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【浜松】三遠ネオフェニックス24-25ロスター紹介【東三河】



はじめに

23-24シーズン、三遠ネオフェニックスはBリーグ始まって以来の悲願となる、中地区優勝を果たした。

CSでは、後にB1を制覇する広島ドラゴンフライズと熱戦の末連敗。更なる大願の成就とは行かなかったものの、大野篤史HC体制で驚異的なジャンプアップを遂げている。

明くる今季、24-25シーズンは三遠ネオフェニックスにとってどのような年になるだろうか?

この記事では、完成したロスターと加入した新戦力に着目していきたい。三遠ブースターも、三遠と対戦するクラブのブースターも、ぜひ、観戦のお供にしてほしい。

三遠ネオフェニックス24ー25ロスター紹介

まず、三遠ネオフェニックスの24ー25開幕ロスターは以下のように決定した。

PG:大浦颯太、湧川颯斗、佐々木隆成、山内盛久、柏木真介

SG:兪龍海、津屋一球、(デイビッド・ヌワバ)、(佐々木隆成)、(柏木真介)

SF:デイビッド・ヌワバ吉井裕鷹、(愈龍海)

PF:ヤンテ・メイテン、デイビッド・ダジンスキー

C:太田敦也、ウィリアムス・ニカ、(デイビッド・ダジンスキー)
※()内は複数ポジション登録を表す
※太字は新加入選手を表す

中地区優勝を果たした23ー24シーズンから一転、サーディ・ラベナ(→海外クラブ)、コティ・クラーク(→島根)、金丸晃輔(→佐賀)、細川一輝(→群馬)と主力クラスが相次いで移籍。昨シーズンまでの赤字と併せて緊縮路線も噂されたが、最終的には13人ロスターで開幕することとなった。

主力選手の移籍で最も変わるのはオフェンス面だろう。特にコティ・クラーク、サーディ・ラベナの2人は出場時間が長く、スタッツも優秀であったため、穴埋めは難しい。

ディフェンス面は改善が期待される。元所属でディフェンス能力を評価されていた吉井や津屋、NBA時代に高いディフェンス能力を誇っていたヌワバの加入は、クラブとしてチームのディフェンス面の改善を目指していることがうかがえる。

23ー24シーズンの三遠はディフェンスレーティングはリーグ7位と決して悪くはなかったものの、やはりオフェンスの印象が強いチームだ。爆発力のあるオフェンスを見せる反面、サイズを活かしたオフェンスに対応しきれない場面も散見された。

クラークやラベナらの移籍で生じたオフェンスのマイナスを、新戦力が生み出すディフェンスのプラスで埋めることでより「B1で勝てるチーム」を目指しているのかもしれない。

ベンチワークも改善が見込まれる。23ー24シーズンの三遠はサイズアップが望まれる展開でも愈を出すことしかできないという状況が多かった。その結果、川崎や三河、琉球など強力なインサイドを武器に確実なオフェンスを遂行できるチームに弱く、外国籍の離脱時にも苦しんでいる。

その点24ー25シーズンは津屋、吉井、湧川といったサイズ、フィジカルに定評のある選手が加入し、ベンチからディフェンスを締める起用も行いやすくなった。この加入によってベンチワークも容易となるほか、既存選手の負担も軽減し、より高いパフォーマンスを披露しやすくなったのではないだろうか。

「卒・太田」の機運も見える編成

また24ー25シーズンの編成からは太田敦也への依存の脱却、すなわち「卒・太田」の機運もうかがえる

三遠は長年、チームの大黒柱である太田をインサイドの計算に入れて編成していた。近年では外国籍ガードのネナド・ミリェノヴィッチやカイル・コリンズワースらをアジア特別枠のサーディ・ラベナと併せて、外国籍でバックコート2枚を構成している。

しかしBリーグがインサイドの出来によって左右される環境であることや年齢を重ね、太田の純粋なパフォーマンスが陰りを見せていることなども相まって、昨シーズン以前の三遠は長い低迷のときを過ごす結果となってしまった。

昨シーズンは外国籍をインサイド3枚で固め、太田はガベージタイムの出場や外国籍離脱時の穴埋めに留まったものの、今シーズンはついにインサイドの帰化選手であるニカを獲得。ヌワバも登録こそSF/SGであるものの、相手によってはインサイドの選手にもつけられる守備力を有しており、昨シーズン以上に太田の出場時間は減少することが予想される。

太田敦也はフェニックス一筋18年目のフランチャイズプレイヤーだ。加えて豊川市出身の正真正銘の地元選手。その偉大さやこれまでの貢献度合いは計り知れないが、かといっていつまでも40代の日本人センターを戦力として数えるのも現実的ではない。

チームとして結果が出ているうちに穏当な形で「卒・太田」を進め、「ミスターフェニックス」大口正洋や「おかげさま」コンビの鹿毛誠一郎、岡田慎吾のように長くフェニックスに携わるポストに移行してもらうことも視野に入れる必要がある。

