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アイデアを人に話すメリットと有言不実行の戦略的価値
今日はアイデアを他者に共有する行為について、「有言不実行」という戦略に焦点を当てて考察する。
「有言不実行」は一見すると否定的に捉えられがちな概念ですが、実はイノベーション促進において大きなメリットをもたらす可能性があります。ゲーム理論の観点から、この戦略の価値を分析し、日本におけるイノベーション文化の改善策として提案します。
1. 有言と不言、実行と不実行のマトリックス
まず、アイデアの共有と実行に関する4つの戦略を整理します。
![](https://assets.st-note.com/img/1732547776-MH6QjsZheRknSJNx0pqKlyoi.png?width=1200)
有言実行:アイデアを宣言し、自分で実行する。
有言不実行:アイデアを宣言するが、自分では実行しない。
不言実行:アイデアを宣言せず、自分で実行する。
不言不実行:アイデアを宣言せず、実行もしない。
一般的に、「有言実行」が最も望ましいとされ、「不言実行」も美徳とされることがあります。しかし、今回は「有言不実行にこそ戦略的価値がある」ことを示します。
2. 有言不実行のメリット
2-1 周囲を巻き込む力(「有言」の側面)
アイデアの共有による協力者の獲得:自分のアイデアを公に宣言することで、他者の関心を引き、協力者や賛同者を得る可能性がある。
リーダーシップの発揮:ビジョンを示すことで、人々を導き、組織やプロジェクトを推進することが可能です。
2-2 実行力の拡大(「不実行」の側面)
「不実行」とは、自分で「実行しない」。という事です。つまり誰かに「実行」してもらう。ということです。
スケールメリットの獲得:一人で実行できる範囲は限られていますが、多くの人を巻き込むことで、より大きな成果を達成できます。
専門性の活用:他者の知識やスキルを活かすことで、アイデアの実現性と質が向上します。
2-3 イノベーションの促進
自分で「実行しない」。つまり自分から離れ、誰かに委ねる。ということです。つまり口出ししない。
多様な視点の統合:オリジナルのアイデアが進化する可能性が高まります。委ねるので「オリジナルのアイデア」は、起案者から離れ、自由な発想を呼び込みます。
3. ゲーム理論による有言不実行の戦略的価値の考察
3-1 公共財ゲームへの類推
アイデアの共有と協力者の獲得は、「公共財ゲーム」に類似しています。ここでは、アイデアが公共財であり、その提供者(有言者)は他者に恩恵を与えます。
プレイヤー:アイデアを起案した「有言者」と、協力者となる潜在的な他者。
戦略:アイデアを共有する(有言)か、共有しない(不言)。実行するか、自分では実行しない。
ペイオフ:協力による成果や、アイデアの実現度合い。委ねる姿勢。
3-2 ペイオフマトリックス
以下のように、成果の総量と達成率を考慮したペイオフを示します。
![](https://assets.st-note.com/img/1732548222-o1FDfeyHPLM6uI3h75ivjE4Z.png?width=1200)
有言実行:個人で5の成果、協力者が10の成果を上げ、合計15の成果。
有言不実行:個人は実行しないが、協力者が10の成果を上げ、合計10の成果。
不言実行:個人で5の成果のみ、協力者はなし。
不言不実行:成果はゼロ。
3-3 戦略的インセンティブ
有言不実行の価値:自分は実行しなくても、他者が成果を上げることで全体の成果が向上します。これは、アイデアの価値を最大化する戦略です。
不言実行の限界:個人の努力だけでは成果が限定的です。シンプルにリソースが足らない。
4. リーダーの希少性
そもそも人を動かす「アイデア」を生み出す能力は希少価値がある。「アイデア」は沢山つくれる。しかし全部は本人の時間などの観点から全部はつくれない。全部本人がやっていたら、沢山のアイデアは実行できない。
「3-2 ペイオフマトリックスの再考」この表は、1つのアイデアに対しての話。アイデアが10個あったら以下になる。アイデアを実行する時間を捨てて、10個のアイデアを考える発想
![](https://assets.st-note.com/img/1732549489-HU2PsqIxc1irBYA3OZkF9R4T.png?width=1200)
5. 有言不実行の戦略的活用
成果の最大化:自分が全てを実行できなくても、アイデアを宣言し、他者を巻き込むことで、新たな可能性が開く。つまり個人の成果よりも、全体の成果を重視することで、より大きな成功を狙う。
アイデアの希少性:「アイデア」を生み出す能力は希少価値がある。
委ねる戦略:実行は誰かに委ねることで、新しい価値が生まれる可能性が高まる。
6. 最悪の戦略としての不言実行
最後に、「不言実行」のデメリットを話しておきたい。
4つのマトリックスの中で一番駄目なのが「不言実行」である。
なぜなら、不言とは何をやっているのかが分からない。ブラックボックス化。実行し成功したら、成功した!とアピールする。不言だから失敗したら無かったことにする。勝手に闇に葬る。
成功確率は100%。つまり失敗はない。それでいいのだろうか?そのアイデアの持っていた可能性は、どこまで活かしたのだろうか?
まとめ
アイデアを胸の内に秘めるのではなく、積極的に共有し、他者との協力を通じて大きな成果を目指す。個人の力は限られているが、集団の力は計り知れない。アイデアを公開し、誰かに委ねることで、アイデアの価値や可能性は大きくなる。
私は「有言不実行」という戦略も活用し、新しいイノベーションの波を起こしていきたい。
この記事は5年前の記事に新たな視点を加えて再編集したものです。
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