メロンの冷やし中華
果房 メロンとロマンがメロンを使ったお家で楽しめるレシピを発信する企画、「メロンのレシピノート」。
第11回は、前回に引き続き、果房 メロンとロマンが位置する東京・神楽坂で、日本の四季を大切にした創作中華料理で人々を魅了する「ENGINE」さまが一緒にレシピを考えてくださりました!
オーナーシェフの松下 和昌(まつした かずまさ)さんに、お店のお話を聞きながら、レシピを教えていただきましょう。
➖今まで食べた中華料理で印象に残っているものはありますか?
はい。ひとつは、「香港飯」です。専門学校に通っていた頃に行ったことのある定食屋さんにこのメニューがあって。聞いたこともなかったので「何だろう?」と思って頼んでみたら、回鍋肉に目玉焼きがのった料理だったんですよ。回鍋肉に目玉焼きをのせるというちょっとアレンジをしただけのものなんですが、これがなかなか美味しくて。何だこれ!?ってなりました。既存のメニューを少し変えるだけでもこんなに美味しくなるは面白いな、と思いましたね。
もう一つは、お店に勤めていた頃の先輩がつくってくれた、まかないです。卵がのった、丼ものでした。さらにその卵は、油で揚げたものだったんです。生卵を油に落として揚げて、外側から火が通っていく時に折りたたんで成形していました。卵黄が白身で包まれた目玉焼きのような感じです。それをオイスターソースや他の具材で煮たものをご飯にのせて出来上がり。目玉焼きとは違った食感で、中の卵黄も半熟で。こういうつくり方もあるのか、と食べた時に感動しましたね。そういった体験は創作の原点にあるのかもしれません。
➖ここ、神楽坂にご自身のお店を出されたのはどのような経緯だったのですか?
様々なお店で働いてみて気づいたのは、中華料理ってどのお店も同じメニューがあるんですよね。麻婆豆腐や回鍋肉など。もともと、中華料理のルーツには「保存」という概念があります。中国は広くて山も多いので、遠くに食材を運ぶには乾燥させて長期保存を可能にする必要がある。中国の広大な風土に合わせて先人たちが試行錯誤した結果、今の中華料理があるわけです。
それならば、自分はせっかく日本にいるのだから、日本の四季にあわせた中華料理があってもいいのではないか?と思ったのが創作中華を始めるきっかけでした。常に色々考えて、メニューが変化していく方が自分の性分にも合っていて楽しめると思いました。
29歳で料理長になった後の目標は、38歳までに自分のお店を持つことでした。いよいよ自分のお店を持つとなった時に、日本の風情が感じられる場所でお店をやりたいなと思ったんです。それでたどり着いたのが神楽坂のこの場所でした。昔ながらの石畳があって、古くからの神社やお寺もあって、近くのお堀には桜が春に咲いて。とてもぴったりだと思いました。それがちょうど37歳の時です。
➖桜鱒、ホタルイカ、たらの白子…メニューにも旬の食材がふんだんに使われていて、日本の季節を感じますね。
メロンも夏の旬の時期に使いますよ!杏仁豆腐のソースにしています。
➖私も以前にいただきました!メロンメニューに思わず出会えて、とても嬉しかったです!
メロンは、以前に勤めていたお店でも、デザートの盛り合わせの中の一食材として使うくらいでした。メロンの食事メニューを考えたのは、今回のレシピが初めてですね。
➖焼売、春捲、麻婆春雨…ENGINEさんのメニューは、一見どれも食べたことのあるメニューなのですが、猪や桜鱒、白子など、意外な食材を組み合わせていたり、見た目も想像しない盛り付けでいつも感動します。お店のメニューはどのようにして考えているのですか?
「逆の発想」は常に役に立ちますね。例えば、春捲は春雨やたけのこ、挽肉を入れるイメージがありますけど、それらの具材を入れずに別のものを入れてみたら?などと考えるんです。焼売も豚肉を使うのが一般的ですけど、猪肉を使ってみたり。既存の概念を一度なくしてみて、自分の知っているものを組み合わせて考えることが多いですね。思いついたらあとはすぐに手を動かすだけ。それでイメージと違ったら食材を足したり引いたりして、違和感を調整をしていけばいいんです。
ー発想力はどのようにしたら磨くことができるでしょうか?