三遠はこれまでチームとしてハードランディングを繰り返し、幾多の選手を流失させてきた。太田敦也は決して手放してはいけない選手であり、今シーズンも含めて、今後の対応を注視していきたい。

24ー25シーズン新戦力紹介

それではここからは24ー25シーズンに三遠ネオフェニックスに加わった新戦力の紹介をしていく。

#2 デイビッド・ヌワバ

ロサンゼルス・レイカーズやシカゴ・ブルズなどで計6年間、237試合に出場したバリバリのNBAプレイヤーが三遠ネオフェニックスに入団した。それがデイビッド・ヌワバである。

ヌワバの最大の武器はなんといってもディフェンスだ。196cm/99kgと外国籍としては決して大柄ではないSF/SG登録の選手だが、NBA時代にはレブロン・ジェームズなどのスター選手にも激しく食らいつく守備を見せていた。

ハッスルプレーも持ち味のひとつだ。リバウンド争いに加え、ルーズボールへのダイブやチームの先頭を切って走る姿勢も評価できる。このような姿勢は大野篤史HCや、ひいてはフェニックスに向いた選手と言える。

オフェンス面では恵まれた身体能力を活かしてペイントエリアへ切り込むスラッシャー型の選手と言える。前所属のロンドン・ライオンズでは65%もの2FG%を記録。NBAでも平均して49%を記録しており、ペイントエリアでの得点能力には期待できそうだ。

一方、スリーポイントシュートは評価が難しい。成功率自体はNBA時代で平均32%、前所属では44.4%と高いが、特に前所属ではアテンプトが9本と参考にできる数字ではない。フェニックスはスリーポイントシュートを多用するスタイルであり、ヌワバがどのような形でアジャストするのかは注目だ。

またヌワバは長期離脱をたびたび経験しているのも懸念点だ。2019年12月にはアキレス腱の断裂、2021年2月には手首の故障で長期離脱を経験している。プレースタイル的にも接触をいとわず、ハッスルプレーも欠かさないために故障リスクは大きく、また自身初のアジアということで、まずは怪我をせずにBリーグに適応してほしい。

#10 吉井裕鷹

パリ五輪での活躍も記憶に新しいオールラウンドプレイヤーが24ー25シーズンのフェニックスの心強い新戦力として加わった。

最大の武器はディフェンスだ。本職の3番に加え、2番、4番を幅広くカバーし、自分より体格の大きな相手にもマッチアップできる守備は非常に心強い。23ー24シーズンのアルバルク東京では強力な外国籍のバックアップとして平均10分50秒の出場に留まるも、そのディフェンスで存在感を示している。

課題はオフェンス面。チーム戦術もあるが平均1.5得点は寂しい数字だ。そもそものアテンプトも少なく、消極的な姿勢がうかがえる。

日本代表ではトム・ホーバスHCはじめスタッフの信任も厚く、スタメンを任される選手である。プレー面はもちろん戦術理解の早さやメンタリティも評価が高い。三遠ではSF登録が吉井とヌワバしかおらず、SFの主力選手として起用されると考えられるため、攻守で積極的な姿勢を見せてチームを勝利へ導いてほしい。

#12 ウィリアムス・ニカ

三遠ネオフェニックス史上初の帰化選手として入団したベテランビッグマン、それがウィリアムス・ニカだ。

セントビンセント・グレナディーン出身のビッグマンとして2011ー12シーズンに当時bjリーグ所属の高松ファイブアローズへ入団。その後は群馬や愛媛、秋田など日本国内外を転々とし、2019年に日本国籍を取得。帰化後は日本代表としてもプレーするなど、経験豊富な選手である。

プレースタイルとしては203cm/111kgというサイズ、屈強なフィジカルを活かした古典的なビッグマンで、例年60%近いFG%を記録。FG%でリーグ1位に輝いたこともあるなど、ゴール下で絶大な存在感を放つ。スリーポイントはアテンプトさえないものの、得点力のみならず、ポストアップやスクリーンなどで味方の得点をアシストするプレーが期待される。

守備でもサイズを活かしたリバウンド奪取やブロックショットなどで、ゴール下の番人としてプレーできる。帰化枠であることから外国籍のオンザコートの制約を受けず、メイテンやヌワバ、ダジンスキーのうち2人と同時にコートインできるのも、当然大きな強みである。ヌワバを投入しつつ全体のサイズや強度を落とさないような布陣を組めるメリットは大きい。

また前所属の島根においてニカはペリン・ビュフォードと強力なデュオを組み、Bリーグを席巻した。ビュフォードは得点王やMVPなどを獲得した、すさまじいオフェンス能力を持つ選手だが、もちろん個人の能力も素晴らしいものの、ここまでの活躍には相方であるニカの貢献も大きかっただろう。

三遠でもポジションやタイプでビュフォードと重なるところがあるヌワバや、ドライブも器用にこなすメイテンらとデュオを組み、支える活躍をぜひ見たいところである。

ただし年々稼働率がやや下降気味なのはやや心配だ。22-23シーズンには全治未定の左膝故障を発症し、シーズン終盤に長期離脱を経験している。23ー24シーズンは腰椎椎間板ヘルニアでILに入り、出場試合数は30試合に留まった。貴重な帰化枠の選手であり、替えも難しいために健康体でシーズンを走りきってほしい。

