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青春の葬送、その後

去年は結構エモいテキストを書いた記憶がある。儀式は人類の大きな発明だ。2020年、世界は大きく変わってしまったが、個人的な生活も大きく変わった。

ありがたいことにCOVIDの影響は小さかったが、青春の幻想をなぞることへの興味が減衰している。昨年、意図したものであるが、自分が「おじさん」になってしまったようですこしせつない。悪いことではないし、「大人になった」ということだろう。ただ、「彼ら」をつまらない存在だと眺めていた当時の僕が睨んでいる、ような気もする。

自意識はエネルギーにもなるが、時間差で、呪いとなる。呪いを引き受ける意志を持つことが、人間をやめずに生きていくことなんだろう。

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プライベートが凪いだ代わりに、お仕事は忙しくなった。細かい話はリリースで語りたいが、個人ではなくチームや法人のことを考える機会が増えた。自分が大好きなので、これまでそのポジションは遠慮していたけれど、存外、周りにも愛を注げることに驚いた。ひとえに、周りのみんなのお陰である。

精神性も変わり、ポジションも変わったので、今年は例年よりも本を読んだ気がしている。読みかけや積ん読、漫画を除き、「完読」したものを羅列してみた。計51冊。ジャンプ程度の習慣。思ったより少なかった。

ベッドで寝転んでYouTube見ていた時間が多すぎたんだろうな。お笑い芸人のチャンネルが面白いのが悪い。いや、意志の弱さが悪い。

ああ、そうだ。僕は「エモい」の長期投資を進めていく。
短期の回収は、飽きてしまったのだ。「これまで長かったよなあ」と振り返って感じる「エモ」を知りたい。マヂカルラブリーのM-1グランプリ優勝みたいな。僕はニワカだけど、本当に格好良かった。

ああ、そうだ。感傷の代わりに、読んだ本と一言メモを記載してみる。


コミュニティの本 (6)

共同体の基礎理論 (岩波現代文庫―学術)

古典的名著。「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」の流れでもあるが、共同体の形態を「アジア的」→「古典古代的」→「ゲルマン的」の流れで整理しながら、マルクスとウェーバーの理論に乗っかりながら、古典的な共同体の解体について語っていた。
名著であることは間違いないのだが、高度経済成長期の著作であり、論旨が現代の流れと真逆であることが面白い。今の流れも一時的なものに過ぎないのだと、改めて気が付かされる。

家と村の社会学 (SEKAISHISO SEMINAR) | 鳥越 皓之 

日本の村落研究。たしか、共同体やコミュニティがでかい概念なので、イエ・ムラを詳しく知ろうと思った記憶。緻密なフィールドワークと歴史研究に裏打ちされており、痛快。「長く生き残る村は、定期的に、新しい価値観を持った<アウトサイダー>が誕生してきた」的なところは、コミュニティ全般に適用可能な気がしている。

内山節著作集〈15〉増補 共同体の基礎理論 | 内山 節

大塚氏の名著と、同名の著作。共同体を解体すべきものではなく、有用なものとして定義している論旨が新しかった。近代化の幻想が崩壊した後の論旨であり、共感できるものがある。強固な共同体は「フラクタルな多層構造」であるという分析は示唆に富んでいる。

サードプレイス――コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」 レイ・オルデンバーグ, マイク・モラスキー, 忠平美幸

多くの人が引用している世界的な名著。これ読んでないのに「サードプレイス」って語る人はニワカ。サードプレイスとして重要な8要素を、フィールドワークと歴史から抽出しているのが面白い。Wikipediaなどに詳細は記載されているので、読んでみてほしい。
これもまた時代背景を鑑みるに、古い部分があるので、そのあたりの更新は意味がありそうな予感がする。

コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press) | エティエンヌ・ウェンガー, リチャード・マクダーモット, ウィリアム・M・スナイダー, 櫻井 祐子, 野中 郁次郎, 野村 恭彦

