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コネクティング・ザ・ドッツ~大学で授業をしました~
こんにちは。
メンタルウェルネスあおぞらです。
「コネクティング・ザ・ドッツ」という言葉を聞いたことがありますか?これは、アップル創業者スティーブ・ジョブズ氏が有名なスピーチで語った言葉です。彼は、このフレーズを通して以下のような内容を語りました。
人生のその瞬間ごとに経験する出来事(点)は、将来を見据えてあらかじめつなぎ合わせることはできない。けれども、後から振り返った時に、それらがつながっていることに気づける。だから今経験していることに意味を見出せなかったとしても、将来つながると信じて取り組むことが大切です。
私たちは時に、目の前の出来事に意味があるのか悩むことがあります。でも、その一つひとつが未来につながる「点」になるのだとしたら、その経験も大切なものと感じられるのではないでしょうか?
今回この「コネクティング・ザ・ドッツ」という言葉を思い出すきっかけがありました。
【きっかけとなった出来事】
先日、某大学の心理学部で学生たちに授業を行う機会をいただきました。私は、この出来事がとても特別なものだと感じています。なぜなら、それは私の大学生時代の一つの「点」とつながった瞬間だったからです。
大学生だった頃、私は人生の大きな岐路に立たされていました。福祉の道を選ぶべきか、それとも一般企業に就職するべきか、迷い続けていたのです。当時、私は重度心身障害者施設でボランティアをしており、「障害者福祉に携わりたい」という気持ちが強まる一方で、ボランティアを通じて現場を見たときに、理想として語られるものと、現場のギャップを痛感していました。今後仕事として取り組んだ時に、理想と現実のギャップに苦しむのではないかという不安も抱いていたのです。
そんな時、マレーシアのペナン島での福祉ボランティア研修の募集を見つけ、思い切って応募しました。何百人もの応募者の中から選ばれたのは偶然かもしれませんが、その機会が私の人生にとって重要な「点」となったのです。
【マレーシアでの経験】
ペナン島に到着した私は、日本人が運営する障害福祉施設を訪れました。その施設を運営していたのは、日本の障害福祉分野で大きな功績を残したAさん(仮名)という方でした。厚生省(現厚生労働省)の障害福祉の専門官を務め、その後は大学教授として人材育成にも携わっていましたが、全てを辞めてマレーシアに小さな施設を立ち上げたという経歴に、私は強く惹かれました。
ペナン島の施設での日々は衝撃の連続でした。当時のペナン島では、公的な障害福祉サービスが十分整っておらず、寄付や地域住民の助け合いに頼っていました。その環境は日本とは比べ物にならないほど厳しいものでしたが、一方でそこにある地域のつながりや支え合いの温かさに触れることができたのです。それは日本では失われつつある、純粋な人と人との関係のように感じました。
さらに、戦争の歴史の影響を直に感じることもありました。多くの現地の人々が片言の日本語を話し、昔の日本の歌を覚えていました。その理由を尋ねると、かつて日本がマレーシアを植民地支配していた時代に強制的に教えられたものだというのです。その事実を聞いた時、私は日本人として複雑な気持ちを抱かずにはいられませんでした。戦争の影響は終わったものではなく、今なお人々の生活に残っている――その現実を目の当たりにした瞬間でした。
【理想と現実のギャップ】
Aさんと話をする中で、私はずっと抱いていた疑問をぶつけました。
「理想と現実のギャップに苦しむことはありませんか?」
するとAさんは、私にこう答えてくれました。
「理想というのは現実と違うからこそ理想であり、そこにギャップがあるのは当然です。でも、現実で苦しんでいる人たちがいるからこそ、理想に向かって努力する意味があるのです。」
その言葉に、衝撃を受けたのを今でも覚えています。
それまで私は、理想と現実のギャップに苦しむこと自体が問題だと考えていました。でも、Aさんの言葉はギャップがあることを受け止め、その上で行動することの大切さを教えてくれたのです。この経験が、私が福祉の道に進む決意を固めるきっかけとなりました。
【夢の形と現在】
その出来事をきっかけに、20歳前後の若かりし私は3つの夢を持ちました。
1.自分で施設を作ること
2.厚生省の専門官になること
3.大学の教授になること
単純ですが、Aさんが歩んだ道を私も進んでみたいと思い描いた夢でした。。。
あれから20年以上が経ちました。それらの夢は少し形を変えながらも、実現しました。
1つ目の「自分で施設を作ること」は、「メンタルウェルネスあおぞら」を開業した形で実現しました。
2つ目の「厚生省の専門官」は、30代の頃厚生労働省に出向という形で一定期間勤めることができました。
そして3つ目の「大学教授になること」は、教授という形ではありませんが、今回大学で授業するという形で叶ったのです。
これらが叶ったと言えるかどうかの判断は、人にもよるかもしれませんが、立場や形にこだわっていたものではありませんでしたので、私にとっては十分な夢の達成だと感じています。
そう思えるのも、あの時マレーシアでの経験が私の人生に「点」を打ってくれたからだと思っています。
【まとめ】
人生で経験する一つひとつの出来事は、すぐには意味がわからないかもしれません。しかし、後から振り返るとそれが大切な「点」となり、やがてつながる瞬間が訪れます。
今回の授業を通じて、学生たちから「とてもわかりやすかった」「もっと勉強したい」という感想をいただき、私自身がまた一つ新しい「点」を見つけたように思います。この縁がどのように未来につながっていくのかはわかりませんが、一つひとつの出会いとご縁を大切にしながら、これからも進んでいきたいと思います。
最後にスティーブジョブスの伝説のスピーチは以下から見ることができますのでよければご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。