メロンのガスパチョ
果房 メロンとロマンがメロンを使ったお家で楽しめるレシピを発信する企画、「メロンのレシピノート」。
第15回は果房 メロンとロマンが位置する東京・神楽坂で、四季を感じる日本の食材をつかったスペインの郷土料理を提供する「エスタシオン」オーナーシェフの野堀 貴則(のほり たかのり)さんが一緒にレシピを考えてくださいました!スペイン料理の魅力についてお話を聞きながら、メロンをつかったスペイン料理のレシピについて教えてもらいましょう。
➖連日お客さまで賑わうエスタシオンさまですが、野堀さんとスペイン料理の出会いはいつだったのでしょうか?
共働きの家庭だったので、学生のころから兄妹のご飯を料理していて、料理はとても身近な存在で、好きでした。学生時代に近所のイタリアンでアルバイトをしていて、そのままイタリア料理の道に進もうと思い、東京のイタリアンで3年間働きました。ところがそのお店が閉まることになり、せっかくだから色々なジャンルのお店で働いてみようと思っていた時に出会ったのがスペイン料理のお店でした。今もとてもお世話になっている、スペイン料理のお店を経営している方が、銀座でスペインバルをオープンするということで、働かないかと誘ってくださったんです。
➖スペインバルはどのような特徴のお店ですか?
スペインでは、バルはいたるところにあり、人々にとって大変身近な存在です。朝はコーヒーとサンドイッチを食べたり、お昼や夜は仲間とお酒を飲む社交の場になったり、一人で食事に来る人もいたり、非常に生活に特化した存在なんです。日本のコンビニくらい身近な存在です。
バルで働き始めた時、その雰囲気がすごく素敵ですぐ気に入りました。それまでは、キッチンとホールがしっかり分けられている場所で調理をした経験しかなかったのですが、バルのオープンキッチンで、お客さまとお話しながら調理したり、お料理を喜んでくださるお客さまの様子を直接見ることができるのが本当に嬉しくて、楽しかった。その時から、どんどんスペインに「ハマって」いったんです。
➖現在は海外渡航がなかなか難しいですが、以前はスペインに毎年足を運ばれていたそうですね。
スペインバルが好きになり、現地のバルに毎年行くようになりました。毎年様々な地域で料理を味わっていたら、同じスペイン国内でも、地域によって文化も料理も全く違うことを改めて気付かされたんです。とれる野菜や海産物も違って、その特性を活かした郷土料理が存在している。そして、現地の人たちは自分たちの文化をとても愛し、誇りを持っている。そんな状況を目の当たりにして、郷土料理の奥深さに気づいて、もっと知りたいと思うようになりました。そこからは自分で足を運んで、現地で郷土料理を味わって学ぶようになりました。郷土料理は本を読んだり、今は便利になってYouTubeなどでも学ぶことはできますが、やはり現地に足を運んで味を確かめることが一番勉強になります。今はなかなか海外渡航が難しいですが、また現地に行きたいですね。
色々現地をまわるうち、スペインの郷土料理の多様性をもっと伝えたい、と思ってオープンしたのが、「エスタシオン」です。バルも好きだけど、スペインの郷土料理をベースにしたお料理をしっかり味わっていただくことを目的としているので、バルよりもレストランに近いスタイルのお店にしています。
➖店名「エスタシオン」の由来はどのようなものですか?
スペイン語で「季節」という意味です。自分は日本人で、日本で料理をするのだから、料理に日本の素晴らしい四季の要素を加えたいと思い、スペインの郷土料理をベースに日本の四季折々の食材を加えてアレンジしています。
➖夏のスペシャリテに、メロンを使ったお料理があるとお聞きしました!
はい、うちでは毎年夏に「鮎のテリーヌ」をスペシャリテとしてご用意するのですが、鮎とお野菜のテリーヌにメロンときゅうりをつかったソースをかけてお出ししています。フルーツは季節を感じられる食材なので、通年で料理によく使います。鮎は、「ウリのような香りがする食材」とよく表現されるのですが、そこに着目して同じウリ科であるメロンを合わせています。とてもよく合いますよ。
➖鮎とメロン!とても意外な組み合わせです。夏になったら私もぜひいただいてみたいです。
それでは、今回考えてくださったメロンをつかったレシピについて教えてください!
