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放映から15年「とらドラ!」今更初見で脳を焼かれた話


あいさつ

くぎゅうううううううううううう

逢坂大河(通称・手乗りタイガー) CV:釘宮理恵

はっ!
うっかりあちら側に持っていかれるところだった。
かつてツンデレヒロインの座を思うがままにしてたとかしてないとかのCV:釘宮理恵ですが、なるほどそりゃ発病する人が多いわけだ。

とらドラ!とは電撃文庫で刊行された竹宮ゆゆこ原作の小説をベースに漫画化、アニメ化を果たした人気作品である。(wikipedia調べ)
今記事はアニメ版のみ言及する。
筆者はアニメはそれなりに見るほうだが、1期に1つ追うかどうかのレベルで、今回はたまたまABEMAでとらドラ!の一挙放送がやっていたので観た次第。

本作は思春期ラブコメである。
本作中に出てくる登場人物は高校2年生と言うこともあり、歳相応の未熟さが際立ち、見る人によっては目を背けたくなるようなこっぱずかしさで溢れている。

中心人物となる高須竜児と逢坂大河はそれぞれ別の人に片思いしているのだが、意中の人の前だと真面に話せなくなり無意識に距離を取ろうとするなどものの見事にポンコツ状態となる。
これはツンデレに近い要素であり、勘違いされる要素が多く含まれている。
筆者はラブコメは勘違いとすれ違いを楽しむジャンルなのではないかと思っている。
故に非常にムズムズしたまま「もう付き合っちゃえよ!」(画像略)状態を延々と続けるのである。

嫌われ役が核心を突く

川嶋亜美(職業・モデル) CV:喜多村英梨

今作の竜児と大河もそのラブコメ王道テンプレートの道を歩むこととなる。
竜児は櫛枝実乃梨を好きと言い、大河も北村祐作を好きと言い続けるが、筆者は「本当はそうじゃないんじゃないの?」と思っていた。
そこに川嶋亜美と言う毒舌キャラが作品に投入される。
作中でも自身を性格が悪いと言ってるように、表と裏を人によって使い分けるような見事な女優っぷりである。(女優ではなくモデルだが)

しかし実のところ裏の顔こそが、竜児と大河の本音を引き出す強烈なスパイスとなる。
竜児の想い人である実乃梨を相手として一触即発となるほどの嫌味を言う場面があるが、裏表を使い分けてきた亜美だからこそ人の嘘に敏感で許せなかったのでは無いかと思う。
ましてや良き友人となってくれた竜児のことだ。
亜美は実乃梨が、友人の恋心と勇気を踏みにじったと見たのだろう。
目の前に道があったのに、自身の気持ちから目を背けた実乃梨を、嘘をついてる実乃梨を、過去の嫌な自分と重ねてしまったのではないか。

もちろん亜美も竜児と大河が惹かれあってることに気づいてないわけではない。
だからと言って誰と誰をくっつけるかとか野暮なことはしない。
亜美は竜児の選択を優先したのだ。

だが亜美は竜児に対してこうも言っている。
「幼稚なおままごとはやめたほうがいい」
亜美の目には竜児と大河が、『実乃梨に恋する竜児』と『祐作に恋する大河』のそれぞれの役を演じて居ると見えているようだった。
人の事ばかり考えてるといずれ後悔するぞとの警告だった。

未熟であるからこそ面白い

冒頭でも書いた通り、登場人物の殆どが思春期の子供である。
その未熟さがパズルのピースのごとくうまくはまり、メインキャラだけじゃ完成しない味わい深い作品となっている。
最近涙腺緩みまくってる筆者は全話見るまでに5回くらいボロボロと泣いた。泣いた回数は正確にカウントしてないがそのくらい大粒の涙を流して泣いた。

実のところ筆者はラブコメというジャンルはあまり好きではない。
何故なら本命とくっつけば作品は終わってしまうため、どうにかして引き延ばせないかと神の手がありとあらゆる方法で誘惑して二人を引き離すのだ。
その際に舞台から姿を消すキャラクターも存在し、主要人物と思い込んでたキャラクターさえもあっさりと表舞台から姿を消すのだ。
それがとても悲しくて仕方がなかった。

今作とらドラ!では25話中2話目にして、本命にヒロイン大河が振られる事から始まる。
話が早い作品は好きだ。
そして複数の人を好きになることをありふれたものと位置付ける一方で、複数の人を好きになってはいけないとキャラクターは自身に言い聞かせてるのだ。
これもラブコメではよくあることである。

とらドラ!は1話から終わりまでずっと大河と竜児の二人が同じテーブルでご飯を食べる、ただそれだけで安心して作品を追うことができた。
誰とくっ付くの?と言う観点ではなく、いつくっ付くの?と言う観点で作品を見ていた。
次の話を再生すれば二人のいつものやり取りが見れるのがとても嬉しい。

未熟であるからこそ その2

わけ合って生徒会長と殴り合いの喧嘩をする大河

(上記画像)
鼻血だして顔を腫らして、ヒロインがしてはいけない顔をしている。
生徒会長との取っ組み合いの殴り合いのシーンである。
バトルものでもない作品でヒロインが誰かにケガをさせるなど、あってはならないはずだ。
しかもヒロインがこれによって停学する。
こういった要素は安易に扱えば暴力ヒロイン・不良ヒロインと言ったレッテルが貼られるだろう。

大河の頭の中は想い人祐作はとっくに好きな人が居たこと、その好きな生徒会長が祐作の告白を跳ね除け、事実上振った事により感情がぐちゃぐちゃなのだ。
そしてこの大河を止められる人物として呼ばれるのが他でもない竜児だ。
他クラスの人間でさえも二人の信頼関係を認めてることの裏付けでもある。

未熟であるからこそ その3

アニメ後半からは各キャラクターが感情をぶつけ合う場面が増えてくる。
ラストまで次第に加速し続け、そのクライマックスとして遂に大河は竜児に対しての恋心に気づき、竜児もまたそれを知る。

しかし互いに好きなことが分かってそれで終わりではないのがこの作品。
相思相愛を思い違いであると考えることで二人は自身を納得させようとしてしまう。
そう、二人だけの力では二人は反発しあい離れようとし、もはや限界だった。

結論としてとらドラ!はタイトル通り、大河(タイガー=寅)と竜児(竜=ドラゴン)の恋物語だ。
毎日一緒の食卓を囲む大河と竜児の関係は恋や憧れをすっ飛ばして、家族のような関係である。
そこに亜美の「幼稚なおままごとはやめたほうがいい」と言う言葉が光る。
亜美からすれば大河と竜児は家族ごっこを続けていて、ままごとが終われば互いに役割を降りて別れるのである。
本気で取り組んだことが偽物になる前に二人に警告していたのだ。

ラストまで見終えて

積極的に追わないジャンルだからこそぶっ刺さったと言うか、登場人物と同じ年の頃に筆者も思い当たることあったなとか、そんなこと色々考えた。

けしてキラキラしてキレイに整ったものでは無いからこそ美しい作品と言うか、ビターな苦みを加えたチョコレート、もといフルーティーな酸味のアクセントが光るオランジェットと言ったところか。

余談だが、お気に入りのラブコメは「好きな子がめがねを忘れた」「ジョゼと虎と魚たち」である。

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