1993年 SideB-４「だからハニー／プリンセス・プリンセス」

中山加奈子作詞　奥居香作曲　プリンセス・プリンセス編曲

・「ダブルキッチン」（ＴＢＳ系　1993／４／16～６／25）主題歌

　ＴＢＳ系金曜９時枠４月クールドラマ主題歌。プリンセス・プリンセスは、大雑把にビーイング系～渋谷系～小室系というような文脈で語られることの多い90年代前期の音楽シーンにおいて、ガールズバンドのパイオニアとしての見え方やポップに徹してバンドブームをくぐり抜けた音楽的戦略など、独自のポジショニングでくっきりとした足跡を残したバンドである。そしてまたこの時期のアーティストとしては珍しくドラマ主題歌に寄りかかっていないグループで、この曲もドラマがヒットしたのにも関わらず、彼女たちの曲の中では目立つ曲ではない。

　「ダブルキッチン」は、「ずっとあなたが好きだった」と「誰にも言えない」の間に貴島誠一郎プロデューサーが手がけた２世帯同居がテーマのホームコメディー。伊東四朗と野際陽子が両親で、長男の高嶋政伸と結婚して２世帯同居を始めるのが雑誌編集者の山口智子。義理の息子役で野際陽子と再共演を果たした佐野史郎が、冬彦さん親子とは全く異なる親子像を演じたのも話題となった。ある意味古典的な大家族ドラマに「２世帯住宅」という旬な皮をかぶせたアイデアドラマだが、脚本・演出・演技のクオリティーがそろって高く、最終的に30％を超えるヒットドラマとなった。90年代以降を象徴する脚本家のひとりである西荻弓絵の出世作で、彼女はこのホームコメディーというジャンルで一時代を築いた（やがて「ケイゾク」「SPEC」でもうひとつ別の鉱脈を得ることになる）。

　長い目で見ればこの時期にTBSのお家芸たるホームドラマで新たなヒットパターンを生み出したことの意味は計り知れないし、伊東四朗、野際陽子、佐野史郎らのドラマでの可能性を大きく広げたことなど後世に与えた影響は大きいが、このドラマの最大の功績はなんと言っても山口智子のコメディエンヌとしての才能を解き放ったことだろう。この時点ですでに連続ドラマ主演級の常連のひとりだった山口智子だが、「ダブルキッチン」での彼女はまさに水を得た魚のような輝きを放っていた。ここから彼女は日本を代表するドラマヒロインへと羽ばたいていくことになる。