見出し画像

アイデアを人に話すメリットと有言不実行の戦略的価値

今日はアイデアを他者に共有する行為について、「有言不実行」という戦略に焦点を当てて考察する。

「有言不実行」は一見すると否定的に捉えられがちな概念ですが、実はイノベーション促進において大きなメリットをもたらす可能性があります。ゲーム理論の観点から、この戦略の価値を分析し、日本におけるイノベーション文化の改善策として提案します。


1. 有言と不言、実行と不実行のマトリックス

まず、アイデアの共有と実行に関する4つの戦略を整理します。

マトリックス
  • 有言実行:アイデアを宣言し、自分で実行する。

  • 有言不実行:アイデアを宣言するが、自分では実行しない。

  • 不言実行:アイデアを宣言せず、自分で実行する。

  • 不言不実行:アイデアを宣言せず、実行もしない。

一般的に、「有言実行」が最も望ましいとされ、「不言実行」も美徳とされることがあります。しかし、今回は「有言不実行にこそ戦略的価値がある」ことを示します。

2. 有言不実行のメリット

2-1 周囲を巻き込む力(「有言」の側面)

  • アイデアの共有による協力者の獲得:自分のアイデアを公に宣言することで、他者の関心を引き、協力者や賛同者を得る可能性がある。

  • リーダーシップの発揮:ビジョンを示すことで、人々を導き、組織やプロジェクトを推進することが可能です。

2-2 実行力の拡大(「不実行」の側面)

「不実行」とは、自分で「実行しない」。という事です。つまり誰かに「実行」してもらう。ということです。

  • スケールメリットの獲得:一人で実行できる範囲は限られていますが、多くの人を巻き込むことで、より大きな成果を達成できます。

  • 専門性の活用:他者の知識やスキルを活かすことで、アイデアの実現性と質が向上します。

2-3 イノベーションの促進

自分で「実行しない」。つまり自分から離れ、誰かに委ねる。ということです。つまり口出ししない。

  • 多様な視点の統合:オリジナルのアイデアが進化する可能性が高まります。委ねるので「オリジナルのアイデア」は、起案者から離れ、自由な発想を呼び込みます。

3. ゲーム理論による有言不実行の戦略的価値の考察

3-1 公共財ゲームへの類推

アイデアの共有と協力者の獲得は、「公共財ゲーム」に類似しています。ここでは、アイデアが公共財であり、その提供者(有言者)は他者に恩恵を与えます。

  • プレイヤー:アイデアを起案した「有言者」と、協力者となる潜在的な他者。

  • 戦略:アイデアを共有する(有言)か、共有しない(不言)。実行するか、自分では実行しない。

  • ペイオフ:協力による成果や、アイデアの実現度合い。委ねる姿勢。

3-2 ペイオフマトリックス

以下のように、成果の総量と達成率を考慮したペイオフを示します。

ペイオフマトリックス
  • 有言実行:個人で5の成果、協力者が10の成果を上げ、合計15の成果。

  • 有言不実行:個人は実行しないが、協力者が10の成果を上げ、合計10の成果。

  • 不言実行:個人で5の成果のみ、協力者はなし。

  • 不言不実行:成果はゼロ。

3-3 戦略的インセンティブ

  • 有言不実行の価値:自分は実行しなくても、他者が成果を上げることで全体の成果が向上します。これは、アイデアの価値を最大化する戦略です。

  • 不言実行の限界:個人の努力だけでは成果が限定的です。シンプルにリソースが足らない。

4. リーダーの希少性

そもそも人を動かす「アイデア」を生み出す能力は希少価値がある。「アイデア」は沢山つくれる。しかし全部は本人の時間などの観点から全部はつくれない。全部本人がやっていたら、沢山のアイデアは実行できない。

「3-2 ペイオフマトリックスの再考」この表は、1つのアイデアに対しての話。アイデアが10個あったら以下になる。アイデアを実行する時間を捨てて、10個のアイデアを考える発想

自分ではやらない

5. 有言不実行の戦略的活用

成果の最大化:自分が全てを実行できなくても、アイデアを宣言し、他者を巻き込むことで、新たな可能性が開く。つまり個人の成果よりも、全体の成果を重視することで、より大きな成功を狙う。
アイデアの希少性:「アイデア」を生み出す能力は希少価値がある。
委ねる戦略:実行は誰かに委ねることで、新しい価値が生まれる可能性が高まる。

6. 最悪の戦略としての不言実行

最後に、「不言実行」のデメリットを話しておきたい。
4つのマトリックスの中で一番駄目なのが「不言実行」である。

なぜなら、不言とは何をやっているのかが分からない。ブラックボックス化。実行し成功したら、成功した!とアピールする。不言だから失敗したら無かったことにする。勝手に闇に葬る。

成功確率は100%。つまり失敗はない。それでいいのだろうか?そのアイデアの持っていた可能性は、どこまで活かしたのだろうか?

まとめ

アイデアを胸の内に秘めるのではなく、積極的に共有し、他者との協力を通じて大きな成果を目指す。個人の力は限られているが、集団の力は計り知れない。アイデアを公開し、誰かに委ねることで、アイデアの価値や可能性は大きくなる。

私は「有言不実行」という戦略も活用し、新しいイノベーションの波を起こしていきたい。


この記事は5年前の記事に新たな視点を加えて再編集したものです。


いいなと思ったら応援しよう!

柏木誠|プロジェクトデザイナー
アレとソレを組合せてみたらコノ課題を解決できるソリューションができるよね?と言うパズルをやるような思考回路です。サポートして頂いた費用は、プロジェクト関連の書籍購入やセミナー参加やAIの研究の資金にします。