#10 漫画「BEASTARS(全22巻)」感想

草食系肉食獣であるレゴシが、肉食獣としての本能に抗いながら、草食獣のハルに恋をする物語である。ジャンルは「ヒューマンドラマ」「恋愛」。要素に「擬人化」、「学園物」。
最初はイマイチかと思ったが、徐々に面白くなっていき、読後はかなりの満足感が得られた。作者は板垣巴流先生。調べてみたら女性の先生で、ビックリ。差別とかではなく、父である板垣恵介先生の作品のイメージで勝手に息子さんかと思っていた。

【ストーリー】
本当に面白い。
特に、葛藤の描き方が絶妙である。本作の葛藤は肉食と草食という設定によって生まれている。表面的には肉食と草食は共存しているように見える。しかし、肉食も草食も本能は正直で、それを隠して生きている。作中は常に不穏さが漂っている。だからこそ、「本能VS倫理」という葛藤が話を面白くしている。そして、これは現実世界に通ずる部分である。動物の群像劇でありながら、決して他人事ではないと思わせるリアリティが物語に備わっている。
※ネタバレ注意
自分が一番好きなシーンは、レゴシがルイ先輩の足を食したところである。96話の出来事だ。食肉に対する徹底的な拒絶がレゴシの中にはあった。しかも、このシーンで戦っているのは食肉を犯したリズだ。レゴシは懲悪のために戦っている最中。これらの条件が揃っている中でルイ先輩を食すとは。お見事である。結果的にここが分岐点となり、レゴシとルイの関係が深くなっていく。レゴシは草食獣を好きだと自覚し、後にルイも肉食獣を好きと自覚する。

【作画】
お世辞にも画力が高いとは思わなかった。特に、最初の方は。しかし、画力の上昇とキャラが魅力的なおかげで、途中から気にならなくなった。むしろ、味がある絵とも言える。

【総評】
繰り返しになるが、とても良かった。
何よりキャラ全員が魅力的に描かれている。そして、かなり考えさせられる社会派的な要素も帯びている。
アニメ版も見てみたいと思う。

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