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ポイント・シンギュリア

ここには前に来たことがある
真つ直ぐな道路には一台の車もない
真夏の陽光に灼かれたアスフアルト
ここはハイウエイ
加速とともに白くなる風景
どこまでも続く真つ直ぐな道路
相対するように時間は円であり面だつた
球であり穴であり入り口であり出口だつた
いつしか風景は都市になつた
それらはすべて遺跡であつた
ビルヂングを貫き天を覆う樹木
果実のいくつかは惑星であつた
私はその惑星の上にいた
惑星は冷えて固まつていた
惑星は冷えていたが日差しは暖かい
心地好い乾燥が静寂を助長する
ここは陽射しの中の都市であつた
誰一人いない都市であつた
暖かな光子の群れに包まれた都市であつた
ハイウエイは天空を分かつ線であつた
都市の根は美しい横丁であつた
掃き清められた商店街
飲む者のない淹れたてのコオヒイ
食べる者のない出来立ての料理
わたしは帰つてきた
いや出て行つた
ハイウエイを走つていた
眼下に都市が見える
都市は遺跡だが
それは常に現在であつた
営みだけを残して人々は消えた
何処へ
初めからいなかつたのかも知れない
時と同化したのかも知れない
誰しもがこの景色を見ているのかも知れない
そしてお互いを見ることはないのであつた
時の地平での出来事であつた
ハイウエイは続く
加速とともに白くなる風景
それは光のスピイドであつた
すべての時が並んで見える場所であつた
時の地平であなたに逢う
冷えた惑星を陽光にかざして
並行する時をひとつに
その隙間を常しえに走る
風に流れる黒髪がワアプした

Copyright : memento morix

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