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組織とボタン- なぜ押せなかったのか

なぜ押せなかったのか

「なぜ押せなかったのか」から考える恐怖と組織文化

退職時に「ボタンを押せなかった理由」を語った社員。その理由が「押したらお昼の休憩時間が短くなる気がした」というものだったとき、組織の根底にある行動の抑制要因が明らかになる。このエピソードは、個人の行動を左右する「漠然とした恐怖」がどれだけ組織全体に影響を与えるかを示している。

組織論的に、この話は「漠然とした不安」が組織のイノベーションを阻害する仕組みを描いている。ボタンという象徴的な存在が、明確なルールではなく曖昧な恐怖感によって行動を制限している。このような文化では、現実的なリスクよりも感情的なリスク回避が優先され、行動が抑制される。
行動経済学では、これは損失回避の心理の一例といえる。「休憩が減る」という根拠のない不安が、実際の利益や行動の可能性よりも大きく評価されている。この現象は、しばしば人々がリスクを恐れる理由を過大視し、実際にはそのリスクが無視できる程度である場合でも行動を妨げる。

社会心理学の観点からは、「認知バイアス」の影響が顕著だ。休憩時間という個人的な価値観が、ボタンを押すという全体的な意思決定の障壁となっている。このバイアスは、組織全体が共有する価値観を優先するよりも、個々の小さな懸念に重きを置く文化を生む。

考えてほしいのは、「恐怖の正体を見極める」ことの重要性だ。もしこの社員が、休憩時間への不安を具体的に検証していたら、ボタンを押す行動を取れたかもしれない。組織や個人が抱える「漠然とした不安」がどのように行動を制限しているのか、そしてそれをどう克服できるのかを問い直してみてほしい。

組織とボタン - PROLOGUE


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柏木誠|プロジェクトデザイナー
アレとソレを組合せてみたらコノ課題を解決できるソリューションができるよね?と言うパズルをやるような思考回路です。サポートして頂いた費用は、プロジェクト関連の書籍購入やセミナー参加やAIの研究の資金にします。