いわゆる「実践コミュニティ」という概念をはじめて提唱した著作。実践コミュニティとは「あるテーマに関 する関心や問題,熱意などを共有し,その分野 の知識や技能を,持続的な相互交流を通じて深 めていく人々の集団」。知識には、情報と実践の両方が必要であると説き、実践を教諭すうることで、集団に知識(Knowledge)を溜めていく、みたいな話。
コピーペースト不可能性が競争優位の源泉になるとするなら、「実践コミュニティ」を内包することは、法人として不可欠だと思う。(もちろん、日常に内包しても良いと思うが。)


Building Successful Communities of Practice: Discover How Connecting People Makes Better Organisations (English Edition) 

スクラムマスターとして、政府のAgile化をサポートしてきた方による著作。理論というよりは、理論をどう実践していくかのマニュアルだった。具体的なワークショップや、振り返りの方法、対応していくステップなどが記載されており、良いテキストだった。
会社のチームで、自主的に翻訳したけど出番がない。どうにか日の目を見せたいですね。


開発まわり(8)

アジャイルサムライ−達人開発者への道− | Jonathan Rasmusson, 西村 直人, 角谷 信太郎, 近藤 修平, 角掛 拓未

言わずとしれた名著。再度読み直した。前職でやってたことは正しかったな、と思い直す。エンジニアチームだけでなく、他の職種、あるいはぜんぜん違う事業体でも導入すべきマインドだと思う。会社に布教した。
DXとかはよくわからないけど、まずは「このマインド」がインストールされるところからなのでは?と思う。

Scaling Teams 開発チーム 組織と人の成長戦略 ~エンジニアの採用、マネジメント、文化や価値観の共有、コミュニケーションの秘訣~ (Compass Booksシリーズ)

チームが大きくなっていく時に、直面する落とし穴を事前に潰そう、という本。正直、拡大期のチームを迎えたことがないので、ピンとは来なかった。書いてある内容はたしからしいし、いつか来るときにに向けた投資。

Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか | Brian W. Fitzpatrick, Ben Collins-Sussman, 及川 卓也, 角 征典

開発者なら当たり前に知っている、HRT(Humility / Respect / Trust)の精神の原典。人間が複雑回帰な機械である前提で、面倒なことを避け、互いに楽しくやっていくために必要だ、みたいに定義していたのがよかった。知性を感じる。
合理的に考えても、HRTの方が良いのに、お気持ちで実践できない人がたまにいるは悲しいよね。

ドメイン駆動設計入門 ボトムアップでわかる! ドメイン駆動設計の基本 | 成瀬 允宣 |本 | 通販 | Amazon

DDDについて知っておかなきゃなと思い、チームのエンジニアに進められて読んだ。わかりやすく書いてあり、非エンジニアとしても理解できる内容だった。知識・アプリケーション双方を表現するパターンが記載されており、なんとなく使える気がしている。(ただ、やはり実際に開発をしないと手には馴染まない概念だなと思った)

苦しんで覚えるC言語 | MMGames

42tokyoの試験を受けるために読んだ。ポインタを理解できたのがよかった。合格したけど、開発し続けるマインドにならず、しっかり退学になってしまった、トホホ。
多くの言語が、Cのラッパーなのかも。C書いた後js書いたら楽チンで感動した。型がないのは気持ち悪くなってしまったけど。

アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き

振り返りの方法を学ぶために読んだ。結局KPTばかりやっているけど、アイスブレイクの参照には使っている。振り返り前に「人ではなく、現象についてコメント」などを伝えるようになったのはこの本のお陰。一旦読んでおくべきな気がする。

リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック (Theory in practice) | Dustin Boswell, Trevor Foucher, 須藤 功平, 角 征典 

42tokyoはもちろん、自分でjsを書く時にも参考になるかなと思って再読。コードはもちろんだけど、ドキュメンテーションをする際にも有用な考え方だなと思った。
共通化、一意に決まる名前にする、単数/複数揃える、など当たり前のものから、変更過程が追えるようにする的な発見もあったのが良かった。次第に意図は読み取れなくなっていく。

