エッセイ「恋愛の進捗はちょっとずつ」⑶~彼の長所~
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彼には人を惹きつける魅力がある。
彼の人相は、穏やかで明るい。
彼の人望は厚い。人気者なのである。
彼と私が出会ったバイト先にはいろんな年代の人たちがいるが、皆彼を気に入っていてその日彼が出勤すると知ると喜ぶ。
友人も多く、よくお誘いを受けて出かけている。
人類皆彼のことを好きなのでは、と錯覚する日も少なくはない。
それは、私が彼を好きすぎて色眼鏡で見ているからという人もいるだろうが、私はそうは思わない。
知り合いだけではなく、よく居酒屋で隣になったおじさんに気に入られたり、駅前のキャッチのお兄さんをニコニコにさせたり、とにかくコミュニケーションに長けているというか、人間が喜ぶ言動を知っている。
ここまでの話で彼はすごく優しい人だと思う人もいるだろう。しかし、彼の取り柄は”優しさ”かという、とそうではない。
彼は優しいから人に好かれるというより、自分あるいは他人の感情に疎い。疎いというか、他人にそこまで興味が無いのだと思う。だから他人の感情や心理に深く干渉しすぎず、また他人にも自分に干渉させない。感情的ではなく、論理的に人と接することができるから、ちょうどよい距離感で他人と付き合えるのかと思う。(それをそばで見ていて、とても賢い人だなと思っている)
しかし他人に興味が無いように見えて、相手の言動や好みを覚えているし、好きな曲や動画を聞いて・見てと言われれば、ちゃんと次会った時には聞いたり見たりしている。
他人に興味がないくせに、他人を喜ばせることは好きなのだ。それは彼曰く、自分がされて嬉しいことは他人にもしたいと思うのだそうだ。
ちょうどよい距離感で他人と関わりながら、他人を喜ばせることに長けている。それが彼の代表的な長所と言えると思う。
私は、最初は彼は自分と相性がいいから一緒にいて楽しいのかと錯覚していたが、実際はまんまと彼の魅力に引きずり込まれただけであったというのは、最近になって気づいた話である。
しかし、そんな彼だからこそ、”恋人”という深い関係になろうとすると少しだけ、大変だったりもする。
もともと他人に興味が無いので、もちろん彼女に対しての興味も薄い。本人はそんなことはないというが、彼からしたらほかの人よりは興味があるだけで、こっちからしたら私に興味ないのではないかと思わせられる。
そもそもの話、私と彼では性格がほとんど真逆に近い。
私は自分より他人に興味を持つタイプであり、なるべく自分と関わりのある人のことを知りたいと思うのに対し、彼はそうではない。
さらに恋愛に対する価値観も正反対で、愛情表現の違いや恋人に対しての関わり方など様々な相違点があり、理解しあえない部分が多数ある。
私たちはお互いを理解しあうのにとても時間がかかるのだと、付き合って数か月で思い知らされたのだった。
つづく