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アルゼンチン現地教師のための「中級指導講座」

 みなさん、こんにちは
 ブエノスアイレスは冬が長引き、まだ寒い日が続いています。
南米を独立に導いた「サンマルティン将軍の日」という祝日が土曜日にあり、その週末を使ってアルゼンチンの日本語の先生のための「中級指導講座」が開催されました。海外で教えたことがある方はよくおわかりだと思いますが、いろいろなきっかけで日本語の学習を始めても、中級と言われるJLPT N3 や CEFR B1程度に達する学習者はそう多くありません。
 ここアルゼンチンでも同じ状況ですが、それでも学びの機会とあれば積極的に参加する方も多く、受講生は総勢16名となりました。日本人、日系アルゼンチン人、欧州系アルゼンチン人の参加があり、経歴も現役大学生から経験数十年のベテランまでさまざまです。

 初日は JFリマ(ペルー)から日本語専門家の先生がいらしてくださいました。一日かけて、中級の定義、中級学習者ができることなどを確認したあと、グループで話し合いながら授業の進め方や学習者の気づきについて理解を深めていきました。教師一人ひとりのバックグラウンドが異なる点を生かし、多様な視点から授業を見直すことができたのはすばらしい収穫だったと思います。
 二日目、いよいよ私の出番です。午後の時間を使って「読解指導の実践」というタイトルでの登壇でした。受講生のほとんどが日本語ネイティブではないことを踏まえて、目の前のみなさんを学習者として実際に授業を行いました。
 読解のテーマは「謝罪」。資料はChatGPTで作成し、音声AIで読み上げたものも用意しました。まず謝った体験についてグループで話したあと、リスニング、黙読、ペア音読と進み、内容の理解を確認しました。次に、資料の中から中級として大切な語彙や機能表現を拾って文作成。チェックはペアで行い、違和感のある部分があるかどうかを話し合います。
 このあたりまででも「なんだか読解の授業と違うぞ…」という雰囲気を感じましたが、次の活動として「内容につい質問し合う」を提示すると、とまどう姿が多くなりました。全く経験のない授業スタイルのため、質問と言われても何を聞いていいかわからない、と言う声が上がり、「難しければ、例えば指示語を見つけてそれが何を指すか聞くのもいいですよ」と伝えると、やや安心したようでした。
 フィナーレはディスカッション。「日本とアルゼンチンの謝罪文化」について、グループで話し合いました。「結論を出す必要はない」と伝えたので、リラックスした雰囲気で話し合いが展開していきます。発表の際は「日本人、アルゼンチン人、日系人の考え方、行動の違い」など、資料からさらに踏み込んだ話になったグループもあり、うなずく人が多く見られました。

 最後に種明かしとして、文章も音声もAIで作成したことを告げると驚きの声が上がりました。インターネットさえあれば、特別な専門知識がなくてもだれでも利用できることを説明し、興味を持ったらぜひ試してみてほしいと話し、講座を終了しました。
地球の裏側で、自ら日本語を学びながら、その世界をもっと広めたいとがんばる先生たち。これからも応援していきたいと感じた週末でした。

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