はい、「メロンのガスパチョ」です。
ガスパチョとはスペイン語で「濡れたパン」を意味する冷たいスープです。ガスパチョが生まれたスペイン南部に位置するアンダルシア州は、夏の気温が40度にもなるほどの暑い地域。暑くて食欲が出ない時にも栄養をしっかり摂れる料理として考えられたのが「ガスパチョ」です。本来はトマトと玉ねぎ、きゅうりのお野菜と、パンをミキサーで攪拌して作るのですが、今回はこのレシピを応用して、トマトの代わりにメロンを使ってみました。
➖メロンの味が他の食材とよくなじんでいてとても味わい深いです!このレシピを調理する際のポイントはありますか?
ミキサーで攪拌する前に、メロンと野菜を塩でマリネして20〜30分置いておくことです。このひと手間をかけることで、野菜とメロンの水分がしっかり出て、食材同士の味の馴染みが格段に良くなります。味に奥行きが出るので、この行程は是非試して欲しいです。
また、スープと一緒に味わっていただく食材としてホタテとブッラータチーズをチョイスしました。メロンのみずみずしい食感とホタテとブッラータチーズのなめらかさがとても相性がいいのでそこもぜひ味わって欲しいポイントです。
スペインの食文化の魅力を、現地に足を運んでいる野堀さんだからこその視点で語っていただき、とても興味深いお話を聞くことができました。食材や料理一つ一つに丁寧に向き合い、考えてくださったレシピ、ぜひみなさんも試してみてください
エスタシオン・野堀さまが教えてくださったレシピ:
メロンのガスパチョ(4人分)
材料
メロン(青肉)…1/4玉
きゅうり…1/2本
玉ねぎ…少々
ピーマン…1個
バゲット…1/4本
ほたて(生食用)…4個
ブッラータチーズ…お好みの量
白ワインビネガー…小さじ1.5杯
塩…少々
ハーブ(ディル、ミント、イタリアンパセリ)…適量
オリーブオイル…適量
メロン(トッピング用)…適量
※ブッラータチーズはモッツァレラチーズでも代用可能
事前の準備:トッピング用のメロンを2cm程度の乱切りにしておく。
つくりかた:
1.メロン1/4玉、きゅうり1/2本、玉ねぎ少々、ピーマン1個、バゲット1/4本をミキサーにかけやすいように一口大にカットする。
きゅうりは種の部分を取り除くと水っぽくなりすぎず、食べ応えのあるスープに仕上がる。
2.1.の材料をボウルに入れ、塩を少々振り、混ぜ合わせる。20〜30分ほど置く。
マリネして20〜30分おくとしっかり水分が出て、食材同士の味の馴染みが格段に良くなる。今回のレシピの一番のポイント!
3.20〜30分経った2.に、白ワインビネガーを小さじ1.5杯、オリーブオイル適量をまわし入れた後、ミキサーにかけ、しっかりと攪拌する。
4.ホタテを一口大に切り、軽く塩を振る。強火で熱したフライパンで焼いて表面に少し焦げ目をつけて取り出す。
5.3.をお皿に盛り付け、4.と、ブッラータチーズ、トッピング用のメロン、お好みのハーブをのせる。
6.オリーブオイルをたっぷりとまわしかけ、塩で味を整えて完成!
レシピ考案にご協力くださったお店:
エスタシオン
〒162-0825
東京都新宿区神楽坂3-6 カーサピッコラ神楽坂1F
tel 03-5225-3808
[月〜土]
18:00~23:30(L.O.23:30)
定休日
日曜日
※営業時間が変更となる場合があります。
詳しくは店舗(03-5225-3808)にお問い合わせください。
photo:Takashi Sato
text:Mayuki Tsujihara
(果房 メロンとロマンのディレクターとして働きながら、ライターとして日本の島々をはじめとして、地域と食をテーマに取材を行なっております。好きなメロンはタカミメロン。)