荒ぶる神
ゴジラと聞くと、未だに、ん?と耳をそばだててしまう。
なにしろ小学生の頃に映画館で観たゴジラの衝撃は凄かった。
その夜から夢に現れて、我が家の屋根越しに
左から右にドッスンドッスンと地を震わせ通り過ぎていった。
幸い、こちらに向いて火を噴くことはなかったが、
恐ろしくて縮こまっていた。
それでも怖いもの見たさでアメリカ版も含めて
ゴジラの映画シリーズはもちろん
西武園の度肝を抜かれるゴジラ・アトラクションまで観てきた。
そして先日、最新作の「ゴジラマイナス1.0」を
4DXの揺れと振動と水しぶきの仕掛けに乗って
たっぷりと臨場感を味わった。
終戦後の瓦礫と化した東京にゴジラがやってきて、
更に破壊の限りを尽くすという時代設定で、
戦場から帰ってきた元兵士たちが、再び命を懸けて
ゴジラとの戦いに向かう切実な姿に落涙したものだ。
はて、ゴジラとは何なのか?何かのメタファーなのか?
映画の終盤で遂にゴジラが大量の爆弾を被弾して
崩壊し海に沈んでゆく姿を、攻撃した艦船の兵士たちが
敬礼して見守るという場面を観て、
そうだこれは荒ぶる神に対しての古来からの
鎮魂の形なのではないか。
日本は世界的にも珍しい災害の多い国で、
地震、津波、台風、火山噴火から目を逸らすことはできない。
どれも抗えないことで、唯々祈り、神への畏敬を示す。
人食い熊を仕留めた時には神の使いということで、
手を合わせ慰霊の塚を立ててきた。
ゴジラは自然災害の象徴で、神の使いなのだろう。
どのように荒ぶる神に対抗し知恵を絞り、
人々が一致団結してゆく姿の尊さを
表しているようにみえる。
家族、仲間、コミュニティのために
どれだけ頑張れるか、
その気高さが感動を呼ぶのであろう。