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ゲイデビューとかいうやつ
18歳の頃、4年ほど付き合っていた女の子と別れた。
その頃はバイトに明け暮れていた。家の近くの飲食店。時給は低いくせに勤務時間が長いから給料は良かった。長く働いていたから当たり前。
その年の10月、地元の本屋に行ってみた。数年ぶりに入る店。小学生の頃はマンガをよく買いに来た店だったんだけれど、入ってびっくりした。
エロ本やエロビだらけの店になっていた。めっちゃ気まずいし。
若かったし、そういうのにも興味はあったから店の中を適当に物色。その時に目に入ったのがゲイ雑誌だった。
Badi。確か今は休刊中だよね。
うわー。めっちゃ気になるんやけど......でも買うのは恥ずかしい。そう思いつつ買った。会計をしてくれた店員さんは20代半ばくらいの男の人。こんな雑誌を買った俺をどう思ったのかな。
俺は子供の頃から近所の年上のお兄さんとか、親父の知り合いの若いお兄さんが大好きだった。
ただの憧れなのかなって思ったりもしたけれどそうでは無かった。
小学生の頃から大人の男の裸にドキドキしていた。吉野川へ遊びに行った日は水上バイクの裸のお兄さんに興奮して、熱が出るんじゃないかってくらいドキドキしていたし。
だけど女の子も好きになったし、告白したのも付き合ったのも女の子で。当時の俺はゲイという言葉の意味を知っていたけれど、自分がゲイなのかそうでは無いのか分かっていなかった。
そんなこんなんで18歳で彼女と別れた俺はゲイ雑誌を手にすることになる。
その日から何ヶ月間はバディとか薔薇族とかゲイ雑誌を買ってみたり、ビデオを買ってみたり。どんなビデオだったかは全然覚えていないけど、若い俺には男性のグラビアは刺激が強過ぎた。
2000年になってしばらく経ち、新しいバイトを始めた。そしてバディに載っていたゲイサイトに携帯電話で繋いでみた。今もあるゲイサイト。
当時のiモードケータイでパソコンサイトに繋げるのは結構厳しかった。無理やり表示させているから重いし時間が掛かる。
出会い掲示板を見て、彼氏を募集していた25歳の人が気になった。文章から誠実そうなのが伝わってきた。メールを送るとすぐに返事が来て電話で話すことになった。
初めて話すゲイの人。掲示板に載せていた文章とは違い、ぶっきらぼうな感じだった。
「とりあえず会ってみな分からんな」
そう言われ、休みの日に会いに行った。
待ち合わせ場所は大阪某所の駅。電車を乗り継いで行く。
はじめまして......初めて見る生身のゲイの人は普通のお兄さんだった。
カフェでコーヒーを飲んでドライブへ。何時間も走っていたと思う。助手席にいた俺は緊張で上手く話せていなかったと思う。
暗くなるまでドライブをして大阪南港へ。車を停め話をする。
何を話しただろう?全然覚えていないけれど、初めて経験する男のキスは緑茶の味がした。緑茶ばかり飲んでいる人だったから。
暗い車内の中でそんな雰囲気になった。本格的に「やった」とかではないけれど、俺たちは軽くそういうことをした。
女の子にされたことはあるけれど男の人にされるのは初めて。自分からするのはもちろん初めて。一心不乱だった。凄く興奮したのは覚えている。
自宅まで送ってもらいバイバイ。頭がぼーっとしていた。家に入ってすぐに自分の部屋にこもったと思う。
翌日、その男の人と電話をした。
「そういうことしたんだから、俺たち付き合うんですよね」
いま思うとめっちゃ笑える発言。18歳の俺は真面目だったんだと思う。「そういうこと」は付き合った人以外とはしてはならないみたいな。
向こうは困惑していたと思う。だって1回しか会っていないし、お互いのことはまだよく知らない。
だけど付き合うことになった。これが初めての彼氏になる人。
毎週のようにデートをしたり、うちに泊まりに来てくれたり。楽しい日々を過ごした。
そして3ヶ月程で別れた。
ゲイとして生き始めた頃の思い出。