『希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉』 西日本新聞社
2021年2月のとある土曜日、なかなか旅行やリフレッシュの外出もできないし、日常からちょっと離れたいと思って手に取った本。特にご本人が執筆された文章がまとめられた本ということで、こういう活動をされている人の感じ方、考え方にも興味がありました。
中村哲さんは、アフガニスタンで医療活動と砂漠化した土地に命を取り戻して現地の人々の生活を救った方。活動内容はテレビで少しみたことがある程度だったけれど、2019年12月に亡くなったニュースは衝撃で、どうして、と強く思った記憶がありました。
写真がたくさん掲載されているのだけど、人々の笑顔が本当に素敵。そして、中村さんの言葉は、なんというか、物事の本質をすっと捉えて率直に伝えてくれる感じがしました。しっかりとした信念と共に、現地のことを心から愛するあたたかさが伝わってくる文章。心の底からどんな人にもそっと寄り添って自然に行動できる方だったのかな、と思います。
現地で医療活動をしていて、砂漠化や干ばつで農村がなくなって人々が難民化する事態を直に体験して、なんとかしなきゃ、と思っての行動だったという経緯も、中村さんに取っては至って普通の行動だったのかもしれません。
そこからいろんな立場や国籍の人を巻き込んで、本当に農耕地復活をなし遂げた実行力。ショベルカーを操作されている写真が何枚かありましたが、まずは自分がやってみて、現地の人のためには本当に何が必要なのか、考え続けた方であったのだと本全体を通して納得しました。
日常でのほんの小さな一コマでも、そういった感覚って忘れがち。反省しました。
灌漑については全然活動されていた内容を知らなくて、現地の状況、またそれを助けた日本の伝統技術にも驚かされました。今の生活があるのも、何千年もかけて人が培ってきた自然との付き合い方の知恵があってのこと。
普段川沿いをよく散歩するのですが、そんなこと一回も考えたことがなく、自然でのリクリエーションもリフレッシュやスポーツ感覚意外あまり注視したことなく。
なんだかすぐ自然に向かいたくなりました。
シンプルに困っている人がいたら手を差し伸べる、行動する、それだけのこと。「それは普通のことです」。
頭でっかちになって、いちいちいらないことまで考えている自分の視野をガーッと広げてくれて、中和してくれる感じがしました。
本って不思議で映画ではないのだけれど、自分の頭の中で著者の言葉を反すうして想像して、映画さながらの映像が頭脳を流れる気がする。
中村さんの行動はなかなかできることではない、という一言で片付けてしまいたくない余韻と、心の平和も提供してくれる本でした。