今夜パパに内緒で#9 いや儂はよい(MONO NO AWARE/異邦人)
お世話になっております。日比野めんちと申します。
私は、入社してすぐに後輩2人を持たされ、仕事に奮闘しています。
その後輩から、仕事のことなど、さまざまな相談を受ける日々です。
このあいだ、その後輩の一人にこんな相談をされました。
「ここに異動してくる前は、すぐそばにいろいろ相談できる先輩がいたんですけど、今はそうじゃなくて……」
いや、儂はよい。
MONO NO AWARE/異邦人
第9回で紹介するのは、MONO NO AWARE「異邦人」です。
MONO NO AWAREは、2013年に結成されたバンドです。
八丈島出身の玉置周啓、加藤成順ほか、竹田綾子、柳澤豊の4人から成ります。
玉置周啓は、ヒップホップユニットDos MonosのラッパーTaiTanとのポッドキャスト番組「奇奇怪怪明解事典」のパーソナリティとしても有名で、あるいはそちらの玉置のみを知っていたという方もいるかもしれません。
彼らはこれまでに5枚のアルバムをリリースしており、今年リリースされた「ザ・ビュッフェ」は傑作で、同1曲目である「同釜」は、もう今年のベストに入れるだろうな、思うほど素晴らしい曲なのですが、
今回はあえて前作「行列のできる方舟」より「異邦人」を紹介します。
「異邦人」に限らず、MONO NO AWAREの楽曲の特徴として、言葉へのこだわりが挙げられます。
それは詞が良いことにとどまらず、ちょっとした遊び心として表出されます。
このような、童話的な遊び心もあれば、
ダジャレすなわち言葉遊びもあります。
「かむかむしかもにどかも!」では、そのようなダジャレをこれでもかと詰め込み、早口言葉として曲を成立させようとしています。
私がこのバンドを好きな理由としてこの歌詞の遊び心もあるのですが、何より好ましく思うのが、その遊び心が最終的に「優しい」ところやポジティブなところに着地するからなのです。
「異邦人」を見ていきましょう。
ここでは、童話的な話のなかから次第に話は、生物の進化の話へと繋がっていきます。
「私は異邦人」
このフレーズ自体は、どちらかというとネガティブな意味として捉えられます。
これは、「太陽が眩しかったから」と、カミュがかの小説に書き残した頃からの宿命のようなものです。
しかしその異邦人性が、本楽曲のなかでは脈々と受け継がれてきた人類史の中に置かれます。
みんな異邦人でありながら、言葉の中に住まうことで、人類史に位置付けられる。
これは、人生という舞台に参加させられる人間の生き方そのものです。
そうして、孤独なる個を、救済せんとする、その優しさに私は感じます。
#5で紹介した奇妙礼太郎「エロい関係」が、二人の中に積極的に閉じていく歌詞だとしたら、これは、世界に対し開かれていく歌詞です。
(そっちでも言語ゲームの話をしている。俺のやり方は類似している……)
なおこの「異邦」性は、イントロなどに採用されている、「島唄」のオマージュに見ることもできるでしょう。
「島唄」は、沖縄のことを歌った歌で、ほぼ全編に渡り沖縄音階が使われていますが、Bメロのみ日本的なヨナ抜き音階が使われていることや、この部分が太平洋戦時下のガマでの集団自決の暗示になっていることは有名な話です。
この観点と、彼らが八丈島という離島出身であることに紐づけて語ることもできるでしょうが、それには紙幅が足りません。
Spotifyにて、このシリーズ「今夜パパに内緒で」にて紹介した曲を入れたプレイリストを公開しております。
では、次回もまたお会いしましょう。
See you soon…
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