『しゃにむに写真家』 吉田亮人 (亜紀書房)
Twitterで好きな本屋さんをフォローしているのですが、いつも楽しみなのが京都の誠光社さんのTweet。ある時こんなRTがあって、「バイトの石川くん」のブログに非常に興味をそそられました。
これまで写真に興味があったわけでもなく、吉田さんのことも存じ上げなかったのだけれど、この「バイトの石川くん」の文章が素晴らしく、優秀でセンスの良い方(に違いないと勝手に思った)が著者と直接話して読んでみようと思った本、そしてその内容が「正直な文章」で人間味あふれるストーリーということで絶対読みたいと思いました。
本を購入して、まず、手に取ってページをめくると目に入ってくるのが著者作の写真。
著者のことも写真のことも何も知らなかった私だけど、心をガツンと掴まれる写真たち。
どうしてこんなに何かを訴える写真を撮れるんだろう、と純粋に興味が沸きます。
本のストーリーが展開していく中で、何回も戻って各写真を見つめました。
そして、著者が写真家になっていく過程を描いた本編のストーリーは、一気に読み終えました。
本の題名が示すそのままに、「しゃにむに」に行動し続ける著者。それが本当に正直に包み隠さず描かれています。
このストーリーの発端は著者の奥さんの「今の仕事ってずっと続けるつもりなん?」という言葉なのだけど、各ステージでも奥さんの厳し〜い言葉は著者の行動の起爆剤になります。
こんな厳しいこと言ってくれる人ってなかなかいない。(しかもその加減が絶妙)
「この人となら人生面白くなりそうとお互い感じた」
そうやって思える人と人生でどれくらい巡り会えるだろう。
そしてその感覚をずっと大切にして生きていける奥さんはすごくかっこよくて憧れてしまった。
そして、そんな奥さんの言葉に翻弄されつつも、咀嚼して、奮起して、「しゃにむに」に行動し続ける著者の正直さも素敵。
変な自意識や世の中のあれこれに囚われず、思いに素直に行動し、失敗もするけれど反省して邁進し、悩み抜いて、たまに手抜いて。
解決しようのない悲しみや怒りがあっても、向き合って悩んで考え抜いて。
すごーく人間的で、だからこそ発揮される直感力も冴えてる感じがした。
そんな著者だからご縁がご縁を呼んだり、写真にも生命力が漲っているのかも。
なんだか、ご夫婦ともに、人生の大切なことは、コントロールできなくて、ひょんなことから偶然に幸せは芽生えるっていうことを、よく分かってて大切にしている感じ。
私もそうでありたいなあ。
タイトルや本の装丁も、本の内容のイメージにぴったり。
進む道に迷ったり、悩んだら、背中を押してもらいに戻りたい本です。