【決算】顧客基盤拡大により二桁増収も減益。今後は、採用を大幅に抑制し収益性改善を目指す|メンバーズのIR note
2024年3月期 第2四半期(今期2Q)決算を10月31日に発表しました。
付加価値売上高(※)は前年同期比15.2%成長となり売上収益とともに過去最高を更新したものの、VISION2030で掲げる1万人体制実現に向け、採用への先行投資を積極的に展開したことで利益率が大幅に低下し、期初予想を下回ることとなりました。これに伴い、通期の連結業績予想も修正しました。
(※)売上収益から外注費等を除いた社内リソースによる売上高を示す独自指標。
今後は、新卒1年目を除くデジタルクリエイター(DC)の稼働率が90%に改善し、営業利益率が10%に回復するまで新卒採用を抑制します。そして、中長期的に付加価値売上高成長率を引き上げ、営業利益率10%を早期に達成するべく、サービスを確立し、営業力も強化してまいります。
今回のnoteでは当社の現状と、今後の方針および取組みについて、Q&A形式で詳しくご説明します。
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採用などの先行投資を抑制し収益確保を優先
Q.営業戦略を変え、事業の統合を進めてきたが業績が低迷しているのは何が原因か
お客さま企業数およびDGTモデル提供企業一社あたりの付加価値売上高が増え、売上収益は前年同期比17%成長し過去最高を更新したものの、採用への先行投資を積極的に展開し売上成長以上にクリエイターの数を増やしたため、利益率が大幅に低下しました。
具体的には、25%成長に向けデジタルクリエイターを先行して拡大する方針にこだわり、クリエイター数は前期末比26.3%増加している一方で、案件数が伸び悩み、未稼働のクリエイターの人件費(未稼働コスト)が過大となりました。
この状況を踏まえ、成長計画を見直し、今期および来期は、2026年3月期以降に収益性を大きく回復させるための事業基盤を再構築するフェーズと位置づけ、戦略を推進することにいたしました。
事業基盤を再構築するうえで最も強調したいポイントは、2016年ごろから拡大してきた新卒採用を大幅に縮小し、採用抑制を決めたことです。これにより当面は付加価値売上高の成長率が現在と同水準の15%程度で推移したとしても、収益の確保を優先させるとともに、クリエイターの稼働率を最大に高める施策を展開してまいります。
また、稼働率をいかに早く改善できるかが長期的な成長性に影響すると考えており、DGTサービスを提供できる専門人材を育成し、サービスの早期確立を進めます。
Q.現状の15%成長は継続できるのか。伸び悩めば通期で赤字の可能性もあるのではないか
今2Qにおいても顧客基盤は拡大しており、仮にDGTサービスの確立にさらに時間を要したとしても、営業戦略を遂行していく中で、現在稼働していないクリエイターも稼働することで、15%の売上成長は可能と考えています。
具体的には、営業の役割と責任を明確に分け、それぞれの戦略を遂行します。
既存拡大に向けては、現場のクリエイターや統括マネージャーが担い、アカウントごとにどのようにクロスセルを推進するかプランを策定、実行することで、DGTモデル提供社数の拡大ならびに、一社あたり付加価値売上高の向上を目指します。
新規獲得に向けては、営業本部が担い、専門カンパニーのクリエイターを中心に提案活動を強力に推進します。展示会やウェビナーを積極的に実施し、リードは増加してきており、専門人材が充足されれば案件獲得は一層進む見込みです。
高成長を実現すべく早期にDGTを確立
Q.DGTサービスをいかに確立するのか
戦略の肝となる専門カンパニーのデジタルクリエイター数を増やすことで、DGTサービスを確立します。
DGTサービスの確立とは、「お客さま企業に対し、様々な職種のデジタルクリエイターで構成される大規模なチームをグループ全体で提供(クロスセル)できる体制」を確立することであり、課題はクロスセルを行う上で必須となる専門人材の不足です。
