英語:何故beefはcow's meatではないのか?
日本語では「牛」の肉は「牛肉」である。
何を当たり前のことをとおっしゃられるかもしれないが、これが当たり前ではない言語が存在する。

英語では牛をcowと言うが、牛肉はbeefである。
形が全く違うので、それぞれ覚えるしかないから最初は混乱する。
他にもpigの肉はporkで、家畜の肉は殆ど名前が違う。
風邪で頭が働かない時にpig's meatと言ったことがあったが、通じなかった。
porkでなければダメなのだ。
しかし、昔はcow's meatという構造が使えたのである。
古英語ではflesh(新鮮な)の語源となるflesc(肉)という単語を後に加えることで、cow(牛) + flesc(肉) =cuflesc(牛肉)という風に言っていた。

事情が変わったのはおよそ1000年前。フランス語話者が英語圏に攻め込んできた時に始まる。(ノルマン・コンクエスト)
北フランスのノルマンディーから英国(イングランド)に渡った彼らは、それまでの古英語を話していた宮廷人を一掃し、以来300年間宮廷ではフランス語が使われるようになった。
結果として、「英国王ですら英語が喋れない」という奇妙な事態が、14世紀の英仏百年戦争を迎えるまでで、長く続いたのである。
この間に英語の三割の語彙がフランス化し、元々あったラテン語のものも含めて「英語の六割の語彙がフランスと共通化する」という今日の事態を招いた。
特に食・文化に関するものはフランスから入る。
フランス語が公用語となった英国宮廷の食卓に並ぶ食材は、当然フランス語の名前で呼ばれる。
しかしこの食材を育てる農民は依然として英語を話したので、家畜の名前は変わらなかった。
結果として、食材と家畜で名前の分離が起きた。

結論:フランス語が悪い。