それ、同じ話だよ
斜め前の席に座ったまるちゃんが、くるっと振り向き興奮気味に私に話してきた内容は、
はぁ?
ポカーンとなるような話であった。
その話を聞く限り、聞いているこっちとしては全く興奮するような話でもないし感情も揺さぶられないのだが、本人が興奮気味なので聞かざるを得なかった。
どうやら、新しく赴任してきた上司(男性)が同郷らしく、出身校の話やらで盛り上がったのだと言っている。
上司と話をしたのが、クラスメイトのシンちゃんが今どうしているとかの話らしい。
誰だよシンちゃんって。
その上、その話で盛り上がってて上司はまだまだ話足りないようで、途中仕事の電話が入ったんだけど
「折り返しにして」
と言って、その後も上司は私との会話を楽しんだのよ、どうでもいい自慢も入れてくるまるちゃん。
さらに、クラスメイトのシンちゃんはとってもイケメンだったのよ~なんて、誰にもメリットがなさそうな情報を流してくる。
イケメンのシンちゃんとクラスメイトの私って凄いでしょ、と暗に言ってるような気がしてならない。
アラカンのシンちゃんがイケメンだろうが、ほんまどうでもいい。
他人の地元の話なんて、ほんま興味わかない。
そんな話を嬉々として私に言ってくるのだが、
史上最強に興味ないんですけど?
まぁ、いいや、上司と同郷で気に入られた気がして嬉しかったんでしょ。
そこは、優しい私、仕事の片手間で聞いていた。
これは、なんの修行なのだろうかと思いながら。
*
そして、夕方。
あと10分ほどで終業っていうところで。
片付けも終わり、ぼんやり座っていたらまるちゃんが言い出した。
「ねぇ聞いて、今日面白かったのよ~。」
と、お昼間に聞いた、上司との同郷話をリピートしてきた。
え?
さっき聞いたけど?とは言いだす隙もなく、それはそれはさっきよりパワーアップた喜びようで話をしてきた。
同じ話をしてしまうことって、誰しもあると思う。
日にちが経って、時間もあいてしまった場合は私も同じ話をよくしてしまうから。
言いながらデジャヴな感じがあり”あ、前言ったな”と気付く。
相手の表情もしくは、オチを相手が喋ってきて”あ、知っていた話だな。”って二度目の話をしてしまったことに気付く。
けどね、同じ日に同じ話を同じ人間にすることは、認知症の人以外無いと思ってたんだけどね。
いた。
ここに、いた。
きっと、まるちゃんは私の事なめてる。
二度目の話をした相手かどうかも気にならないほどに、私のことをぞんざいに扱っている、そんなところが垣間見れた気がした。
以前にも経験したこの感じ。
そして、このどうでもいい上司との会話について、会う人会う人に嬉々として喋っていたまるちゃん。
おいおい、陰で
「なにあれ?自慢?自慢かどうかもわからないレベルだけど?」
って言われ失笑されてるよ、大丈夫?