ある日の飲食店のアルバイト
食券の購入には時間がかかり、同じことを繰り返し聞く振る舞いが見受けられます。
そのような会話は騒々しい食器洗い機のおかげで、老夫婦の会話は聞き取ることなくすませられそうです。
注文を決めたようですね。
老夫婦の奥さんが私の方に来て、尋ねられました。
当店は食券に記載された番号で呼び出す方式であることを説明しました。
しかし、亭主の方は何も動きません。
食券の購入からセルフサービスの水の用意まで
女性に対して押し付けるような前時代的な関係性はあまり好きではありません。
そんなことを考えていると、二人分の料理が完成しました。
同じ品目を注文してくれたので、作業量が減りストレスは多少和らいでいます。
しかし、番号の呼び出し音声が流れても老夫婦は来ません。
そこで、テーブル席に向かいました。
このような方々とは、少し身をかがめて目線の高さを合わせ、大きな声でゆっくり話さないと会話が成り立たないのです。
どうやら食券をなくしてしまったようで、カバンやテーブルをせわしなく確認しています。
店内には老夫婦の奥さんぐらいしかいないのでどうにでもなります。
「食券、今回はなくても大丈夫です」と伝えました。
目線を落とし申し訳なさそうに奥様は言いました。
どうやら、主人の方は認知症のようです。
しかも、何度も迷惑をかけるたびに説明しているような
語弊を恐れずいうと言いなれている感じでした。
もし、そうであるならば症状は進んでるのではと思い記憶を辿ると
何度も、確かにそのような症状が見えていたのにも関わらず気づかなった
前時代的だとか、目線を合わせないと会話が成立しないとか、そんな表層的な事はどうでも良いではないか。
私が一食分。老夫婦の奥様が一食分を持ちテーブルまで運んだ。
奥様の方が、申し訳なさそうな声をしていた
運ばれてきた料理を数口食べた後主人が何かを喋っており。
それを聞いた奥様の声色が少し落ちついたモノに戻っていました。