ADHDにとって自己啓発本・成功本が危険である理由。100点より赤点脱出。
自己啓発本、特に仕事術、時間管理術などは大好物だ。暇があるとビジネス書を読んでいる。妻から見ると、私のこういうところは、本当に理解できないようで「時間管理のための本を、一生懸命時間をかけて読んでいる」のは愚かに見えるそうだ。
っていうか、図星過ぎて悲しい(涙)
しかし、実は、ここにもADHDの影が見え隠れするのだった。先日、発達障害の臨床30年の本田秀夫氏の本を読んでいて、このことに気づいた。ASDやADHD傾向のある人が何とか普通の人に追いつこうと、一生懸命で「休日でもビジネス書を読んで勉強していたりする。そういう人は心配だ。」という一節だ。まるで、自分のことだと思った。
ADHDが自己啓発本を読む理由
ADHDが自己啓発本に惹かれるのは、もっと仕事ができるようになりたいからだ。実際、ADHDは日常生活(仕事)で、常人には考えられないくらいの苦労をしている。「普通」の人が「普通」にできることができないのだ。私の仕事歴をみても、それが分かるだろう。OLさんに舌打ちされるくらい、仕事ができないのだ。
少しでも普通の人に追いつきたいという気持ちでいっぱいだ。実際に、普通以上の努力をしないと、普通の人と肩を並べて仕事をすることはできない。これは当事者しかわからない感覚なんだろうけれど。
ADHDは、依存症(アディクション)にもなりやすい。仕事中毒(ワーカーホリック)気味になっていると、さらにこの傾向が加速する。仕事終わりでも、休日でも、いつでも、もっと仕事を効率的にこなすには・・など、仕事で頭がいっぱいになるのだ。その割には、仕事ができなくて悩む。二次障害まっしぐらのコースである。
成功本は特に危険
ADHDにとっては、成功本は特に危険だ。とびぬけた営業成績をおさめたビジネスパーソンや、起業家、経営者の本など、好んで読みたくなる。読んでいるうちに、恍惚感にひたり、自分もできるかもと思える。しかし、ここでADHDならではの落とし穴に注意したい。
成功本を書いている著者は、基本的に「盛って」書いている。テストで言えば100点満点の取り方を教えるような本になっていることが多い。つまりは理想論だ。いろいろやってきたことを、あとで振り返ると「〇〇を〇〇したので、こうなった」と言えるのだが、実際には自分でも何が功を奏したかわからないはずだ。
まあ、それでは本にならないので、あえて「成功法則」を作っているのだ。これ、一度でも、コンテンツを作った人は分かるはずだ。私もいくつか自分の経験をもとにしたノウハウ本などを作ってきたので、著者の無意識の「盛り方」が分かる。別に意識的に嘘を言うわけじゃないんだけど。
まあ、自己啓発本・成功本は基本100点満点を取ることを目指す本だと覚えておいてほしい。いわゆる「普通」の読者は、70点前後(合格点かギリギリ)だとする。その「普通」の人たちが、100点になりたくて、理想を見て奮起するのが成功本の役割なのだ。
しかし、ADHDはどうだろうか。仕事上の基本戦力が20点(赤点)以下であることが多いのだ。そんな人が、100点を取るための本を一生懸命勉強して意味があるだろうか。自己啓発本を読んだ日に、ADHDは奮起するのだ。とにかく熱くなりやすいので興奮しているだろう。
しかし、その興奮と共に、翌日仕事に行ってみると、すぐさま現実を思い知ることになる。100点を取りに行って、自分が20点だったということを思い知らされるのだ。そのギャップが心に打撃を与える。もう、そもそも目指すべき場所が違うのだと知らなければならない。
ADHDは「普通」にもなれないから、70点も無理なのである。できれば20点を30点くらいに押し上げて赤点を脱するのが先決だろう。自分を知らなければならない。
だから、読むなら、発達障害の人が書いた自己啓発本が良い。
夢は寝ている時だけで十分だ(だいたい、悪夢だけど)。
肩書・立場・資格にあこがれる危険
社長になるとか、年収1000万になるとか、弁護士になるとか、肩書や立場・名声に弱いのもADHDの特徴だ。そもそもADHDは「できない」こと尽くしで人生を生きてきている。「もっと、できる人になれば認められる」と思い込んで育ってきていることが多い。条件付きのImOKなのだ。
「OK牧場」に関しては、交流分析の本を参考にしよう。
だから、一つでも秀でたものを得ようとする。
特に立場や資格には弱い。あの資格さえあれば、OKになれるのではないか。満たされない自己肯定感が暴走しがちだ。自己啓発本・成功本の類は、目に見える年収や肩書を「にんじん」に、読者を釣るのだが、ADHDは見事に釣られやすい。
しかし、前述のように、ADHDは100点を目指すより、赤点を脱するほうが先決なのだ。比較すればするほど、人生の幸福度は落ちていく。いわゆる「普通」の人と比較しただけでも、大いに落ち込む仕事ぶり(人生っぷり)なのに「成功者」と自分を比較すると、確実にがっかりさせられるだろう。
かなわない目標を立てて、必死でそれに取り組む姿は哀れでさえある(全部自分のことである。)
ADHDは自分を知らなければならない
趣味や時間つぶし、夢想するために、自己啓発本を読むのが悪いとは思わない。しかし、本当に追いつけ・追い越せの気持ちでいるなら、まずは、冷静に自分を見つめなければならない。どれほど、自分ができる(できない)人間なのかを冷静に見つめてみよう。今、できないことが、将来飛躍的にできるようになるわけがない。
ADHDの障害は、身体障がいに例えられることがある。どれだけ頑張ってもパラリンピックの競技者は、オリンピックには出られない。それは限界があるわけだし。闘う場所が違うわけだ。できないことをやろうとし続けるほど、自分を傷つける行為はない。
あまりにネガティブに聞こえるかもしれないけれど、これは現実なのだ。しかし、今できることは、将来伸びる可能性があることだということも覚えておきたい。実際、ADHDは、強烈な「強み」を持ち合わせていることが多い。欠点に覆い隠されていることもあるけれど、衝動性からのロケットスタートなどは、起業家にぴったりだ。
これまで上げてきた成果、飽きっぽい自分でも投げ出さずに何年もやり続けていることを探そう。そして、その分野の成功本を読む分には、そのモチベーションは無駄にならないだろう。いたずらに「成功」をあおるビジネス書よりも、ある分野にしぼったノウハウ本なら意味があるかもしれない。
妻の冷たい視線に耐えかねて、読んでいた自己啓発本をわきに置いて一生懸命noteを書いてみた。
なんだか、ちょっとむなしくなったなぁ。