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日本のくらしの手続き事情に唖然とする2冊

日本に行くたび、とにかく人手が足りてなさそう...と思わされることが増えた。
でもそれも結局のところ、地域と時の運によるんだな、と知らされた2冊。

村井理子著『兄の終い』に書かれている多賀城市の公共サービスはすばらしい。
TSUTAYAの図書館がある市だと聞くと権力の食い物にされている自治体をイメージしてしまうのだが、警察署もない規模だというのに各種法執行機関の対応の迅速適切なこと。

遠くから出向かなくてはならない著者のために「すべてととのえておきますんで」で、ほんとにすべてがととのっている。
突然ひとりになった甥っ子くんを保護してくれる担任の先生(業務の煩雑さ、待遇の悪さで教員が全然足りなくなっている中、この先生もきっとサビ残して生徒をケアしてくれたんよね...)
甥っ子くんが母親のもとへ移れる日までの2週間、即座に手配される有能な里親家庭。
すごいよすごいよ。

また、これは業者だが、葬儀や清掃のサービスもちゃんとしてる。ちゃんとしてる、って言葉足らずだが、主亡きあとの汚部屋のかたづけを賃貸契約が切れる日までにしてもらえたと聞くだけでうなってしまう。うちの地元では見積もりに来てもらうだけでもひと月先になりそうな気がするよ。

そんなこんなで驚いてから、岸田奈美著『もうあかんわ日記』を手に取ったら、行政や銀行の「XXがなければダメです」対応に振り回される様子が書かれていて、そうそう、こっちのほうが知ってるやつ、と思った。

それから、御母堂が「あの手術はあの先生しかできない」という腕のいい医師に執刀してもらえたということでひとまずめでたし、なのだが、その先生がほとんど家に帰っていない、とも書かれていて、ああ、これも知ってるやつ、と絶望。そんなサステナブルじゃない状況どうなのよ泣

20年近く前に大学病院にかかわったときから、現場の良心と無理に依存したシステムだなーと思っていたが、変わっていないらしい。
長く女性を苦しめてきた医学部不正入試問題に改めて憤りがつのる。家に帰れないような勤務形態は女性には無理、じゃなくて男性にも無理。誰にでも無理じゃないように、バッファ多めな環境をととのえていかないといけなかったのに手遅れやん。

話がそれたが、そういうわけで、2冊とも日本のくらしの手続きにまつわるあれこれを垣間見ることができて面白かった。


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