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右往左往

 人の視線は相手の顔の左側から見て右側に移動してゆきます。
自分で鏡を見ているときも、左側に注意が向いてメイクに
気遣ったりします。
ところがこれは大きな勘違いです。
鏡の中の自分の左は、人から見ると右になります。
ということは自分の顔の右にチャームポイントを置くといい
ということになります。
 
 世界の道路には左側通行と右側通行があります。
左側通行はイギリス型で馬車の御者が中央に座っていて、利き腕の右で鞭を使ったため左になりました。
右側通行はフランス型で御者が左側の馬に乗っていたので右側通行になりました。
イギリスの勢力下の国々はみんな左側、フランスの勢力下は右側になりました。
アメリカは、当初イギリスの勢力下でしたので右側通行でしたが、イギリスからの独立戦争でフランスの力を借りたので左側に替えました。

日本はイギリスの影響が強く1900年(明治33年)に正式に左側通行と決めました。
沖縄はアメリカ占領時代は右でしたが、1978年7月30日の本土復帰の日に、一夜にして左側通行に戻すという離れ業を行ないました。

 関東は武士の刀がぶつからないように左側を歩きました。
関西は商人の街でしたから右側でした。
今でもエスカレーターで右側に立っている人は、大方関西の人でしょう。
エレベーター関係者の方が、片側に乗られるのは迷惑で、片方への加重で
メンテナンスに苦労するそうです。
本当は二人並んで乗るのが良い訳ですが、急ぐ人のために片側を空ける
という習慣がここまで染みついてしまうと改善は無理でしょう。

 私たちは日常、ほとんど意識せず当たり前に右側、左側と分けて生活しています。
右、左の現象を見てゆきましょう。
 
左回転について
●蛇口は右回転で水を絞って止める、左回転で緩めて出す。
 右回転は集中、左回転は拡散。 
●フィギアスケートは演技もリンクも左回転、
 陸上競技も左回転のトラック。
●ボクシングでも対戦の両者は左に転回して間合いを取る。
 右に転回するとカウンターパンチを受けやすくなる。
 不運にも暴漢と対峙した時は左転回で様子をみて、逃げるのが得策。
●多くのスーパーマーケットはお客さんが左に回遊するように
 レイアウトされている。入って右側に野菜などの生鮮ものが並んでいる。
 自然な流れで馴染みやすく右手で野菜を掴み、カゴに入れ易いという
 利点もある。
●回転寿司は少し事情が違う。本当は左転回が見え易いのだが、
 左から寿司の皿が来ると、右手に箸を持って手を出し、皿に手を突っ込み
 流れを停めてしまう。右からならば流れに沿って掴み易い。
 また、もう一つ、右から来ると魚が新鮮に感じるという心理作用が
 働いている。
●ダンスなど回転する演技の場合は、右手(上手)から出る。
 これは、回転は左であるから客席に向きやすくするため。
 左から出て左回転すると観客にお尻を向けることになる。
●時計は右回転。これは北半球の日時計のなごりである。
 南半球の人々にとって本当は左回転の方が心地良い筈だが、
 後手の弱みで我慢しているのだろう。
●人の細胞膜も大半が左回転。細胞膜の外側はナトリウム、内側はカリウム 
 で、両方とも左回転している。
 ところが細胞内のミトコンドリアやリボソーム、ゴルジ体など大半は
 右回転エネルギーをもっていて、左右の反発作用が生命エネルギーの
 元なのか神秘的。
●タンパク質はアミノ酸が対になって連なった分子になっている。
 有名な味の素のグルタミン酸ソーダ(ナトリウム)は左回転で、
 うま味が売り物である。
 右回転のものもあるが、これにはうま味がない。
 人工合成では、この右左を作り分ける事ができない。
 やっぱり、天然のうま味には敵わない。
●建物の螺旋階段も左回転。
●アサガオなど植物の蔓(つる)も左に回転して絡んでゆく。
●ピラミッドの内部構造も大きな左螺旋転回で中心の王の間に上ってゆく。
●船も飛行機も左舷から乗り込む。
 左側はポートサイドで岸壁に着ける。因みに右側はスターボードと呼ぶ。
 2006年頃まで北朝鮮から不定期貨物船万景峰号(まんぎょんぼんごう)が  
 新潟港に来ていた、今は関係悪化で入港していない。当時、この船は経費 
 削減なのかポートサイドだけ入念に塗装していたそうで、経済の苦しさが 
 如実に表れていた。
 
以上の左回転優位はどうも地球の自転が左回転しているのと関係がある
ようです。
 
向かって右が上位
 
 左から右に流れるのが文章の流れとして順当とすると、アラビア語や
漢字、旧い日本語は縦書きで右から左に綴ります。
はがきや手紙を縦書きで書くと、ある種の抵抗感や緊張感があります。
きっと古代の中国や中東の国は強大な権力が働いていたから、
王様の気まぐれで逆の流れになったと解釈するのは早計かも知れません。

 右を上手、左を下手といい、舞台でも右を上位にしています。
学校の教室では、先生は必ず右から入ってきて生徒たちに向き合います。
これは、右手が影にならないように左に大きな窓を配置したからという理由が合理的です。
ただ、偉い人はいつも右から出てくるという幼少期からの刷り込みになったのかも知れません。
お雛様の内裏様を置く位置は、関東を中心に向かって左が多くなっていますが、関西では古来からの右側に鎮座します。

●「彼の右に立つ者はいない」と人を褒めたりする。
●舞台でも絵画でも神様は右から登場する。
●司会者は左から出てきて、右から登壇する講演者を迎えて紹介する。
●落語の舞台では下手(左)から登場して上手(右)に捌ける。
●魚を皿に盛るときには頭は左、尾は右に置く。(右から魚が泳いでくる
 感じになる)活き活きと見える効果がある。
●多くの映像表現で、右に向かう列車は上り列車、左に向かう場合は下り
 列車が多い。
●左から右に進むと、スピード感がある。右から左に進むのは、ある種の
 抵抗感がある。
●野球の有力なバッターは左打ちが多い。これは投球が遅く見える可能性が
 ある。
●戦争映画で、攻めてくるのは左からで、攻撃するのは右からである。
 真珠湾攻撃の零戦は右から飛んで行く。
 B29は、日本本土を攻める時は左から飛んで来る。
 カメラを北に据えて東西の衝突を映像化する。
 カメラを南に据えれば当然左右が反転する。
 ということは表現に心理的な誘導の意図があるということになる。
●元寇が攻めてくるのは左から、鎌倉武士が対抗して進むのは
 右からである。
●政党で右翼は保守、伝統、秩序、権威、左翼は改革、自由、平等、
 啓蒙などそれぞれの思想の傾向を持つ。
 
以上ここまで、よくお付き合いくださいました。
きっと読んでいて、右だ左だとイメージをやり繰りしてきたので、
頭の中はきっとモヤモヤして痒みを覚えているかも知れません。
まさに右往左往されたことでしょう。
 
以上の左右の効果は無意識に働く作用です。カタログ制作などの印刷物や
店舗や展示会の際のレイアウトなど販売促進に活用できると思い、
まとめてみました。


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