「片道切符・上」
炊き込みご飯の残り香を置いて
煙草と携帯電話、灰皿を持って
長い丈の上着に、
派手で太い袴服を履いて
半年程時間を空けた列車に乗る
歩きながら空を見上げる
転居前の家まで徒歩二分
前の家より今の家の近くの方が
星座がよく見える
駅前は季節に合わせて
電飾で煌めいている
「税金が輝いてる」
別の駅だったけれど
似た煌めきを見て
あの時あの子はそう言ったっけ。
「片道切符」なんて言ったけれど
切符なんて買っていない
全て携帯電話でやり繰り出来る
便利で危険な世の中だなぁ。
三分遅れの列車が来る
空いた席に座ると
隣のおじさんが避けるように
別の車輌へ移って行った。
乗り換える駅までもうすぐ
耳には「愛されし人」が流れる
私は愛されているのかな
そんなことをふと思う。
青い鳥で繋がり直してくれた人が
こんなにも沢山いる時点で
私は愛されているって
思っていいのかな?
この続きは
これから乗り換える
初めて乗る列車に乗って綴ろう。