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2025.02.24 日々
爺の実家は縫製業を営んでいました。メリヤス屋さんです。ミシンの音は子守唄。作業場の天井近くに設えた棚には、色とりどりの糸巻きが並んでいます。所狭しと重ねられた前身頃、後身頃。オーバーミシンの正しくマシンらしい音。幾人かの縫い子さんがいて、皆、優しいおばあちゃんでした。
学校から帰り、「ただいま」と作業場を通って二階に上がろうとすると「おかえり」と声をかけてくれます。人が働いている。親が働いている姿をいつも見て、爺は育ちました。
メリヤス業?呟いてみます。「メリヤスってなに?」知らない。誰かに説明できない。
ここまで生きてきて、なぜ、疑問に感じ、調べなかったのだろう?爺は愕然としてしまいました。家業に興味がなかったのか?ミシンや裁断機を動かす姿を見て、何となくそれがメリヤスなんだろうと高をくくっていたのか?
もしくは、学校で「お勉強」にかまけ、先生が望む答を探し、興味もない問いの連続に、自発的な疑問に気づくことさえできなくなっていたのか?
いずれにしろ「なにそれ?」と感じられる感性が残っていることはありがたいことで、爺は爺になったけれど、内なる子どもは生きていたことに感謝する毎日なのです。
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