橋のたもとにいた
ここを散策しなくては
知っているのだ
少し古くて
そこまで古くない
ここは住宅街
川が流れている
コンクリートに囲まれた
用水路のような川
魚がいる
何匹も泳いでいる
橋の下にはもっといる
川面に映る電線
見上げた
無数の電線が空を割る
普段はあまり気にならない
見上げると急に気になる
空を見て思い出した
今は初夏
昼下がり
蒼空
もう暑い季節
いや
ずっとこの季節のままなのだ
川沿い
ガードレール
ブロック塀
お地蔵さん
お供え物は知らない菓子知らない花
塀の隙間から見える庭
その上からはみ出した木
猫
茶色い猫
首輪をしてる
動かない猫
塀の上にいた
床屋のアメンボウ
人がいる
影
髪を切っている
スナックの看板
何件かあるスナック
昼さがりの歓楽街
遠くにタバコの煙
婆さんが吸うタバコの煙
あの婆さんはスナックの婆さん
花屋
お地蔵さんの花
橋の名前
なんだっけな
後にしよう
田んぼ
鉄塔
ずっと向こうまで続く鉄塔
見えなくなるまでずっと鉄塔
学校
休みの日の校舎
初夏の陽射し
白く光る校舎
川の名前
なんだっけな
だめだ
後にしよう
足元
スニーカー
影
自分の影
座りたい
どこかに座りたい
重機たち
並んでるブルドーザー
橋の名前が思い出せない
川の名前も
また猫だ
子猫だ
隠れてこっちを見ている
そうだ
住宅街に同級生がいた
いや
いない
やっぱりそんなやつはいない
またブロック塀
屋根
物干し場
洗濯物
微風になびく洗濯物
多分もう乾いてる
建築中の家
いや
これは壊してる
間違えた
壊しているんじゃない
壊れているのだ
勝手に壊れている
公園
住宅街の公園
ベンチ
ブランコ
滑り台
ジャングルジム
シーソー
砂場
意味不明なモニュメント
意外と綺麗な公衆トイレ
誰だろうか誰なのだろうか
商店街なつかしい商店街
いつの?
駄菓子屋のガチャガチャ
見たことがあるこのオモチャは
本屋
週刊誌と漫画雑誌
これいつの?
少し広い道
踏切
路面電車の駅
電車来ないかな
来ないみたいだ
また陽射し
白くなるアスファルト
アスファルトがじりじり
電車に乗りたい
また橋
今度は憶えてる
あの橋の名前は
ええと
憶えているのだ
憶えているが
まあ後にしよう
赤い橋
白む風景
光のせいだ
小径
ブロック塀に挟まれた小径
家の屋根は低い
海!
ブロック塀に挟まれた
小径の向こうは海だ
海ではなかった
空しか見えなかったから
海かと思った
眼下に広がっていたのは都市だ
海ではなく都市だ
まあ海と変わらない
階段
長い斜面に張り付いた住宅街
たくさんの階段
階段はめんどうくさい
踏切の音だ
電車が来るのだ
自転車をこぐ
この自転車はいらない事にした
自転車はどこかへなくなった
もう駅だからだ
此処は違う駅だ
踏切はもう止んでいた
電車もいない
疲れた
疲れたはずなのだ
早く見つけなくては
もう帰りたい
何処に?
橋
橋のたもとにいたのだ
橋の名前はなんだった
川の名前はなんだった
早く見つけなくては?
何を?
橋の名前ははっきり憶えている
もちろん川の名前もだ
みろ
帰れるさ
名前がわかるならすぐに帰れる
ところで何を見つける
そうか
橋を見つけるのだ
きっとそうだ
すぐ見つかるに決まっている
名前を思い出したから
ええと
憶えてるいる
憶えてるのだ
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