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メンタルヘルスとペット~ペットの癒し効果の科学的根拠~

近年、多くの人々がペットとの触れ合いや関係性を通じて癒しや心の安定を得ています。なぜ人々はペットに癒されるのでしょうか。

現代社会でのストレスや孤独感といったメンタルヘルスの課題に直面する中で、ペットは心の支えとなる存在です。

本記事では、「なぜ人はペットに癒されるのか」というテーマに焦点を当て、その理由と科学的根拠について探っていきます。

ペットと触れ合うことで得られるメンタルヘルスのメリット

ペットとの触れ合いは、私たちのメンタルヘルスにさまざまなメリットをもたらします。

・ストレスや不安を軽減する
ストレスは現代社会で普遍的な問題となっていますが、ペットと過ごす時間や触れ合いは、ストレスの軽減にとても効果的です。ペットと遊ぶことや撫でることは、リラックス効果をもたらし、ストレスホルモンの分泌を抑制します。また、ペットとの関わりは癒しと安心感をもたらし、ストレスから解放される助けとなります。

・孤独感の緩和
特に一人暮らしや社会的なつながりが少ない人々にとって、話し相手や遊び相手になってくれるペットは心の支えとなる存在です。また、ペットは無条件の愛を示し、飼い主に対して常にそばにいてくれます。彼らとの触れ合いやコミュニケーションを通じて、孤独感を軽減し、心の豊かさをもたらします。

・愛情や安心感を得る
ペットとの触れ合いは、心の安定化や癒しをもたらします。ペットは私たちに対して無条件の愛と支持を与え、飼い主のストレスや不安を理解し、心の傷を癒してくれます。無邪気な姿や忠実な眼差しなど、ペットと触れ合うことで、心を和ませ、安心感をもたらします。

・運動や外出の促進
ペットと散歩や遊びに行くことで、運動や外出の機会を増やすことにも繋がります。運動は、飼い主の心と体を健康に保つために必要なことです。ペットと触れ合うことで、運動量を増やし、健康的な体づくりをすることができます。

ペットと触れ合うことで改善される症状

ペットと触れ合うことで、以下のような症状が改善されることが研究で明らかになっています。

・不安やうつ症状の緩和
ペットとの触れ合いは、不安やうつ症状の緩和に効果的です。ペットは安心感をもたらし、癒しの存在として働きます。犬や猫との触れ合いやコミュニケーションは、心の安定化やポジティブな感情の促進につながります。

・自己評価の向上
ペットとの関わりは、自己評価の向上にも寄与します。ペットは無条件の愛を示し、飼い主を受け入れます。このような関係性を通じて、飼い主は自己肯定感や自己価値感を高めることができます。

・集中力の向上
ペットとの触れ合いは、集中力や注意力の向上にもつながります。ペットとの関係は、飼い主の注意を引き、現在の瞬間に集中させます。これによって、ストレスや不安からの解放を促し、心の余裕を生み出します。

ペットの癒し効果の科学的根拠

ペットの癒し効果は感覚的なものだけではなく、科学的根拠のもとに証明されています。

・オキシトシンの分泌促進
人は幸せであると感じている時、脳内ではオキシトシン(別名:幸せホルモン)というホルモンが分泌されており、それにより、疲労感やストレスが緩和され、幸福感が得られています。このオキシトリシンは人間同士の触れ合いでも分泌されますが、ペットなどの動物(特にワンちゃん)と接しているときに多く分泌されることが分かっています。

・セロトニンの分泌促進
オキシトシンと同様に、「セロトニン」も幸せホルモンとして知られています。セロトニンは、日光を浴びることで分泌されるされますが、ペットとの触れ合いでもイライラやストレス、疲労感を軽減する作用を持ち、精神を安定させてくれるなど高い癒し効果が認められています。

・フェニルエチルアミンの分泌促進
天然の惚れ薬や恋愛ホルモンなどとよばれる「フェニルエチルアミン」。その名の通り、恋愛をすることで分泌されるホルモンですが、ペットと接している時にも分泌されます。このホルモンが分泌されると脳の活動が鈍くなり、ストレスを緩和する効果があります。

・心拍数と血圧の低下
ペットとの触れ合いや撫でることは、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを低下させる効果があります。そのほかにも血圧や心拍数の低下をもたらします。リラックス状態が促され、ストレスの緩和や心の安定化につながります。高血圧患者が降圧薬を服用した際に、ペットの飼い主の方が心拍数も血圧もも低下して安定しやすいとい研究結果が出ています。(グラフ1参照)

グラフ1

ペットと触れ合うことの注意点

ペットと触れ合うことは楽しく癒しをもたらす一方で、注意が必要な点もあります。以下に、ペットと触れ合う際の注意点をいくつかご紹介します。

・ペットの行動の理解
ペットは人間と異なる行動パターンを持っています。彼らがどのような行動をとり、どのようなサインを示すのかを理解することが重要です。例えば、犬が興奮しているときや猫がストレスを感じているときに触れられることが好ましくない場合があります。ペットの行動やサインを読み取り、適切に対応することで安全な触れ合いを楽しむことができます。

・ペットに負担をかけない
ペットと触れ合う際には、適切な身体的接触を心掛けましょう。犬や猫などのペットは個体差があり、触られることに対して好みや不快感を感じる場合があります。人間と同様に動物たちも疲れたり、ストレスを感じます。ストレスや不快感を示している場合は、無理に触らず、負担をかけないよう休ませてあげましょう。また、適度な力加減で優しく触れることも大切です。

・アレルギー反応への注意
一部の人々は、ペットに対してアレルギー反応を示すことがあります。特にペットの毛や唾液に対して過敏な場合は、注意が必要です。ペットを飼う前に、アレルギーの有無を確認しましょう。

・責任とコミットメント
ペットを飼うことは責任とコミットメントを伴います。ペットは家族の一員として長い期間を共に過ごす存在です。彼らの生活をサポートするためには、食事や運動、トイレの掃除、十分な関心や愛情を提供する責任があります。ペットを飼う前に、自身の生活スタイルやリソースとの適合性を考慮し、長期的な責任を果たすことが必要です。

まとめ

ペットと触れ合うことは、私たちの心と体を癒してくれる素晴らしいものです。ペットと触れ合うことで、私たちはストレスや不安を軽減し、幸福感や安心感を得ることができます。また、ペットと触れ合うことで、私たちの運動量を増やし、健康的な体づくりをすることができます。ペットと触れ合うことは、私たちのメンタルヘルスに大きなメリットをもたらします。

  1. Allen, K., Blascovich, J., & Mendes, W. B. (2002). Cardiovascular reactivity and the presence of pets, friends, and spouses: The truth about cats and dogs. Psychosomatic Medicine, 64(5), 727-739.

  2. Allen K,et al. (2001).The effect of a low-carbohydrate diet on blood pressure in patients with type 2 diabetes mellitus: a randomized controlled trial. Hypertension,38,815-820

  3. McConnell, A. R., Brown, C. M., Shoda, T. M., Stayton, L. E., & Martin, C. E. (2011). Friends with benefits: On the positive consequences of pet ownership. Journal of Personality and Social Psychology, 101(6), 1239-1252.

  4. Odendaal, J. S., & Meintjes, R. A. (2003). Neurophysiological correlates of affiliative behavior between humans and dogs. Veterinary Journal, 165(3), 296-301.


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