今年のオスカー作品賞、今の所の感想
2月になりました。オスカーの授賞式までほぼ1ヵ月です。ノミネーション発表前後の2週間、毎日の様に候補作品を鑑賞し続けておりますが、個人的な好みとしては作品賞では『教皇選挙』『名もなき者』『I'm Still Here』辺りが好きでした。それ以外だとやっぱり何と言っても「リアル・ペイン」で、とにかくカルキン君には受賞まで勢いを落とさず頑張ってほしい。SAGを緊張と共に見守ります。
今年のオスカーは昨年に比べてだいぶ地味で、加えて山火事なんかもあったりして、ハリウッドが打撃を受けている感があるので、ちょっと心配です。それでも授賞式は行われますし、いつもの通りSNSを通じての啓蒙活動やバックラッシュは着実に進行しております。中でもここ数日で大きいのは、『エミリア・ペレス』で主演女優賞にノミネートされているトランスジェンダーのカルラ・ソフィア・ガスコンの何年か前の差別的なツイートで、結果彼女は自分のXアカウントを停止するに至りました。主演女優賞受賞もほぼなくなったと言えるでしょう。『エミリア・ペレス』と言えば、今回最多13部門ノミネートで、ゴールデングローブ賞の作品賞も獲り、フロントランナーと位置付けられている作品です。主演女優の問題が、この先作品や共演者の受賞にどう響いてくるのか来ないのか、かなり注目されるところです。
現段階で注目しているもう一つの部門は主演男優賞です。『教皇選挙』のレイフ・ファインズは抑えた演技で本当に素晴らしく、彼はそろそろ受賞をするべき俳優だと思いましたが、現時点でフロントランナーと位置付けられているのはエイドリアン・ブロディです。『ブルータリスト』未見なので彼の演技がどれくらい凄いのか、何とも言えないところですが、おそらく最大の対抗馬は『名もなき者』のティモシー・シャラメでしょう。ボブ・ディランと言うアメリカで非常に人気があり尊敬もされているアーティストにそっくりな演技をしただけでなく、すべての曲を自身で演奏し、歌ったことは大きく評価されると思います。ティモシー・シャラメが受賞すれば、主演男優賞最年少受賞記録を更新します。現在の記録保持者はほかならぬエイドリアン・ブロディです。エイドリアン自身に勝って、最年少記録を作るというのはかなりドラマチックで、その瞬間を目撃できるのかどうか。期待してしまいます。『ブルータリスト』に関しては、編集段階でAIを使った台詞の修正があったというバッシングが一時SNSをにぎわせましたが、その影響の大きさも、今はまだ分かりません。
監督賞についても、完全にフロントランナーとみなされているブレイディ・コルベがこのまま突っ走るには、先述のバッシングが取るに足りないものとみなされ、休憩をはさんで3時間半と言う長い上映時間の作品を投票者たちが見てくれることが必要になります。この辺りは、SAG、DGA、PGAと言った前哨戦で受賞できるかによっても流れが変わってくることなので、来週末くらいから続けて発表になる前哨戦の結果を見守っていきたいと思います。
日本での放送が気がかりだった授賞式も、どうやらNHKで中継されることが決まったようなので、私も近隣諸国に行かずに済むことにホッとしております。