今夜パパに内緒で#2 坂の多い街(Helsinki Lambda Club/ミツビシ・マキアート)
お世話になっております。日比野めんちと申します。
働いている街のことが、あまり好きになれません。
坂が多くて、人が多くて、往来が不便でならないから。
でも好きな店ができると、そんな街でも好きになれるかな、と思いました。
独り身で家具を買うでもなく、本を買うのも、どこの店も似たようなものだなとか思っていると、
必然、好きな店は飲食店ってことになるわけで、
そうなると、食べるのが趣味ってことになって、太ってくるわけで、
医者から「痩せましょう」と言われている身には、なんともつらい。
だいたいあれだけ坂があるなら、もっと簡単に痩せれればいいのに。
なんてことを思いながら、日々会社に向かっています。
Helsinki Lambda Club/ミツビシ・マキアート
第二回で紹介するのは、Helsinki Lambda Clubの「ミツビシ・マキアート」です。
Helsinki Lambda Clubは2013年結成の3人組ロックバンドで、2022年にFUJI ROCK FESTIVAL '22の前夜祭および——Say Sue Meの出演キャンセルに伴い——本編に参加、2024年にはSXSWにも参加しています。
「ミツビシ・マキアート」は、2020年にリリースされた彼らの2ndフルアルバム「Eleven plus two / Twelve plus one」の1曲目に収録されています。
歌詞冒頭に出てくるVampire Weekendとは、USのインディーロックバンド。
「君」は、「俺」をそのライブに誘ってくれます。
「俺」は、Vampire Weekendを「そんなに知」りません。
でも「俺」は「yesのスタンプ」を送るとき「浮き足立って」います。
なぜなら、直截的に言えば、「俺」は「君」が好きだからです。
「俺」は、「君」が「4枚目のHarmony Hall」が「好き」なことは知っているけれど、「難しくて」よく分かんないから「A-punk」ばっか——分からないなりに頑張って——聴いて「その日を待つ」。
この短いセンテンスで、「俺」の恋というものが知れます。
「俺」は「君」に恋している。
しかし、「俺」はきっと文化系で、「君」にオラオラといけません。
だからできることは、「A-punk」ばっか聴くことなのです。
Vampire Weekendのライブの開演が近づき「君」は「駆けて行」木、「俺」はその「背中」を見ます。
「君」はバンドに夢中で、「俺」はそれに振り回されています。
でも、「俺」に確かなことは——。
「俺」と「君」では「真逆のタイプ」であると「俺」は認めます。
それはそうでしょう。
「俺」は、Vampire Weekendを「そんなに知」りません。
「君」がいなければライブには来なかったでしょうし、それに自分の好きなバンドのライブでも「駆けて行く」ことなどできないでしょう。
でも「俺」は「君にそんな顔させたい」のです。
そして、その気持ちだけが、ここでは《純な気持ち》として存在します。
もちろん「下心」もあります。
しかし、「横顔」を見つめるだけで、「俺」はとても幸せな気持ちになるのです。
この楽曲では、そんな文化系で、奥手な「俺」——しかし「僕」ではない!——の「君」への視線がポップに描かれていて、聴く人の胸をキュンとさせます。
この曲を聴いたあと、好きなあの人とライブハウスに行きたくなることは間違いありません。
下北沢のSHELTERとか、新代田FEVERとかに。
最後に、この曲をアクトした2022年のフジロックにて、Helsinki Lambda Clubは、Vampire Weekendと同じフェスに出ることが叶ったということを、この楽曲のエピソードとして言い添えておきます。
そんなことを思って聴くと、なんだか胸がいっぱいになって、泣けそうになってきませんか?
Spotifyにて、このシリーズ「今夜パパに内緒で」にて紹介した曲を入れたプレイリストを公開しております。
では、来週もまたお会いしましょう。
See you soon…
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