イヤホンが死んだ。世界が長くなる。
イヤホンが死んだ。
最近ワイヤレスイヤホンの接続の調子が悪いため、Appleの純正のイヤホンを日常使いしていたのだが、コードに慣れていないのか、イヤホンを思いっきり自転車のチェーンに絡めてしまい、見るも無惨な姿に粉砕してしまった。
何を言っているのか、どう伝えたら良いのか分からないが、私の一歩に合わせて、そのイヤホンのイヤホン生命は奪われたのである。情けない、情けない、情けない。不意の一歩で命がなくなる。世界から音がなくなってしまった。
イヤホンを毎日していて、ずっとなんかしら音楽を流している。外界との遮断。自分だけの理想郷を半径1メートル程度の範囲で作ろうとする。そのための必需品がイヤホンだった。
ああ、壊れてしまった。壊れてしまった。
ふと目を離した隙に、イヤホンは自転車のチェーンに吸い込まれ、壊れてしまった。
イヤホンが死んだ。イヤホンを買いに行こうとした。お腹が空いたから、ららぽーとに入った。
なんとなくフードコートでご飯を食べていると、横の席の女子高生がすごい大きな声で話し合っている。恋バナをしている。すごく楽しそう。ご飯を食べ終わって、一息ついていると、横の女子高生の1人がすごい声をあげた。どうやら予定をダブルブッキングしてしまったみたいだ。何回言うんだよと言わんばかりの勢いで、やばいと連呼していた。大変そうだなと思いながら、聞き耳を立ててしまう。こう言う時に、イヤホンがないと、俺はキモい存在だなと自分を俯瞰して思ってしまう。イヤホンをしていたら気付かなかったかもしれないのに。
イヤホンが死んだ。
理想郷は遠くへ消えて、社会の荒波に揉まれながら、ゆっくりと時間を過ごす。
イヤホンが死んだ。
イヤホンが死んだ。
世界が長くなる。
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