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学生食堂でいきなり脇腹をつつかれた私は、ビクッとして体を反らし振り向いた。同じ学部のヒロシと私が所属する硬式野球部の一年後輩の女子マネジャー。その隣に彼女はいた。ミニスカートが素敵なポニーテールの女の子は、その後、私の妻になった。
 
「こいつの脇腹つついたらおもろいねん!」ヒロシはおもしろがって、彼女たちにもすすめた。後輩マネージャーはためらうが、彼女は躊躇なつついてくる。好奇心旺盛な子のようだ。
 
「やめれよー」
 
大阪出身の私が言うなら、「やめろよー」が正解なのだが、この時は、なぜだかこう言ってしまった。この言いようが五條の方言と重なったことが、私を彼女に印象付けることになったようだ。
 
五條弁は、興味深い。特に命令形に顕著だ。「やめろ」が「やめれ」。「寝ろ」が「寝れ」「食べろ」が「食べり」しかも、男性形と女性形の活用が違ったりする。
 
強調の「は」というのがあって、「今日は暑い」という場合、特に強調したい時は、「今日はは暑い」と言う。音で表すと「きょうわわあつい」となる。
 
まだ若かった頃の爺と婆の出会いである。

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奥村一郎(メンタルパートナー、活動家、主夫)
I have a dream. 私の「夢」は、日本に活動家を養成する学校をつくることです。 私の「モットー」は、Life is Art. Life is Play. -生活をアートできるようになれば既に幸せ-