そのため、スキル育成や人材の異動・配置転換をこれまで以上に活性化させ、まずは今期末に専門カンパニーのデジタルクリエイター数700人を目指し、拡大を加速させてまいります。
Q.苦戦してきた育成や社内異動をどのように活性化させるのか
デジタルクリエイターにとって未知の職種へのスキルアップやキャリアチェンジは容易ではないため、スキルアップを評価へ反映する仕組みや、市場価格に連動した単価モデルを導入し、単価=クリエイタースキルの価値を可視化するなどの取組みを推進し自己成長を促すことで、異動の活性化を図ります。
また、環境の変化により技術が急速に進化/陳腐化していく中で、需要の見込まれる技術(先進性の高い技術)を身に着けなければ、自身のスキルの価値が低下していく可能性があることをクリエイターに意識づけるため、職種別のコミュニティなどを通じて勉強会やセミナー、情報発信を実施しています。
また、生成AIに関しては先日、ベネッセさま、ビービットさまと3社共同で実施している生成AIを活用したWebサイト運用のプロジェクトにおいて、コスト削減および生産性向上により業務プロセスを抜本的に改革できた成果をご紹介しました。
当社ではもっと幅広く全社で生成AIを活用できるよう利用環境を整備するとともに、全社研修を実施し、各部門で生成AI活用を推進するリーダーのもと事例を創出してまいります。
Q.大量に採用してきた若手クリエイターは稼働するのか
全社で専門人材を増やしていくことで、若手のクリエイターの稼働を見込んでいます。
特に、2022年4月以降に新卒入社したクリエイター1,000人超が本格稼働すると業績に与えるインパクトは非常に大きいため、新卒(若手)のうちから先進性の高い技術領域におけるスキル育成により専門職種におけるキャリア形成を促進しています。
また従来実施してきた、3~5年目のクリエイターの育成および配置転換により専門人材を拡充し、空いたポジションで新卒が稼働するサイクルも継続します。
技術の進化に応じて市場が求める専門スキルを身に着けるためにも、このサイクルでうまく人材がローテーションすることが健全な姿だと考えています。
経営判断について
Q.採用抑制の判断が遅れたのではないか
デジタルクリエイター1万人体制は、中長期にわたる高い業績成長や、日本の脱炭素社会への変革を当社がリードするという目標には欠かせない戦略であり、これに向けた大規模な採用に取り組むとともに、人員増に応じ付加価値売上高成長率25%を実現するべく、前期より営業戦略の転換・強化そして事業の統合を進めてまいりました。
判断が遅れたように見えますが、人員増と業績成長の両立に最後まで挑戦した結果であり、今下期より方針を新たに高成長に向けた戦略を愚直に進め、必要であれば軌道修正しながら経営の舵取りをしてまいります。
Q.ビジネスモデルに問題があるのではないか
旧EMC事業の成長率は緩やかですが、旧PGT事業の、主に専門カンパニーは高成長を遂げており、連結付加価値売上高は15%の成長を継続しています。加えて、足元でクロスセルが進み始めており、ビジネスモデルに問題があるとは考えておりません。
ビジネスモデルは転換期を迎えており、従来成長をけん引してきたデジタルマーケティングを中心とするWeb運用支援のみの体制からデジタルビジネス全般の運用を支援するビジネスモデルへ転換していくための基盤を構築してまいります。
編集後記
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今期および来期の利益水準は低水準となる見込みですが、足元を固め収益性の回復および成長率を引き上げるため、事業基盤を再構築します。
デジタルの世界は技術革新がはやく、デジタル人材の不足は企業にとって避けられないリスクですので、優秀なデジタル人材が多く所属していることは今後とも当社の大きな強みになると考えています。
ご心配をおかけしてしまいましたが、引き続きご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
今回の記事のほか、過去の決算後のQ&Aをご紹介する記事は『メンバーズの決算を知る』マガジンにも揃えております。ご覧ください!
(担当:中島)