【英国で知ったENGLISH その3】rubbish "ゴミ"ではあるが、"ゴミ"のようではない” 日本語学習する英国人にとって最大のトラップとなる奇妙で魔法の英単語
英国滞在で知った英語第三弾 rubbish
恥ずかしながら渡英するまでこの単語を知らなかった。
だがもしかすると一番多く耳にした単語かもしれない。
ブリティッシュイングリッシュを代表する英単語、それがrubbishだと
個人的には思う。
因みに意味は ゴミ
Oxford Dictionaryによると定義はこうである
いらなくなったから何処かに投げ捨てるモノ、まさしくゴミである。
渡英前までははゴミを意味する英語と言えばgarbage もしくはtrash だと思っていた。何とこれらはアメリカ英語である。
無論、イギリスでもgarbageもtrash全く問題なく通じはするのだが、これまたrubbishと言い直されるのがオチ。
だが流石にこれだけでは何故この単語が在英時に印象的だったのか、そして最も耳にした単語だったのか、と理由としてはかなり弱いように思われる。
この単語の真骨頂は形容詞として使われることにある。
名詞ではrubbishは単なるゴミを意味する単語に過ぎないのだが、形容詞として、もしくは形容詞的な名詞として、かなり頻繁に英国人の間で使われる。
質の低いと思えるもの、馬鹿げたり間違っていると思われるものを評するのに、このrubbishという単語はかなり頻繫に使われるのである。
Your Pronounciation is rubbishと何度言われたことか!
英英辞書だと端的な記載しかないのだが、良くない、好きじゃない、と言ったかなりカジュアルなニュアンスで頻繁に使われることが多かったように思われる。
悪意をもって対象をこき下ろすとか、全否定するとか、強く対象を攻撃するニュアンスはない。
スラングでもないし、勿論放送禁止用語(swear words)でもない。
BBC がWEB上にアップしている英語学習者向けの動画にも軽い感じでこのrubbishという単語が使われている
自分の星座なんて知らない。星座占いなんて信じていない。そんなものはrubbish と天下の英国公営放送BBCが送り出している英語学習者の発音矯正プログラムにでも使われているくらい、英国人にとっては馴染みのある、強くはないがやんわりと否定を評する際に使われる英単語なのである。
ここで問題なのはゴミを意味する単語rubbishと、やんわりとネガティブな印象を表明するrubbishが綴りも発音も全く同じ単語、ということ。
日本人にはわざわざ説明するまでもないが、日本語でゴミという単語を形容詞的に使う際は、対象を極端にこき下ろし、非常に強い拒絶、非常に強い否定を意味する単語である。ゴミと言われた側は大変ショックを受けるくらい、あまり使うべきではない、劇薬のようなものと僕は認識している。
少なくともNHKで、「~はゴミ」という表現が使われることは恐らくない。
相当親しい仲で冗談として使われるか、匿名掲示板やSNSの過激なアカウントで嫌いなものをこき下ろすときに使われるくらいだと思う。
だがネイティブ英国人はにはそこまでの認識がない。
橋と箸が同じ発音であるが別物と日本人が認識しているように、ゴミとしてのrubbishと、あまり良くないを意味するrubbishは同じ発音で綴りだが、まるで別の単語のように認識している。
これはイギリス人が所謂廃棄物であるゴミに対し、日本人ほど拒否反応を持っていない、とかそういう訳ではない。
彼らも廃棄物としてのrubbishは当然好きではない。
単にそれを形容詞として他人に冠することを、特段悪いとは思っていない、もしくは音とスペルは同じだが違う言葉と認識しているだけである。
だからネイティブ英国人や渡英歴の長い留学生にrubbsihと投げつけられたとしても、それは自分自身を強烈に否定しているわけではなく、やんわりとネガティブな感情をカジュアルに伝えたいだけ、という認識なのである。
