エッセイ「恋愛の進捗はちょっとずつ」⑴~出会い~
約1年前、私はまさにノリと勢いで恋人ができた。
かといって相手が誰でもよかったわけではない。
しかし付き合った当時、彼に特別恋心を抱いていたわけではなかった。
彼と出会ったのは付き合い始める約2年前、私が勤めていたバイト先に大学1年生の秋を迎えた彼が仲間入りした時だった。(私は専門学校2年目)
最初はお互い人見知りをしてなかなか喋らなかったが、徐々に趣味の話などで盛り上がれるようになり、いつの間にか仲良しの先輩後輩の関係になっていた。
そして彼が大学2年生の冬、私が専門学校3年目で就職のためにバイトを卒業した。その直前の秋ごろから私たちは2人で食事に行くようになった。居酒屋へ2回ほど、いずれも誘ったのは私だった。
彼が好きでアピールしたくて誘ったわけではなかった。ただ、ただの先輩後輩でいるのがもどかしいくらい、彼と過ごす時間がとてつもなく楽しかった。友人になりたかった。親友に近いような。そんな好意は十分に抱いていた。
私は彼に2人で話しているときは敬語や敬称を取って接してほしいと懇願したら、彼はすんなり受け入れてくれた。それから、私がバイトを卒業したタイミングもあって、私たちは先輩後輩から友達に限りなく近い関係になった。
それから月に1回程度、彼を誘っては遊びに行った。日々ふとした瞬間、彼と会って話したくなる。そんな異性と会うのは久しぶりだった。
冬、春を友達として過ごし、その夏、私の趣味の野球観戦を彼がしたいと言ったので、初めて一緒に行くことにした。
その日の帰り、お酒に酔っぱらった私たちは手をつないだ。
彼はしばらくしてこう言う、「付き合ってもいない男と手をつないだら勘違いしちゃうよ」と。私はほぼ勢いで、「じゃあ付き合おうよ」と茶化すように言うと、「男にそんな冗談はだめだ」とあしらう。私は「本気だよ」と明るく彼に言う。私たちはそんな問答を繰り返しているうちにだんだんと本気になっていった。
私たちは話しながら考えた。付き合って、私に、彼に、メリットはあるのだろうか。答えはYesだった。
お互い同じことを考えているとわかったとき、彼は私に「付き合ってください」と言い、私は彼に「こちらこそ、お願いします」と答えたのだった。
つづく
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