾向が強いからです。日本人は主語が嫌いと思えるほどです。・・・そもそも日本語は、主語という概念自体を持たない言語であるという学説もあります。この学説の信憑性はさておき、日本人は主語を省く傾向が強いというのは事実です。明瞭表現を確保するためには、まず主語のはっきりした文章を作ることが望まれます。」
この本には、興味深い指摘が挙げられている。通常、学校で、子供たちは漢字の書き取りの際に主語が無い文章を一生懸命書きとっていく。しかし、文章というのは主語が無いと、その状況を正確に把握できないものだ。主語がつくだけで、状況は明快になる。
・橋を渡る→私は橋を渡る
・家を建てる→ 大工さんが家を建てる
・学校へ行く→ 学生が学校へ行く
・本を読む→ 先生が本を読む
・日記をつける→ 妹が日記をつける
ビリーフを再考する前に
自分の考えを主語付きで述べることに慣れていない日本人は、ビリーフを考慮する際にも、主語の概念が抜けてしまう。例えば、論理療法の「ねばならない」という非合理的な考えは、主語をセットで考えて初めて意味を持つようになるはずだ。
私の例を挙げてみたい。
仕事場に頻繁に出没するクレーマーに関するメールを受け取ったときに、イライラを感じたことがある。すぐに「べき思考」「ねばならない」思考に気づけた。これは、直感的に、他者への「べき」思考だろうと思ったわけです。
「彼(クレーマー)はクレームをつけるべきではない」
しかし、この非合理的な考えをもとに、論理療法(REBT)を行っても、まったく気持ちが晴れなかったのだ。実際には私の非合理的な考えは、次のものだった。
「職場(組織)は、クレーマーを野放しにすべきではない。」
この考え方を論駁しなければ、気分は整理されなかったのだ。これは非常に興味深い経験となった。「べき思考」を発見するにしても、「自分」「他者」「状況/社会」の何を主語にしているかが分からないと、ビリーフを正確に把握できないことになるのだ。
論理療法は論理的ではない考え方に気づくことができる優れたツールだと思っている。