自分の言葉で話すことは大事ですね。その日あったこととか、見聞きしたことそのものや、それに対して思ったことを周りの人に喋るのはとてもいいことだと思います。そうすると自分の記憶にもしっかり残りますし、その出来事があとあとアイデアの種になることがあるんです。
あとは、お店に食べに行くこともいいですね。僕は、食べに行って美味しい!と思ったものは敢えて写真に撮らないんです。写真に撮ると、そこに頼ってしまうじゃないですか。それよりも自分の目や舌でその料理をしっかり覚えようと思っています。
でもとにかく大事なのは、固定概念をもたないこと。僕は常にこれを心がけています。「この料理はこういうものだ」と思い込んでしまったら、それ以上美味しくなることはありません。でも、自由な発想で考えていけば料理は常に変化し、新しい美味しさに出会うことができます。美味しい料理でお客さまに喜んでいただくことが僕たちの仕事だと思うので、無理に型にはまる必要はないんです。中華料理の基本から大きく外れない範囲で、日々料理をアップデートしていくイメージですね。常に進化していきたいという意味を込め、人類への進化の過程である「猿人」が店名の由来の一つになっているのはこういう理由からです。
➖貴重なお話、ありがとうございます。今回、考えてくださったメニューについて教えてください。
はい、「メロンの冷やし中華」です。
イタリアンではカッペリーニ(冷製パスタ)にフルーツを入れることが多いので、冷たい麺にフルーツが合うイメージがありました。中華で冷たい麺といえば冷やし中華。味付けに酢を使うのでメロンの爽やかな味わいにもよく合います。
➖たれに入っているメロンの果汁の風味もしっかり感じられて、メロンの果肉もより甘く感じますね!このレシピをつくる際のポイントを教えてください。
茹でた中華麺がくっつかないように通常ごま油をかけるのですが、オリーブオイルを使うのがおすすめです。ごま油を使うと、メロンを混ぜた時に青臭さが少し目立ってしまいますが、オリーブオイルならば大丈夫です。
あと、合わせ調味料は事前に混ぜてしっかりと冷やしておくこと!夏に冷やし中華を食べる時はしっかり冷えた状態が美味しいですよね。
トッピングはメロンとトマトだけで、とてもシンプルにしています。家庭で何種類も材料を揃えるのは大変ですよね。もし、余力があれば、細長く切ったきゅうりなどを上にトッピングしても綺麗ですよ。
ENGINE・松下さまが教えてくださったレシピ:
メロンの冷やし中華(2人前)
材料
飾り用メロン(赤肉)…適量(8分の1程度)
ミニトマト…12個
中華麺…2人前分
オリーブオイル…適量
(☆)メロンピューレ(赤肉)…小さじ4
(☆)酢…小さじ1
(☆)砂糖…小さじ1
(☆)醤油…小さじ1
(☆)レモン汁…大さじ1
※油は、オリーブオイルをつかう。(ごま油を使うと、メロンの青臭さが目立ってしまうのでオリーブオイルがおすすめ)
事前の準備:合わせ調味料をつくっておく。赤肉メロン40gをミキサーで攪拌し、ピューレ状にする。ミキサーがない場合は、フォークなどですりつぶしてピューレ状にする。
メロンピューレ小さじ4、酢小さじ1、砂糖小さじ1、醤油小さじ1、レモン汁大さじ1を合わせて、冷蔵庫でよく冷やしておく。
麺がぬるくならないよう、合わせダレは事前にしっかり冷やしておきます。
つくりかた:
1.ミニトマト12個を半分にカットする。ミニトマトのサイズにあわせ、メロン8分の1を乱切りにする。ミニトマトとメロンはボウルにいれておく。
2.中華麺を茹でる。(使用する麺にあわせて指定の時間茹でる。)茹で上がったら麺を洗い、氷水でよくしめる。
3.2.の水をよく切り、麺がくっつかないようオリーブオイルを適量回しかけ、器に盛り付ける。
4.3.に合わせ調味料をおたま一杯分、たっぷりと回しかける。
合わせ調味料は麺が浸るくらいたっぷりと!
5.1.のメロンとミニトマトにも合わせ調味料を適量かけてよく混ぜた後、4.の上に散らして、完成。
レシピ考案にご協力くださったお店:
エンジン (ENGINE)
東京都新宿区神楽坂5-43-2 ROJI神楽坂 1F
tel 03-6265-0336
[月・水・金・土]
11:30~14:30(L.O.13:30) 18:00~23:00(L.O.22:00)
[火・木]
18:00~23:00(L.O.22:00)
定休日
日曜・祝日・第3月曜
※新型コロナウイルスの影響で営業時間が変更となっております。
お知らせのページをご確認、
または店舗(03-6265-0336)にお問い合わせください。
text:
Mayuki Tsujihara
(果房 メロンとロマンのディレクターとして働きながら、ライターとして日本の島々や地域で働く方々に取材なども行なっております。好きなメロンはタカミメロン。)