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平和な棲み分け理論

 中国は経済を伸ばし、軍備を拡大し、
領土、領海の拡大に熱心で、
四方八方に加圧の行動をしています。
 
中国沿岸の海洋侵出では、南沙諸島でフィリピンと、
沖縄尖閣列島では日本と摩擦を起こしています。
陸上の国境でも、中国軍はやはり膨張して、
インド軍がこれに対抗し、重苦しい緊張状態が
続いています。 そんな中、大分古い話ですが、
ちょっと心和むやりとりがありました。
2013年のインド、ヒンドゥスタン・タイムズ紙の
8月9日付の新聞記事が伝えています。
 
中国のパトロール隊がいつものようにインド側に
国境を侵入し、「中国の領土だ」と主張していたところを
インドのパトロール隊が発見し、銃を構えるという
一触即発の睨み合いとなりました。
ところが、しばらくして、あろうことか中国側の兵士が
バドワイザーのビールの缶、数本を差し出しました。
するとインド側も手持ちのお菓子を差し出し、
最悪の交戦の事態は回避されました。
中国側の新華網もこのハプニングを8月11日の紙面で
好意的に伝えました。
 
相対する軍人同士も、軍服を脱げば只のヒト同士ということを、
微かにでも信じたいところです。
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 生態学者・今西錦司(1902~1992年)は、
生物の進化について「種の中では競争しなくても
生きて進化してゆく」という画期的な棲み分け理論を
打ち立てました。
 
 生物の進化と言えば、ダーウィンの進化論が盤石な定説でした。
1859年「種の起源」を出版して、集大成した形になりました。
「自然淘汰」「弱肉強食」「優勝劣敗」の理論一色で塗り固められて、
疑問を挟む余地はありませんでした。
ヨーロッパでは、多分にキリスト教的な神の視点からの解釈も
絡みながら紛々と議論されてきました。
やがて進化論は、白人優位・有色人種劣位、
そしてナチズムにまで投影されて人々の価値観や社会の仕組みに
影響してゆきました。
 
 堅い岩盤を打ち開くような新しい視点を世界に提示したのが
今西博士の棲み分け理論です。
昆虫や魚など多くの生物の生態を子細に見てゆくと必ずしも、
弱肉強食ばかりではなく、弱い「種」でも固有の環境の中で
適応してうまく棲み分けしながら、進化してゆくという理論を
提唱したのです。
 この理論の底流には、日本古来の「共存共栄」や
「和の精神」があり、日本の学者らしい帰結でした。
 
 世界に目をやると、ロシアのウクライナ侵攻、
イスラエルとパレスチナの紛争と相も変わらず
昨日も今日も紛争や内戦で命を落とす人たちが沢山います。
力には力で優位に立って、相手を潰すというやり方が
相変わらず行われているのを見るにつけ、
進化しない人類の哀しさを思います。
人類も上手に棲み分けて、お互いを尊重するような方向に
進化してほしいものです。
その意味で、インド軍兵士と中国軍兵士の間に一瞬でも、
人間的な感情の交流があったこの出来事には
希望があると思いました。
 
 

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