ソーシャル・ジェットラグ 〜現代人の睡眠に潜む「社会的時差ボケ」の正体とは?〜
はじめに
平日は毎朝7時に起きて会社へ行き、帰ってきたらご飯を食べてお風呂に入り、24時に寝る。休日は11時まで寝てゴロゴロして1日過ごし、寝るのは深夜1時。平日の睡眠時間は限りなく減らし、週末の「寝溜め」にかける生活。そして、毎週月曜日が憂鬱な日々、、なんてことありませんか?しかしこの睡眠のとり方が非常にまずいのです。今回はソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)の思わぬ悪影響について、科学的観点からご紹介したいと思います。
ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)とは?
ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)とは、“平日と休日の就寝・起床リズムのズレ”のことを指します。
通常の時差ボケは、海外と日本との時差によって日光を浴びる時間が体内時計とズレてしまい、体が混乱して気分が悪くなったり眠りにつけなくなったりする症状のことです。
このような現象が、平日の眠りのリズムのズレによっても引き起こされてしまうこと。それがソーシャル・ジェットラグです。起きる時間が遅くなる=体が日光に当たる時間が遅くなる、というのが根本的な原因です。この時差ボケが続くと、体はどんどん不調になっていきます。
なかなか戻らない体内時計
さらにこの社会的時差ボケが厄介なのは、その「戻らなさ」のせいです。ある研究(下記グラフ参照)では、休日の2日間朝寝坊しただけで、体内時計が30〜45分遅れてしまうことが示されています。
その体内時計の遅れのせいで、週明けの前半まで眠気やダルさが残ってしまうことも示されています。あなたも経験したことがある"月曜日憂鬱現象"は、まさにこの社会的時差ボケによるものなのです。
社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)の悪影響
睡眠障害:ソーシャル・ジェットラグに苦しむ人々は、週末や休日に不規則な睡眠リズムになっているため、平日になかなか寝付けないことがあります。これにより、十分な質の高い睡眠ができず、日中の眠気や疲労がどんどん蓄積します。そして、また眠れなくなって疲労が溜まって…。悪循環ですね。
心理的な影響:ソーシャル・ジェットラグは、ストレス、不安、抑うつなどの心理的な問題を引き起こす可能性があります。生活リズムがバラバラになると、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすことが知られています。
生活の質:社交的な活動が上手に出来なくなってしまうため、ソーシャル・ジェットラグのある人々は友人や家族との時間を制約されることがあり、生活の質が低下する可能性があります
健康への影響:ソーシャル・ジェットラグは、慢性的な病気のリスクを増加させる可能性があります。これは、体内時計の乱れが自分の体のリズムと代謝やホルモンに影響を与え、肥満、糖尿病、心臓病などの疾患と関連があるとされています。BMIやメタボは体内時計のズレと密接な関係があることも示されています。
パフォーマンスの低下:ソーシャル・ジェットラグがある場合、注意力や判断力、クリエイティビティなどの認知能力に影響を与え、勉強や仕事でのパフォーマンスの低下を招く可能性があります。無理して夜遅くまで仕事に取り組むというのは、科学的に悪影響だという事が証明されているのです…。部下に残業をさせたくなるような気持ちもあると思いますが、このような悪影響も多大にあるのです。
おわりに
社会的時差ボケ(ソーシャル・ジェットラグ)についてご理解いただけたでしょうか?おそらく、概念として新しいこともあり、聞いたことがなかったという方も多いのではないでしょうか?しかしながら、睡眠とメンタルヘルスを始めとした体の諸問題には大きな関係があることが示されています。今一度睡眠や働き方について再考し、この概念を頭に入れて仕事に取り組んでみましょう。
Writer: 新村優太
Mental-Fit Research Platform
Chief Student Researcher
自身が過去にうつ病になった経験から、すべての人がメンタルの問題に対して正しく予防・対処出来る世界を創りたいと考え、心理学を専攻する。将来は、日本のメンタルヘルスに関しての考え方を変えるための活動をすることを目指している。