大空に深呼吸
幼なじみとつるんでヤンチャやってた中学生時代。
それから違う道を歩んで10年目に再会すると、
幼なじみはヤクザの中堅幹部で
高級車を乗り回し、幅を利かせている。
俺はといえば、しがない安月給のサラリーマン。
上司から怒鳴られ身を縮めて生きている。
もうヤメだあ、こんな暮らし!
ヤクザの幼なじみに指南を受けて、任侠の世界に入ってゆく。
これまでの、あれはいけない、これはいけないの
息の詰まる毎日から放たれて、やりたい放題。
やっぱり俺にはこっちの水の方が合っていると、
どんどん深みにはまって崩れてゆく。
いつか観た任侠映画をなんとか思い出しながら綴ってみた。
妻が、風邪かなとオデコに手をやっている。
わあ、コロナに感染じゃないかと車に乗せてPCR検査所へ。
ついでに自分も検査して結果を待った。
妻、陽性、自分は陰性。
直ぐに医院に連れて行き、薬を処方してもらって帰った。
保健所からのアドバイス通り、ここから完全隔離の生活の体制を敷いた。
洗面所とトイレは一階と二階で分けた。
寝室も上下階で分けるべきだったが、急変した時、助けを呼ぶ声が
聞こえなくては困ると二階の別室にマットレスを運び込んで、寝室にした。
食事は冷凍庫のおかずを解凍しながら用意して、
マスクをして妻の寝室に運んだ。
二日ほどして自分も熱っぽくなって喉が痛い。
医院にフラフラしながら行くと感染と判明した。
さあ、こうなると感染対策の隔離生活は無意味になった。
寝室も元に戻し、食事も一緒にし、
洗面もトイレもタオルも気にせず使った。
普段通りの気楽な生活に戻した。
この感覚って、まるで我慢してきた堅気の生活から
幼なじみとのヤンチャな日々になって、
大空を仰ぎ、思い切って息を吸い込む
あのシーンの気分と一緒じゃないか。