【ショートストーリー】小さいおじさん
重い雰囲気のストーリーが続いたので、今回はめちゃくちゃ軽いノリで。
意識が戻った時には、サンドストーンでできたアーチ型の凱旋門に張り付けられていた。詳細は覚えていないが、不当な理由で捕まったのだ。納得がいかない私は泣きじゃくりながら、
「フェアじゃない!」
「フェアじゃない!!」
「絶対にフェアじゃない!!!」
と徐々に声を大きくしながら叫んでいた。
すると突然
バシッ!
隣から誰かが私を叩いた。
「あれ?」
意識がふと現実に戻った私は、
隣で寝ている颯太に叩かれたことに気づいた。
「うるさい。」
と言われたけど、まだ意識が夢と現実の間にいて、
なんだかよくわからない。
心臓はパクパクしていて汗ビッショリ。
「あー、夢か...」
とようやくわかり、気を取り直すため
トイレに行ってから再び寝床についた。
暫くすると…
何ということだ。
今になってヤツが出て来てしまった。
『小さいおじさん』
寝室のドアの上を歩いている。
「うわぁ~、今ごろ出没か~。颯太に知らせないと...」
と思ったが、颯太は先ほど、私がうるさかったので別の部屋に行って
しまった。
なんとか知らせようと起き上がろうとしたが、久しぶりの金縛りで
声も出ない。
取りあえず
「う~~」と、うめき声だけは発声できたので、
「う~~!」
「う~~!!」
「う~~~!!」
と颯太に届くように腹の底から声を出した。
すると、
バシッ!!
また誰かが私を叩いた。
「もー、何なんだよ〜」
「さっきから、うるさいよ。」
「あれ?まだ隣で寝てたんだ。」
「また夢か...」
と安心した。
翌朝…
「昨晩は良く眠れなかったよ。誰かさんがうるさ過ぎ。」
出勤する準備をしながら颯太が言う。
「ごめん。」
「今晩は静かにしてくれよ。
仕事行ってくる。」
そう言う颯太の肩越しに『小さいおじさん』が走って行くのが見えた。
「えっ....?!」
<完>