異世界ものが増えた投稿小説の世界で
ヒマになるといつも「異世界転生ものが増えたなあ」と呟きながらスマホで「小説家になろう」のページをスクロールしている。
『転生したらスライムだった件』『幼女戦記』『オーバーロード』『転生したら蜘蛛でした』アニメやラノベ界を席巻しているいわゆる「異世界もの」。ファイナルファンタジーもドラクエもポケモンだっていってしまえば異世界だ。ハリーポッターのように、マグルの現実世界とホグワーツのある魔法界が隣接して主人公たちが行き来できる世界観の作品もある。
日本のサブカル界では異世界オンリーの世界観ではなく、主人公が現実世界から向こうの世界へ「転生」もしくは「転移」する話が主流になってきている。冒頭に書いた作品たちがまさにそれだ。『転生したらスライムだった件』なんて通り魔に襲われて死んだ三十路のサラリーマンが異世界でスライムに転生する話だ。よりによって最弱モンスターとされるあのスライムに。勇者や強キャラがバンバン出てくるジャンプやマガジンを愛読していた人たちからしたら総スカンものなのではとタイトルを初めて見た時は思った。今ではコミック化にアニメ化、さらに派生作品まで広く展開する超有名作品になっている。
ここまで多くの異世界ものを投稿されているのには何か理由があるのだろうか。
そう考えた時に一番最初に出てくるのはやっぱりドラクエやポケモン、ファイナルファンタジーの影響力の強さだと思う。キャラクターのステータス、スキル、レベル、魔法や武技の種類、どう見てもそれらの世界観が元ネタになった二次創作なのだ。これらのゲームに熱中し、青春時代をどっぷり費やした人たちが今の異世界ものを作っているのではと思えてならない。
特に投稿サイトは、コミック雑誌とは違ってそれほど多くの規制や抑制がなく好きなジャンルで好きなようにストーリーを自分自身の手で描いていける。今まで自分が楽しみ尽くしたゲーム知識を元ネタにして妄想した世界をストーリーにして投稿できる場所なのだ。だからこそ今、投稿サイトは異世界もので溢れかえっているのだろう。
最近では単なる勇者や賢者、聖女なんかの特別なキャラクターに転生するのではなく、ごく一般的なモブキャラに転生して読者と一緒に主人公キャラ(勇者や聖女)たちを一歩引いて眺めながら自分のストーリーをこなしていく系のものも増えている気がする。特別な存在ではなく、一般人で平凡でモブキャラな自分でもちゃんとそれぞれにストーリー(人生)がありまっせと言わんばかりの熱量を感じてしまう。一般人の日常にもちゃんと物語はある。そう思えるとなんだか世知辛い現実世界でもやっていけそうな気持ちになる。だからこその今の異世界転生ブームなのかもしれない。
嫌な現実から異世界に目をむけ思い馳せて、そしてまた現実世界に戻ってがんばろうって思えるのだ。
ちょっといい感じに言ってみたものの結局のところ子供の頃にたくさん空想したファンタジーな世界を今も狂おしいほどに追いかけて、楽しみつくしたいだけなのだ。
やっぱりガキのままなのだ。