だが頭で分かってはいても、いざrubbishと言われると、すごくショックを受ける。自分はゴミなのか!と一瞬思ってしまう。
日本語こんな言葉を平気で使ったら大抵大事になる。
言われた側はまず不快になるであろう。
余談になるが、中国本土からの15歳の留学生Hanbin君は、ゴミを意味する単語がカジュアルに使われるのが面白くて仕方がなかったようで、かなり頻繁にrubbishという単語を使っていた。
先生からはMr.Rubbsihと評されていた。
彼に聞いた所、中国語でもゴミという表現(垃圾)を形容詞的に使うのは強い否定になるらしく、イギリス人が平気でその単語を使うことに強烈な違和感があり、一方でそれが何だか面白く、ついつい口に出して言ってしまいたい、とのこと。
彼は齢15歳で、とても良い少年であったが、幼少期から強烈な詰め込みエリート教育を受けさせられているかなり可哀そうな子であり、そんな彼のストレスの捌け口になる救いの言葉がrubbishだったのだろう。
そもそも何故ゴミとカジュアルに否定を意味する単語が全く同じになってしまったのか。
アメリカ人はtrashやgabergeを形容詞的に、個人的にちょっと好きではないんだよね、という人をあまり傷つけない軽いニュアンスで使う、ということはあまり聞かない。
何度か複数のネイティブ英国人に聞いたが、「そんなこと質問されるまで意識したことがなかった」と驚きの回答が返ってきた。
「そもそもrubbishは純然たる英語なんだから使い方に外国人のお前がなんで疑問を持つのだ」と彼らは思っているのだろう。
まぁそりゃそうなんだが。
ただ一番の問題は我々非英語話者ではない。
触れて暫くはショックを受けるが、そういうものなのだ、と理解してしまえばそれで済む話である。
外国語を熱心に学んでいるイギリス人は特に何の気もなく、rubbsihという単語を機械的に翻訳し、学んでいる外国語にも流用してしまう所である。
僕は渡英中、日本語を熱心に勉強しているネイティブ英国人に2人あったが、彼ら彼女らは英国英語のrubbsihの感覚で「~はゴミです」という言葉を普通に、それもありとあらゆるものに使っていた。
辞書でrubbishにあたる単語を調べたら「gomi」と出てきたのだから、何の疑問もなく使っていたのだろうが、日本語でゴミを形容詞的に使うのは言うまでもなく大問題である。
彼らはその気はないが、聞いている此方からすると、かなり強烈な否定、罵倒、disる単語になってしまう。
実際に彼ら彼女から聞いた日本語である。日本語としては間違ってはいないが、流石にフランス人やアメリカ人、そしてニューカッスルの人が話す英語がゴミと言われるとちょっとビビる。シチュエーション的に偏狭なナショナリストではないかと疑ってしまう。
他が妙に丁寧な日本語なので、ゴミという単語が異常に浮いている。
そのため慇懃無礼な感じがより強く出て、より強烈に罵倒しているようにすら思えてしまう。
前述の通り、そこまで罵倒するニュアンスではないのだが、彼らが母国語のrubbishと同じような感覚で日本語のゴミという単語をついつい使ってしまうからこそ生じる悲劇である。
勿論、日本語でゴミはrubbishだけどadjectiveとして使うのは良くない、と伝えたのだが、あまり理解できていないようであった。
「ではなんて日本語で使えばよいのですか?」と聞かれたが、多分英国人が使うrubbishに該当する丁度良いニュアンスのネガティブだけどそこまで人を傷つけない要素がある一つの単語が日本語にはないだろう。
そこまで好きではない。そこまで良くはない、という微妙な言葉で濁すしかなかった。
言うまでもなく、彼ら彼女らは恥、なるべく日本語でゴミという単語をrubbsih的な感覚で使うことは避けるようになったのだが、それもちょっとかわいそうに思える。
そもそも論としてゴミと軽い否定のニュアンスを意味する単語が全く同じ単語というのがちょっとオカシくは思えるのだが、それも英国という国がかなり変わった国、ということなのだろう。