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今夜パパに内緒で#7 仕事がないので何もない虚空を見つめる(思い出野郎Aチーム/それはかつてあって)

お世話になっております。日比野めんちと申します。

最近は暑くてたまりませんね。

しかし汗をかいて会社に行っても、仕事がないのですから、さらに困ってしまいます。


仕事で忙しいより、仕事がないのは良いことです。個人事業主でなく、所詮はしがない労働者ですからそう思います。

しかし同時に、私の労働時間や拘束時間は、仕事の量によって増えることはあっても、減ることはないわけで、それを考えると虚しくもなります。

ただ座り心地の良い椅子に座り、虚空を見つめているとき、私は何を思えばいいのか。

帰りにどこのラーメンを食べようかな。

そんなことを考えるので精一杯です。ラーメンだけに。は?



思い出野郎Aチーム/それはかつてあって


第7回で紹介するのは、思い出野郎Aチーム「それはかつてあって」です。

思い出野郎Aチームは8人組のソウルバンドです。

正直、著名な曲等はありませんが、「楽しく暮らそう」とか「ダンスに間に合う」とかが好きで、私は昔からたびたび聴いています。

とにかくおしゃれで、身体が動き出すような音楽が多いバンドです。


今回紹介する楽曲「それはかつてあって」は、彼らの3rdアルバム『Share the Light』に収録されている。

この曲は、しかし歌詞を見れば、単に楽しく乗っていいだけのものではないメッセージを含んでいる。

九月の路上で君は踊れない ジェノサイド記憶ははるか遠く
また再度起きる前にメモっとく ラッカー塗料無修正の歴史

思い出野郎Aチーム「それはかつてあって」


この歌詞で描かれているのはもちろん、1923年9月1日に発生した関東大震災の被災後の混乱の中で起きた虐殺事件のことです。

震災発生後、被災地では、朝鮮人(当時、朝鮮半島は日本の植民地でした)が井戸に毒を入れた、朝鮮人が放火をしている、というデマが流されました。

そして「自警団」が結成され、彼らは朝鮮人を殺害しました。


墨田区の都立横綱町公園には、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑があります。

1973年の建立以来、公園内の東京都慰霊堂では毎年9月1日に追悼の式典が催されてきました。

各歴代の東京都知事はこの式典に追悼文を送付してきましたが、2016年7月に都知事に就任した小池百合子は、在任2年目となる2017年の式典以降、追悼文の送付を行なっていません。


選挙の際に、公約を見て、自らの意思を代表してくれるとして代議士などを選ぶというのは、真っ当なやり方でしょう。

しかし、政治の過程は、都度文書として残されていくものです。

その文書化というプロセスの総体として政治があるわけです。

小池都知事は「情報公開は『東京大改革の一丁目一番地』という認識のもとで行ってきた。都政の透明化を推し進めている」と述べました。

しかし、情報開示を求めると、黒塗りにされた文書ばかりが出てきます。

(尤もこれは、東京都のみでない行政の抱える宿痾なのですが)


文書化のプロセス、積み重ね、すなわち歴史を通して政治は行われます。

ならば、それを黒く塗り潰し、なお「透明化を推し進めている」と嘯く都知事——それは歴史の負の面から目を背け追悼文を送らないことと、連続性を感じずにはいられません。

また、立憲民主党の都議会議員が、都知事に答弁を求めた質問に対し都幹部が代わりに回答したことについて、都知事の「答弁拒否」にあたるとした発言を、議事録から削除するよう動議が提出され、可決されました。

動議に法的拘束力はなく、発言した本人が取り下げを行わない場合、議事録からの削除もなされません。

しかしこれもまた、歴史の中から、あったことをなかったことにしようとする試みであると捉えられるでしょう。


それはかつてあって 今も続いてる

思い出野郎Aチーム「それはかつてあって」

10:0の加害者にかぎって
話を遮ってなかったことにしたがる
だけど誰もがもう知ってる

思い出野郎Aチーム「それはかつてあって」


この歌は、直球のプロテストソングです。

そしてこれは、今回紹介しておくべきだろうと思い、今回取り扱いました。

この歌詞は、発表された当時よりさらに真に迫って聞こえてしまいます。

都知事選に合わせ、かつ投開票日より前にということで、イレギュラーながら土曜日の更新となりました。


Spotifyにて、このシリーズ「今夜パパに内緒で」にて紹介した曲を入れたプレイリストを公開しております。

では、来週(?)もまたお会いしましょう。

See you soon…


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