現実逃避している
朝起きて、スーツケースに何日か分の洋服を詰めて、来た電車に乗って降りた事ない駅に一直線。
誰も私を知らないその町で、昼間っから海を眺めて海鮮丼と日本酒でほろ酔い。
場末の宿に日頃食べないファストフードを持ち帰り、翌日は寝坊すると決め込む。
いつもは読まないジャンルの文庫本と、自宅では見ないであろうご当地のくだらないテレビ。
このままこの町の人になりたいと縁もゆかりもない鳥居を括り、漁を終えたであろう漁師らしき男と言葉も少なく淫らに寝る。
網を捌く様にしなやかに動く熱い男の身体を堪能していつもより深い眠りに落ちる。
スーツケースに溜まった洗濯物と磯の香り。
私、此処の女になる。
みたいな現実逃避。私スーツケース持っていないの。