幸福度を国際比較するって意味があるのか?
教室で先生が子供たちに「みんな幸せかなあ?」と訊いたら、
全員手を挙げて「は~い、幸せで~す!」と返ってくるでしょう。
大人が「あなたは幸福ですか?」と問われて、「はい、幸福です」と
安直に答えることは憚られるのではないでしょうか。
世間には、幸運に見放された人々がいることは、毎日のテレビのニュース
を観ていれば分かります。
気の毒な人がいる、そんなことが頭に過ぎると「まあまあですね」
「人並みでしょうか」「上を見たらきりがない」「そんなこと一概には言えません」などと、ぼかすのが大人の対応でしょう。
国連機関である持続可能開発ソリューションネットワーク(SDSN)が
毎年、世界の国々の国民の幸福度を調査して世界幸福度調査(World Happiness Report)ランキングしています。
「幸福度」を測るというのは、目には見えないもの、主観的なものを
数値化するわけで、大変に難しいことです。
主体になるのは、アンケート調査で、各国、年間約1,000件の回答を
収集します。
キャントリルラダー(Cantril ladder)と呼ばれる手法を用いて、
回答者自身の幸福度が0~10までの11段階中、どこに当てはまるのかを
記入します。
国の政情の安定性を見るために、過去3年間の平均値を入れて判断します。その上で、次の6つの客観的な項目を加えて総合的な判断をします。
・1人当たり国内総生産(GDP)
・社会的支援の充実(社会保障制度など)
・健康寿命
・人生の選択における自由度
・他者への寛容さ(寄付活動など)
・国への信頼度
2022年調査結果ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
順位
1位フィンランド 2位デンマーク 3位アイスランド 4位スイス
5オランダ 6ルクセンブルグ 7スウェーデン 8ノルウェー
9イスラエル 10ニュージーランド 11オーストリア
12オーストラリア 13アイルランド 14ドイツ 15カナダ 16米国
17イギリス 18チェコ 19ベルギー 20フランス 21バーレーン
22スロベニア 23コスタリカ 24アラブ首長国連邦 25サウジアラビア
26台湾 27シンガポール 28ルーマニア 29スペイン 30ウルグアイ
31イタリア 32コソボ 33マルタ 34リトアニア 35スロバキア
36エストニア 37パナマ 38ブラジル 39グアテマラ 40カザフスタン
41キプロス 42ラトビア 43セルビア 44チリ 45ニカラグア
46メキシコ 47クロアチア 48ポーランド 49エルサルバドル
50クウェート 51ハンガリー 52モーリシャス 53ウズベキスタン
54日本 55ホンジュラス 56ポルトガル 57アルゼンチン 58ギリシャ
59大韓民国 60フィリピン 61タイ 62モルドバ 63ジャマイカ
64キルギス 65ベラルーシ 66コロンビア 67ボスニアヘルツェゴビナ
68モンゴル 69ドミニカ共和国 70マレーシア 71ボリビア
72中国 *73位パラグアイ~146位アフガニスタンまで省略
以上、幸福度ランキングで我が国を見ると、なんと54番目です。
ちょっと低すぎませんか、と文句を言いたくなります。
日本より上位の国で、麻薬マフィアが社会問題になっている国もあります。
隣の国へ逃げてゆく大量の不法移民輸出国もあります。
日本はGDP3位、一人当たりGDP28位、
世界平和度指数は163ヶ国中10位、
平均寿命世界一、健康寿命トップクラス、
世界の治安ランキング179ヶ国中10位、
犯罪発生率の低い国トップ30ヶ国中、9位、
男性就業率は世界でトップ、女性の就業率は中位、
最終学歴、高等教育の割合は世界で上位。
余暇と個人的ケアに費やす時間の国際比較では中位、
世界住宅水準ランキングはトップ40ヶ国中22位、
国民健康皆保険、高齢者福祉の程度は世界的に上位、
婚姻率は中位、離婚率は低位。
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ざっと幸福度のベースになるだろう別の国際比較データーを
見ても54番目はどうもおかしいと思いました。
調べてみると、日本人のアンケートへの答え方に
原因がありました。
アンケートの問いに、「どちらでもない」「わからない」という
日本人の答えが異常に多かったのです。
設問によっては、各国と比べて2倍、3倍の不明瞭な回答があります。
これを「どちらでもないバイアス」と呼び、調査に携わる
担当者泣かせなのが日本人の回答パターンのようです。
さあ、そこで、そもそもこういう幸福度調査国際ランキングなるものが、
何の役に立つのか疑問さえを感じます。
国連が各国から資金を得て、世界平和の為に活動する意義は賛同しますが、その為に何をするかの議論がなされているのか、甚だ疑問になります。
もっともっと大事な問題が世界には山積しているわけで、解決策、
平和な道筋を示すことに専念して欲しいと思います。
これまで、国連のすることはすべて正しいと批判する意識を
持ったことがありませんでした。
私たちが国連の仕事の仕方にもっと関心をもって
評価してゆくことが必要です。
今回の幸福度のランキングに「世界一幸せの国ブータン」が
見当たりませんでした。
幸福感は個々の人の感じ方、捉え方で、人生観や価値観
国民性、国柄、宗教観、歴史観などが大きくあり、
日々変化してゆくもので、とてもデータ化して比較できるような
ものではないと思います。
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