#14 湧川颯斗

23ー24シーズンオフの大物の移籍といえば、NBAから千葉ジェッツに入団した渡邊雄太に満場一致で決まるだろう。

しかしながら、日本バスケの将来も含めたときに、より大きな移籍となる可能性を秘めているのが湧川颯斗である。

弱冠二十歳。高校バスケの名門である福岡大学附属大濠高等学校から特別指定選手で滋賀レイクスターズ(現滋賀レイクス)に加入し、同時に翌23ー24シーズンのプロ契約も決定。チームは23ー24シーズンをB2で戦うことになるものの、ルーキーイヤーにもかかわらず平均20分15秒も出場し、チームをB1復帰へと導いている。

公称194cmと日本人では希少な長身PGであり、手足が長く身体能力が抜群。長身の割に動きに重さを感じさせず、躍動感がある。元々SFを務めていたことがあり、得点能力も高い。昨シーズンは34.1%の3FG%を記録しており、サイズを活かすほかにアウトサイドも利用できる。

何より、まだまだ身体も技術も成長途上の選手だ。豊川市役所のツイートによると、現在身長197cmとのことで、昨シーズンのはじめから3cmも成長している。PG歴もまだまだ浅く、フェニックスのそうそうたるPG陣の技術を吸収すれば、末恐ろしい存在となるだろう。現在の日本代表のPGは小柄な選手が多く、フェニックスでの成長次第では日の丸を背負える存在になるかもしれない。

ただ、成長途上であることは懸念点でもある。B1は試合数が多く、水曜ゲームもたびたび挟まるなどB2よりも日程が過酷であり、成長期の身体には負担が大きく、重大な故障が発生するリスクもある。出場試合や出場時間を厳密に管理し、常にコンディションに気を配る必要があるだろう。

#28 津屋一球

フェニックスで鍛えられた苦労人がフェニックスに戻ってきた。

津屋は大学バスケの名門・東海大学でキャプテンを務めながらも特別指定で迎えるクラブがなく、フェニックスのトライアウトを受験して特別指定で入団。その後フェニックスでプロ契約にこぎ着け、サンロッカーズ渋谷に移籍するも、今シーズンフェニックスに移籍を果たした。

難聴という、プロバスケットボール選手としては大きなハンディを背負いながらも事前の準備などでそれを感じさせず、どころか「東海大の魂」とまで称されるほどのリーダーシップをもってチームを引っ張ることができる。フェニックスでもルーキーイヤーから副キャプテンに就任しており、その人格面は間違いない。

プレー面でも日本屈指の3&Dになるポテンシャルを秘めている。190cm/90kgという恵まれたフィジカルを活かしたディフェンスと、コーナーから放つスリーポイントで存在感を放つ。渋谷でも名将ルカ・パヴェチヴィッチHCの要求に応えて少しずつプレータイムを伸ばすなど、確かに成長している。

今シーズンのフェニックスはSGの競争も激しい。ヌワバや兪はもちろん、佐々木や大浦、湧川などがSG起用されることも考えられる。大野HCもプレー面で要求する水準は高く、プレータイムを得るのは容易ではない。

津屋はフェニックスへの移籍を「新しい挑戦」と称した。激しい競争の中でもヘッドダウンせず、成長してくれる選手であることはフェニックスブースターが誰よりも知っている。

#33 柏木真介

フェニックスのラストピース、13人目の選手として偉大なPGがシーホース三河から移籍した。柏木といえばもはや説明不要、黄金期のアイシン(現シーホース三河)を牽引したPGであり、幾度の優勝を経験してきた大ベテランである。

当然、三河としても将来の指導者候補であり、完全移籍ではなく期限付移籍という形でフェニックスに移籍している。

プレー面で期待するものは、正直そこまで大きなものではない。ベンチ入りの最後の枠を争う立ち位置であり、ベンチ入りを果たしたとしても役割は経験を活かしたクロージングなどになるだろう。

ただ、柏木の経験は何にも代えがたい財産だ。フェニックスは若く、ポテンシャルのある選手が多い一方、勝利の経験が少ない。そこに柏木の経験が加わることでここ一番で勝ちきる集団になりうる。まさにラストピースと言えるだろう。練習姿勢なども他の選手の手本となるだろう。

柏木のキャリアも残りわずか。その短い選手生活をフェニックスで燃やし尽くすことを決意した選手をぜひ応援したい。

おわりに

24ー25シーズンのフェニックスは23ー24シーズンから決して少なくない変化を遂げた。主力も流出し、未知数の部分も大きい。

ただ、この未知数の部分をどうプラスに変えていくかが重要だ。アルバルク東京と名古屋ダイヤモンドドルフィンズが加わり、競争の激しくなった中地区で勝ち抜くには更なる進化が求められる。

それだけの進化ができるロスターが完成したと、個人的には感じている。今シーズンのフェニックスにもぜひ注目してみてほしい。

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