価値創造の羅針盤、不確実な時代を航海する『匠Method』の可能性
2025年1月11日に『匠Method』の勉強会に参加してきました。『匠Method』は、ビジネスデザインから活動までを一気通貫で行うための手法です。「価値」を起点に、戦略、業務、活動をデザインしていくことを特徴としています。
「価値」という概念
「価値」という概念は根源的な問いです。快楽や幸福、道徳、美しさなど、何をもって価値とするのか、その基準は主観的なのか客観的なのか、絶対的なのか相対的なのか。
これらの問いは、単なる言葉遊びではなく、私たちの行動や社会のあり方を深く規定しています。『匠Method』がその中心に据える「価値」とは何か?これが本稿の内容となります。
1. 主観と客観の統合
『匠Method』は、価値をどのように捉えているのか、その特徴を主観主義と客観主義の対立という哲学的な視点から考察します。
主観主義は、価値は個人の欲求や感情に依存する。一方、客観主義は、価値は客観的に存在する性質や事実に基づく。
『匠Method』は、まず「価値」の起点を顧客やステークホルダーの視点に置くことで、それぞれの主観的な価値観を尊重します。彼らが「何に価値を感じるのか」を深く理解することから出発するのは、まさに主観的な価値の重要性を認識している証拠です。
しかし、『匠Method』は単に個々の欲求を満たすだけでなく、それをビジネス全体の価値創造へと昇華させます。価値デザインモデルや価値分析モデルを通じて、関係者間の価値を可視化し、共有することで、個々の主観的な価値が相互に作用し、より大きな、そして客観的な価値へと繋がっていくプロセスを取っています。
2. 目的と手段のジンテーゼ
哲学では、価値を内在的価値と道具的価値に区別することがあります。内在的価値とは、それ自体が目的となる価値、例えば幸福や美しさなどです。道具的価値とは、何か他の目的を達成するための手段としての価値、例えばお金や道具などです。
従来のビジネス手法では、利益や効率といった指標が重視されがちであり、これらはしばしば道具的価値として捉えられます。
一方、『匠Method』は、「価値」を起点としているので、ビジネスの目的そのものを問い直します。顧客やステークホルダーにとっての真の価値は何か? それは単なる機能や効率なのか、それともそれ以上の何か、例えば経験や繋がり、社会的な貢献といった、より内在的な価値を含むものではないか?
『匠Method』は、これらの問いに向き合い、多角的に捉えようとします。つまりある主張(テーゼ)とそれに矛盾する主張(アンチテーゼ)を合わせて、どちらの主張も切り捨てずに、より高いレベルの結論(ジンテーゼ)へと導くことを目指しています。
3. 個別性と全体性の調和
価値は、文化や時代、個人によって異なるのか、それとも普遍的な価値が存在するのか。
『匠Method』は、多様なステークホルダーの価値観を起点としながらも、最終的にはビジネスとしての成功、すなわち一定の普遍的な価値の実現を目指します。
具体的には、各ステークホルダーの個別のニーズや期待を丁寧に汲み取りながら、それらを統合し、共通の目標であるビジネス全体の価値を最大化することを目指しています。このプロセスは、多様性を尊重しつつも、共通の目標に向かって進むための道筋を示しています。
本質的な価値の探求は持続可能な成長
『匠Method』は、「価値」という根源的な概念をビジネスデザインの中心に据えることで、企業の活動の羅針盤となる可能性を秘めています。
このメソッドは単なるビジネスを推進するためのフレームワークではなく、全てにおいて、まず自分自身で考える。それはどう意味か?を常に考える。その問いかけをしてくる。そんなイメージを持っています。