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1994年 SideB-4「永遠のパズル/橘いずみ」

橘いずみ作詞・作曲 橘いずみ・須藤晃編曲

・「この愛に生きて」(フジテレビ系 1994/4/14~6/23)主題歌

 フジテレビ系木曜10時枠4月クールドラマ主題歌。橘いずみは尾崎豊を手がけた須藤晃のプロデュースで尾崎死亡直後の1992年6月にデビュー。翌93年3月発売の「失格」が大きな話題を集めた。小柄な体で過激かつ内省的な歌詞を懸命に歌う姿には強さと脆さが無理なく同居しており、「女・尾崎豊」と称されるのも無理からぬところではあったが、結局本人は長い間そのイメージに苦しめられることになる。

 資質の問題もあるが、なにより「失格」発売時にはすでに24歳を超えていた橘いずみにとって“反抗する10代”のシンボルだった尾崎豊のイメージを重ねられることはかなりのストレスだったことだろう(尾崎本人ですらその重圧の呪縛に勝てなかったのだから)。この「永遠のパズル」は、ポップな曲調の中にそうした橘いずみの迷いや葛藤が素直に出ていて彼女の代表曲と呼ぶにふさわしい佳曲。自身のシングル最大セールスを記録した。

 「この愛に生きて」は野沢尚の脚本で喜多麗子プロデュース。浅野ゆう子主演の「親愛なる者へ」、浅野温子主演の「素晴らしきかな人生」に続くいわゆる野沢尚結婚三部作の第3弾で主演は安田成美。木梨憲武との結婚後初のドラマで、連ドラ主演は「素顔のままで」以来であった。

 かつての月9のヒロインたちを木曜10時枠に順に並べた戦略は、彼女たちへのセカンドキャリアの提案であると同時に、かつての月9視聴者たちへの新たなドラマ枠のレコメンドになってもいたし、脚本家・野沢尚のプレゼンテーションにもなっていた。こうした俳優や脚本家のブランディングを、プロデュースサイドが完全なイニシアチブを取って行っていたのだから、やはりこの時期のフジテレビドラマはプロデューサー主導の戦略が十分機能していたと思う。

 平凡な日常を生きる主婦の不倫ものとしてスタートしながら、中盤で子どもが誘拐されてからは一気にサスペンスの様相を呈する多重構造のドラマで、見ごたえは十分。共演は岸谷五朗、豊川悦司。2人ともここから数年立て続けに連続ドラマの主演作が続く売れっ子俳優になっていく。

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