Web API: The Good Parts | 水野 貴明 

RESTな設計についての本。APIチームと話すことが増えたり、エンジニアと面接することも増えたので読んだ。REST、それはシンプルな原則。ちゃんと設計されたAPIって、マジできれいだし、ちゃんと設計し続けるのって本当にすごいことだ。。。
プロダクトマネジメントはエンジニア出身が良いみたいなのは、こういうところにも影響するかもと思った。


お仕事まわり (11)

INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント

プロダクトマネージャーのバイブル。勉強になったし結構テンションが上った。世の中の人、みんな読んだらいいのに。

THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

SaaSモデルの事業で、なぜCSが重視されるのか、よくわかった。源流を知ることで世の中の構造がつかみやすくなるのだなあ。米国と日本は土地の大きさが違うから、浸透しにくい概念だったのかもしれない。

「つながり」の創りかた― 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル

今流行の「サブスクリプション」が結局何なのかを明らかにしている。サブスクと形容されるものを、複数の状態に分類している。本質は分割払いや定額払いではなく、リカーリングの基盤であること。とりあえず、サブスクとか考える前に読むと良さそう。

リッツ・カールトン 超一流サービスの教科書 (日本経済新聞出版) 

小売のサービス業化が進む中で、一流のサービス業はどんなことしてるんやろか、と思って読んだ。「マニュアル」と「データ」をうまく使っていて、そりゃしっかり成長するわ、と感じる。サービス業は型化しにくい用に見えるが、原理原則があるはず。それを技術で拡散していきたい。

ロジカル・シンキング: 論理的な思考と構成のスキル 

僕の知っている「論理」とは違ったが良い本だった。ビジネスにおける「ロジカル」が論理的ではないよな、と常々思っていたが、疑問が氷解した。
情報の粒度を揃え、構造化して考える、みたいな感じ。論理式はその中での参考にすぎなそう。

ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法

良い本だった。1on1がなんの意味があるんだろうね、と思うこともあったけど、効用を理解できた。コーチングとティーチングの機会になるし、なにより、シンプルに情報を共有できる。
エンジニアチームやインターンとは、リモートで1on1をしている。実はリモートワークほど、1on1は不可欠な業務な気がしている。

ファイナンス思考――日本企業を蝕む病と、再生の戦略論

さすがに読まないとな、と思って読んだ。仰々しいタイトルだけど、内容は誠実だった。PL思考だけでなく、BSでも考えないと雑魚い戦いしかできなくて、袋小路にドボンだぜって話。
言ってることは理解できるし、賛同するけど、実際に自分が経営者の立場で実践できるかってのは疑問。その胆力が経営者の素質の1つなのかも。
CTOの頭の中:技術を財務で表現する の凄さがようやくわかった。


はじめてのリーダーのための 実践! フィードバック 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す「全技術」

厳しいフィードバックをするときのお作法の本。会社で読んだ。ピンときてない人も多かったけど、非常に参考になった。というか、僕が恋人としてきた会話が実例で乗っていて面白かった。言いにくいけど、本当のことを伝えるのってめちゃくちゃ大変だと思うんだよね。

エッセンシャル版 ミンツバーグ マネジャー論

世の中の「マネージャー」職について語った本。大小、業界とわず20人強のマネージャーへのインタビューと観察を元に書かれている。具体的な学びはない(というか難しい)が、メンタリティを獲得するのには非常に良かった。

会社法入門 新版 (岩波新書) : 神田 秀樹

会社は「法人」という不思議な形態であることを自覚した。サブカルクソ野郎なので、敵だとみなしていたけど、仕組みの上で定義された新しい「いきもの」みたいな感覚もあり、結構目からウロコだった。会社形態をどう定義するのか、ってのも国際上での競争戦略になるわけで、ちゃんと勉強するのって大事だな。

