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支笏湖−1 2024年4月下旬
年に数回の支笏湖釣行。
大陸的なダイナミックに美しい風景の下、美しい水で磨かれた美しい鱒たちが釣れるに違いない、と、通い始めてはや3年目になる。
今までの釣行回数は7回。で、釣果は2匹。
50cmのブラウンと60cmの虹鱒。
確率的にどうか、どかサイズ的にどうか、という話はあるけれど、少なくとも私にとっては、素晴らしい思い出だ。その時の湖、風、波、バイトからフッキング、その後のやり取り、キャッチする瞬間のドキドキ感、魚を湖岸に横たえて、眺めた時の感動。今でも鮮明に思い出せる。そしてこれからの人生の中でも何度も思い出してはニヤニヤするだろう。
そんな体験をしたくて、今年もまたお邪魔します、北海道。
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ここ1週間、関東ではだいぶ気温も上がり、この日も20℃を超える陽気だった。だが、新千歳空港の外に出ると、そこは北の大地、少し肌寒さを感じる。
持ってきたインナーダウンを取り出して羽織る。スマホの天気予報では、千歳市の翌日の朝の気温は5℃。やはり上下防寒仕様が必要なようだ。
レンタカーの手続きを済ませ、ホテルへ。もう何度も通っている道だから、ナビも必要ない。
チェックインして部屋に入りパッキングを解く。リーダーなど結びながら、頭の中では明日入る場所とルアーについて思いを巡らす。さっきみたスマホの天気予報によれば、明日は風が強いらしい。波が立たないと難しいと言われている支笏湖。自分が釣った魚も風波が強いときだった。きっと明日は期待できるのではないか、きっと釣れるだろう。そう思いながら、いつも行っている近所のトンカツ屋でサッポロクラシックを流し込む。旅の愉しい瞬間。
ちょっと遅かったかも。
翌朝、モラップを車で通過したのは4:30過ぎだったが、もう南岸の道路沿いには、支笏小橋のあたりから路肩にとまる車がちらほら。
もちろん全てが釣りではなく、トレッキングや山菜とりの方もいるだろうが、それでも自分の狙った場所に先行者がいるかもしれない。もう30分早めに来れば、などと少し焦る。カーブを曲がると狙ったポイントに降りる駐車スポットだ。車はない。よかった、一番乗りのようだ。
橋の下をくぐり、沢に沿って湖岸へ。
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湖岸に立って、湖と、その向こうに見える恵庭岳を見つめる。北西の風、いいい波立ち。条件は悪くない。帽子をとって一礼し、ロッドを振り被る。さあ来い、シコブラ、シコニジ。
高い意気込みも、3時間無反応だと、少し萎えてくる。近場をさらい、沖も投げた。ルアーを変えて表層からボトム近くまで一通り。予想はしていたけれど、湖からは何も返ってこなかった。
右岸の方から、後から入られた若い方が戻ってくる。入る時も、私に許可を求められてきた丁寧な礼儀正しい方、こちらは本州から遠征して湖で釣らせていただいている身だから、逆に恐縮して、どちらでもやってください。とお答えしたのだが、結果は、やはり釣れていないらしい。
「でも、一回だけ表層にルアーが浮いているときに魚が出たんですよ、でもびっくり合わせでバレちゃって」
思わず、おめでとうございます。と答えてしまった。ここに来ている釣り人は、釣りを運試しくらいに捉えている方が多いはず、少なくとも私はそうだ、だから自然とそんな言葉も出てしまう。反応があった、素晴らしいことではないか。
朝方いい塩梅だった風も強まり、キャストが難しくなってきた。波も高く釣りづらいくらいに。移動。
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次に入ったところも南岸だったが、ちょうど恵庭岳の風裏に入っているのか、風も波もそれほどではない。
前のポイントに比べブレイクがやや遠いため、遠投の効く重めのシンペンを選択、キャストしながら左岸へ少しづつ移動していく。
岬の終わりくらいのところまできた。ブレイクの先にキャストして5秒ほど沈めてから巻き出す。と、10巻きくらいでティップに感じる重み。聞くようにしてゆっくり合わせたところ、生命反応。
きた、と高揚する気持ちを、抑える。一日一回アタリがあれば良い支笏湖。これを逃したら後はない。去年の秋も同じく沖でかけた魚を、興奮のあまりの強引なやり取りでバラしてしまっているじゃないか。
エリアトラウトをやる方は聞いたことがあるかもしれないけれど、やり取りの際に、力を抜くコツ。それはお上品に小指をたててハンドルノブを握ること。ある著名アングラーがどこかで書いていたのだが、これは確かに効く。見た目は少し変かもだが。小指をしっかり立てて、丁寧に丁寧に。。
透明度の高い水の向こうに銀色に輝く魚体が見える、ブラウンではなく、虹鱒のようだ、結構いいサイズ。でもジャンプしないな。ドラグは適度に機能している。ゆっくり丁寧に少しづつ距離を詰め、ネットを背中から外し、ランディングを。。
支笏湖のチャンスはそう多くはない。きっとこれで今回の釣行は、今ので実質終了だろうな。と、ネットを背中のマグネットに装着しながら思った。
で、やっぱりその通りだった。
悔しさがもう次の釣行に向かって心を掻き立てている。また近々。
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