じんわ
京都でふぐのひれ酒というものを飲んだ。
ふぐのひれをこんがりと炙って、日本酒の中に浸してそのまま飲む。
一口飲んで、香ばしさから、ひれが丁寧に炙られたことがわかる。
味もおつだが、器もおつである。
湯飲みに蓋がしてあって、そこに「ひれ酒」と美しい青い文字で書かれているのだ。(京焼だろうか?)
ひれ酒だけのための湯飲みはどこで作られて、このお店にやってきたのだろう。
そんなことを思いながら酒を口に含むと、「じんわ」と何とも言えない味わいと、温かさが身体に広がる。
もしかしたらずっと受け継がれている湯飲みなのかもしれない。
「受け継ぐ」という営みがとても好きだ。
技、文化、モノ・・・。
あらゆるものが人と人とを介して受け継がれていく。
そこには「じんわ」と広がるつながりがある。
ふと自分が身につけている服や着物、アクセサリーは人から受け継いだものが多いことに気づく。
受け継ぐことで、もういない誰か、離れている誰かの面影がすぐそこにあるかのように感じられる。
誰かと「じんわ」とつながると、私は心が温まって、ちょっといいなと思う自分になれる気がする。
華やかに、派手に誰かとつながることは、私には難しいけれど、「じんわ」とつながることを大事にしたい。