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2025.02.16 日々
朝から厚い雲が垂れ込めた物憂い空模様。しかし、昼前には抜けるような青空が広がりました。澄み切った冷気に神聖ささえ感じる東山。
シャバーニは、視線を感じて振り返りました。ここには人生に迷ったあらゆる猿が集まるのです。
「何のために生きるのか?」だと?
「何のために働き」「何のために学び」「何のために人の間で暮らす」のか?
「他人に教えを請う?言葉に長けた君たちの当たり前はゴリラには退化だよ。それでは何一つ血肉にはならない。」
シャバーニは、いつになく多弁になりました。彼にも抱える悩みがあるからです。しかし、折角だから一つだけ真理を伝えよう。悩める猿よ。
「人生は不自由だ。何一つ思い通りにならない。だからこそ、思うように生きればいいんだ。死ぬ気でな。」そう呟きながら、くるりと厩舎の扉の方に背を向けました。
彼の背に負った銀色のプライドに、爺は(覚悟かぁ……)と自分に言い聞かせるように反芻するのです。
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