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暗号今昔

探偵小説が好きだった少年の頃の気持ちになるからか、はたまた心の中学2年生が大暴れしているのか、私事ですが "暗号" という言葉を聞くと、どうしてもワクワクしてしまうのです。

これは、そんな暗号についての雑談。


満ち欠ける南無阿弥陀仏

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南無阿弥陀仏。心からの敬意を以って、仏様の名をお呼びするための言葉ですから、何かを包み隠す行為とは無縁なものですが、この "南無阿弥陀仏" の 6 文字を使った暗号が登場するお話あります。

それは江戸川乱歩の "二銭銅貨" という、暇と貧乏をこじらせた二人の男のお話。そこに登場する件の暗号、例えばこんな感じのものです。

南阿、南阿弥陀仏、南、南無阿陀仏、蛇、南阿陀、蛇、南阿弥仏、南阿弥陀

見るからに怪しい!幼少の頃、すごく惹かれた覚えがあります。

さて見ての通り、何文字かが欠けた "南無阿弥陀仏" が句読点を挟んで並んでいますね。これが何かというと、それぞれ点字に対応しています。例えばこういう事。

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すると、点字の五十音表がそっくりそのまま、このように置き換えられます。

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これを使って秘密の文章を作ると、めでたく南無阿弥陀仏暗号の完成です。

ちなみに、江戸川乱歩 "二銭銅貨" は青空文庫で読めますのでご興味あれば。

そういえば、調べ直しているときに知ったのですが、南無阿弥陀仏の "南無" の部分、ヒンディー語の "ナマス" に漢字を当てたものだそうです。あれ?じゃあ "ナマステ" って......と思ったら本当に同じ言葉だそうで、ただの挨拶の言葉と思っていた "ナマステ" は本当はもっと複雑な意味を持っていたみたいです。

次はそんな "ナマステ" と同じく、カタカナにすれば 4 文字の名前を持つ暗号文を作る機械のお話。

謎という名の機械

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行進曲 "威風堂々" で有名な E.エルガーの作曲に "エニグマ" という曲があります。これはギリシャ語で "謎" を指す言葉。そして、1918 年にドイツの発明家 "アルトゥール・シェルビウス" によって生み出された暗号機にもこの名前が当てられました。

"暗号機エニグマ"  創作の世界でも度々引用されるのを目にしますね。実物はタイプライターが組み込まれた、こんな姿をしています。

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いいですね。ロマン感じちゃいます。

さてこのエニグマ、タイプライターを 1 つ打ち込むと上部にあるアルファベットのランプのうち、打ち込んだものとは別の文字が 1 つ光ります。この光ったランプをメモし、文字を一つ一つ別の文字に置き換え、暗号文にしてしまうという仕組み。

例えば↓の文章をエニグマに通すと......

STARE AT THE DANCING LIGHT AND WILL NOT FORGET

↓のように変換されます。まったく面影がない。

JZZUR WH RTC FSTOZEJ ADDWX QQV DFOG YGO JKLHSW

面白いのは、同じ文字でも何文字目にあるかによって変換される文字が異なるということ。この複雑な変換はエニグマ内部の機構によって実現されており、もちろん同じ設定を行ったエニグマ同士であれば、ちゃんと元の文に戻すことができます。

そんなエニグマの内部機構を、紙で再現した "ペーパーエニグマ" というものがあります。

......なんか凄い!ということはわかりますね!うん。


現代の暗号

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さて、暗号というと何やら古めかしいイメージがありますが、現代でもバッチリ現役だったりします。例えば、ウェブブラウザのこの部分 (↓は GoogleChrome での例 )

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URL 欄の左隣、何やら鍵のマークが付いていますが、これは自分のスマホやパソコンから、アクセス先のサイトやシステムが動いているサーバへの通信の内容が暗号化されている、ということを示しています。

どうしてそんなことをしているかといえば、例えば note へログインする時にパスワードを入力しますが、あれは note のサイトが動いている場所に届くまで、インターネットを通して色んな所を巡っていきます。その途中で通信を傍受されてしまうと、パスワードがどこかの誰かにバレてしまうわけですね。

それを防ぐために、ブラウザ上で入力した文字は暗号文に変換され、それが サイトに到達した時に元に戻される、という仕組みで通信が行われます。その仕組を実現するためにブラウザとサイトの間ではこのようなやり取りが行われているそうです。

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現代では Twitter をはじめとして、インターネット上に駄文を放流するというのが、娯楽の一形態になっている気がしますが、裏ではこんなクレバーな事してくれているのですね。ありがたや。


おわりに

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唐突ですが "酔っ払いが何言ってるのかわからない" というのはよくある話ですが、酔っ払い同士だと何故だか会話が成立していたりしますよね。

さらに自分も酔っ払ってくると、その会話に混ざれてしまうという......そう考えると酒というものは一種の暗号機であり、酔っ払い語は実は暗号文なのではないでしょうか?

はい、これが駄文!




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