金儲けのレシピ | 事業家bot

古今東西の良質なビジネスモデルの原理原則が書かれている。「レシピ」って命名が秀逸だと思った。これを元にどうアレンジしますか?って問いかけが詰まっている。当たり前の事が多いが、レシピなのだから当然。「スタートアップ」ではない形で、事業を演る人は目を通しておいた方が良いと思う。

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ここまで書いてきて、0時を超えてしまった。ハッピーニューイヤー。振り返りの手は止めることにしよう。心が折れたわけではないが、新しい年になって過去に手を伸ばすのはいささか縁起が悪そうだ。再三いうが、26冊を書く気力が一切なくなった、とかではない。泣く泣く、羅列に努めようと思う。


趣味の本 (26)

未完の資本主義 テクノロジーが変える経済の形と未来 (PHP新書) | ポール・クルーグマン, トーマス・フリードマン, デヴィッド・グレーバー, トーマス・セドラチェク, タイラー・コーエン, ルトガー・ブレグマン, ビクター・マイヤー=ショーンベルガー, 大野和基 
福岡伸一、西田哲学を読む――生命をめぐる思索の旅 動的平衡と絶対矛盾的自己同一
信頼の構造
理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性 限界シリーズ (講談社現代新書)ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー | ブレイディ みかこ
入門!論理学 (中公新書)
なぜ世界は存在しないのか (講談社選書メチエ)
量子力学で生命の謎を解く
群れは意識をもつ (PHPサイエンス・ワールド新書)
アイデンティティが人を殺す (ちくま学芸文庫) | アミン マアルーフ, Amin Maalouf, 小野 正嗣
デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂
中空構造日本の深層 (中公文庫)
世界は贈与でできている 資本主義の「すきま」を埋める倫理学 (NewsPicksパブリッシング) 
テーマパーク化する地球 (ゲンロン叢書)
クロノデザイン 空間価値から時間価値へ | 内藤 廣, 浅見 泰司, 赤松 佳珠子, 山本 佳世子, 和田 章, 伊藤 香織, 小野 悠, 嘉門 雅史, 神吉 紀世子, 城所 哲夫, 木下 勇, 斎尾 直子, 坂井 文, 田井 明, 竹内 徹, 林 良嗣, 福井 秀夫, 船水 尚行, 南 一誠, 保井 美樹, 内藤 廣
ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 (Audible Audio Edition): ジェームズ・クリアー, 佐々木 健, パンローリング株式会社
21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考 | ユヴァル・ノア・ハラリ, 柴田裕之
非‐場所―スーパーモダニティの人類学に向けて (叢書人類学の転回) | オジェ, マルク, Aug´e, Marc, 真知子, 中川
実践 行動経済学 | リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン, 遠藤 真美時間と自己 (中公新書) | 木村敏
オブジェクト指向UIデザイン──使いやすいソフトウェアの原理
複雑系科学への招待 2018年 05 月号

物語
一人称単数 | 春樹, 村上
草の花 (新潮文庫)
猫を棄てる 父親について語るとき
今日は誰にも愛されたかった(ナナロク社) | 谷川 俊太郎, 岡野 大嗣, 木下 龍也
言葉の外へ (河出文庫) | 保坂 和志
僕のなかの壊れていない部分 | 白石 一文

村上春樹の短編や、好き好き大好き超愛してるとか、箱崎ジャンクションとか好きな小説は読み返した記憶もあるな。

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エモい話を書かずにここまで来た。なれない筆致でドギマギしてしまう。愛とか恋とか、夏の夢とか。必要になった時にまた取りに行けば良いような気もしている。

ライトな本が多かったけれど、ちゃんと勉強することは大事かもしれない。学生時代に、教授たちが私の話をつまらなそうに聞いていた理由がいまならわかる。だいたいのことは既に誰かが言っているんだな。

脳みそを動かしていかないと、老いて腐ってしまう。今年はもう少し算数や論理に寄った本を学習していきたい。もちろん、事業で結果を出すのが一番やりたいこと。

今年もよろしくおねがいします。

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